幕間 2代目勇者 前編
ごめんなさい、ここ以外に切りどころを見つけられませんでした。ですので、やや、短めです。
そのせいで明日の更新する予定の後編は高校デビューで一番長い話になるんじゃないかなって思ってます。
ちなみに今までの一番長かったのは29話のルルが登場する話の時でした。
いつものように帰ってくると扉に書かれている文字が目に入る。
犯罪者、横領犯、この街から出ていけ、などのとても心温まる言葉のオンパレードを毎日見過ぎて反応が無くなると最近では汚物が玄関先に捨ててられている事が増えだした。
昨日など、どこぞで轢かれたと思われるネコの死体がご丁寧にドアを開けた時に丁度見えるように配置をされていたという心配りがされていた。
俺の名は轟。名字は珍しいせいで、聞かれるとすぐに親父の事を思い出されてウザくて忘れる事にしている。
数年前、親父は自殺と処理された形で死んだ。自殺にしてはおかしい所が至る所にあったそうだが、状況的にそうと処理された。
この世に名探偵などどこにもおらず、家族の訴えは無視されることになる。
親父が死ぬとどこからそんな話が?言いたくなるような親父が横領してたという証拠を持って国の調査機関と名乗る黒づくめに家を荒らされる。
荒らされて、証拠を発見したと騒ぐ場所を見ると俺が子供ながら、お金を隠してた場所から証拠の書類が発見されたと語る黒づくめに俺は聞いた。
「そこは、僕のお小遣いを隠してた場所だけど、さっきまで何もなかったのに、どうしてそんな大きな封筒が出てくるの?」
そう言う俺を苦々しく見つめ、警察に書類を引き渡していた。
黒づくめに言っても意味がないと思った俺は警察官にそれを伝えると
「家族の証言は証拠にはなりません、しかも未成年だと論外です」
俺は子供ながら俺はどこかで納得していた。こいつら全員グルだと。
それからすぐに今の嫌がらせが日常化した。おそらく最初はあいつ等が主導してただろうが、今は無関係に憂さ晴らしや面白半分の輩がやっているだろうと分かっている。
母親はとっくに自殺をして後を追っており、俺はどこの親戚からも引き取りを拒否された。
中学校を卒業するまでは施設が最低限の世話を焼いてくれたが、卒業すると放り出され、この家に戻ってきて1年経とうしてた。
未だ、就職もできずに1日ブラブラして過ごしている。
働く気がないのではなく、誰も雇ってくれないのである。
金がなければ食う事もできずに褒められた事ではないと知りつつ、恐喝、強盗を繰り返したが、俺は足を掴ませる事はさせず通り抜けてきた。
体は恵まれたらしく、中学生になると既に成人の男並みになり、卒業する時には格闘技選手のように逞しく育っていた。
俺のような悪い奴らは俺に関わっても得るものはなく無駄に痛い目に合うだけと知っている為、絡んでくる者は、ほぼ皆無であった。
しかし、縄張りを気にせず、やりたい放題を繰り返した事で徒党を組まれる事になった。
いくら、恵まれた体と修羅場を潜り抜けた実績があろうとも100人を相手に戦える訳ではない。
傷つけられた体を引きずって逃げた路地に追い込まれた。
それでも30人は道連れにした自分を褒めてやりたい。
それでもやはり、斬り抜けるのは無理だった。
周りを囲まれて、ここで俺も終わるのかと思った時、足元が光り出し、分からない文字が地面に書かれ、円を描いた。
そして、光に包まれると俺の意識は遠くなっていき、途絶えた。
目を覚ますと黒いローブを身に纏った集団が俺を囲むように立っていた。
俺は飛び起きて、臨戦態勢になると黒ローブの垣根が割れ、豪華な衣装を着た男が現れる。
「我々は敵ではない。重症だった君の傷も治してるだろう?分かったら、拳を降ろして話を聞いてくれないか?」
男は掌を向けて、落ち着けとばかりに示す。
俺は周りを見渡すとどうやら地下にいるようだ。ジメジメした空気がそう思わせる。
黒ローブも敵意がないとばかりに男の後ろに控える。
あの傷をどうやって治したのかと疑問を覚えるが、治った以上、最悪、逃げだす事はできるだろうから、話を聞く事にする。
俺は拳を降ろすと、ここはどこで、お前は誰だと聞いた。
「まず、言っておく。これから言う事は嘘ではない。ここはお前が今まで生きてきた世界とは違うアローラと呼ばれる世界だ。私はそのアローラにあるエコ帝国の王のシャークと言う」
なんだ?この男の頭は沸いているのかっと俺は露骨に顔を顰めると苦笑しながら男は言ってくる。
「まあ、すぐに信用するのは無理だろう。お互いの為、一旦出ないか?私はここが君が今まで生きてきた世界じゃないと教えるには外のほうが都合がいいし、君も逃げ出すつもりだろうが、あの1つの扉しかない所から逃げるより外に出て逃げる場所を見てからのほうがいいだろう?」
ちぃっと舌打ちする。
考えを読まれてた事が悔しかったからである。
「先に言っておくが君の考えを読んだ訳じゃないよ?君で2人目なのだよ。この世界にやってきたのは。初めてきた者が最初にした行動を言ってるだけだから、ただの当てずっぽうだよ」
2人目と聞いて、俺も色々聞きたい事が増えた事もあり、男の言う通りである事を認めて、出る事を俺は了承する。
王の間に連れていかれた俺は色々質問をし、月を見せられ、嫌々納得したりなどして、ここが異世界であると認めることになった。
「やっと現実を受け止めてくれたところ申し訳ないんだが、君に頼みたい事があって召喚させて貰った」
まあ、正直、元の場所に居場所などなかったから、この世界に飛ばされたからと言って腹は立ってない。命を拾う結果にもなったというのもある。
「君には勇者としての素質、力が眠っているんだ。それを訓練で呼び覚まして、十全発揮できるようになったら、魔神を滅ぼす、もしくば封印をして欲しい。その為の見返りは充分なモノを用意する」
俺は、試しに女、金、名誉を寄こせと言うと色んなものを提示される。まさか、あっさり了承されると思ってなかった俺は茫然として、元の世界より良い環境だと理解して、その頼みを飲む事にした。
それから半年の時間が流れる。
訓練により、自分でも驚くほど強くなっていくのに酔い、いい女を見れば、貴族だろうが平民だろうがおかまいなしに襲い、蹂躙する生活を繰り返した。
誰も俺に直接文句を言ってくる者はいなかった。
来た当初ならまだ言えたのだろうが、力の覚醒が進み、手に負えなくなってきてるようで苦虫を噛むような表情を見せるのが精一杯のようだ。
最初は楽しんでいたが、最近は何故か楽しめず、モヤモヤする日々を過ごしていた。
そんなある日、俺は訓練をサボって庭園で昼寝をしていた時、運命の出会いをする事になる。
その運命は空から俺の上に目掛けて落ちてきた。
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