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140話 テリアの旅立ちの日

 ピンポンパンポン、バイブルからのお知らせです。

 この話で7章の本編終了になります。幕間を今回は多くなりそうで4話ぐらいだと思って頂いていいと思います。

 更に、もう一つ、やっと、やっと、この7章で中盤の終了のお知らせをさせて頂けるところまで進みました。

 8章から終盤に入ります。後、3割ぐらいだと思いますので、お付き合いして頂けると嬉しく思います。

 では、中盤の本編の最後を、よろしくお願いします。

 俺はルナ達が待つ泉の傍に降り立つ。

 ルナ達はじっと光の扉があったところを見上げているので隣に立つと一緒に見上げる。


「何を見てるんだ?」

「ん、徹を待っているの」


 俺の質問に俺を待っていると言われて納得して頷く。

 じゃ、俺も待たせて貰おうかと腕組みして待とうとしたら後ろから蹴られる。


「帰ってきたんなら、さっさと言いなさいよねっ!」


 普通は、ただいまって伝えるのが最初でしょっ!とテリアに怒られる。

 ルナも俺が話しかけてたとやっと気付いて、一緒に怒りだす。

 美紅は来た時点で気付いていて、ルナとのやり取りを見て目頭を揉んでいた。


「いや、なんか、ここはノリで行かないと駄目かなって血が騒いでね?」


 俺に流れる血潮が背中を押したんだよっと笑ってみるが、ルナのお怒りは大きいようだ。


「酷いの!心配して待ってたのに、からかうなんて!」

「すまん、みんなして見上げてたからちょっとイタズラ心に火が点いてしまった」


 両手を合わせて、ごめん、ごめんと連発して謝ると不貞腐れたように目線を反らされる。

 先程から黙っていた美紅が俺に話しかけてくる。


「で、中でどんな話をされたのですか?」

「ああ、その事もテリアに事情説明もここでするには落ち付きがなさすぎるし、正直、あのジジイがおとなしく引き下がったとは思えないから、ちょっと落ち着けるところに行ってからにしないか?」


 あのジジイを思い出しているのか三者三様の表情を見せる。

 頭を痛そうにしていた美紅は、そうですね、問題は1つづつ解決して行きましょうと言って、俺の意見を支持してくれる。


 みんなも反論がないようで、とりあえず、境内に向かうがジジイは居らず、あれ?もしかして、落ちたショックでポックリ逝った?っと思いつつ、階段を下りていくと、やはりあの手のジジイはしぶとかったようで、健在で俺達が降りてくるのを村人を300人程、集めて待ち構えていた。


「いつまで、待たせるというのじゃ。怖気ついて出てこないかと思ったわ!」

「別に待っててくれとは言った覚えはないんだが、本当にやり合うつもりか?」


 当たり前じゃ、虚仮にされてそのまま帰せると思っとるのか!と怒鳴ってくるが後ろの村人は消極的だ。


「このジジイの言葉はお前達の総意か?この場に居る限り、返答なしの場合は敵とみなすぞ?」


 女子供とて、骨も残さないつもりがあるぞ?となんでもなさそうに言う。

 俺の言葉に騒然とするがジジイをチラチラ見て、はっきりとは意思を示さない。


「当然、総意じゃ。ここに居る者は全て、お前の敵じゃ!」


 そうかっと無表情で言うとジジイを含めて、全員が一歩下がる。俺から漏れだす威圧だけで逃げ腰になるのに挑もうなんて馬鹿だなって思いつつ、魔力を練りだす。


「トオル君、さすがにやり過ぎは駄目ですよ?」


 美紅から、一応はテリアちゃんの故郷なのですからと言いつつも良い思い出もなさそうですがっと溜息を吐く。

 大丈夫、今回は俺も考えていると教える意味で美紅にウィンクを送っておく。美紅、何故、頬を染める?


「それは良かった。これで選別せずに全てを焼き払えばいいって分かると楽だ」


 俺は背中から炎の翼を生み出すとジジイを含めて、村人全員を囲む。それを見た村人は恐慌状態に陥って助けを求めて中心へと逃げ込もうとする。

 内心、やっぱりこの魔法は虚仮脅しに使えるなって感心する。おまけに意外と細かい事もできるしなっと自画自賛する。

 ジジイは腰を抜かして、アワアワと震えていた。

 俺がジジイに近づくと少しづつ輪が縮まり、村人は身を寄せるようにして炎から逃げようとしていた。


 そして、ジジイの前に立った俺は、さあ、かかってこいっと言うが蒼白な顔をしながら唾を飛ばして叫んでくる。


「魔法で我らを抑えつけようとするなんて、卑怯者!」


 なんで魔法が卑怯なんだ?別に獣人だから魔法が使えない訳でもないし、ああ、そうか、このジジイは自分が有利な状況じゃない時はいつでも相手が卑怯なのであろう。


「俺としては4人相手に300人はいそうな人数で囲もうとしてた、お前らはどうなんだって思うとこなんだが?」

「これは団結の力じゃ!だから正当性がある」


 もう、会話にするのが難しいレベルだと俺は思ったので炎の翼を解除して、カラスとアオツキを抜く。


ー主、さすがに、こんな奴を斬る為に我を使わないで貰いたいのだが・・・-


 久しぶりに喋ったかと思えば、ジジイを斬るのを拒否発言とは・・・前に野菜を斬るのに使った時は何も言わなかったカラスから嫌がられるレベルのジジイは凄い。


(分かったから、そんなに嫌そうなイメージをバシバシ伝えてくるな)


 俺に地味な嫌がらせをしてくるカラスに降参を告げる。


「さて、団結の力に集まった皆さんに優しい俺は、もう一度だけ聞いて上げます。貴方達は敵ですか?敵ならそのまま襲いかかるなり、黙ってて結構です。しかし、敵はジジイと言うなら縛り上げて鳥居の上に吊るしなさい」

「馬鹿モン!敵はお前にきまっ・・・」


 俺は何も言わずにジジイに平手打ちをする。勿論、1発で昏倒されないように絶妙な手加減をしつつであるが。


「無礼な、ワシに手・・・」


 反対側の頬を叩く。


「最後まで言わせ・・・」


 初めに叩いた側をまた叩く。


「お願いだか・・・」


 往復ビンタで両頬を叩く。

 再び何かを半泣きで言いそうになった時、手を上げると口を塞ぐ。


「で、お前らはどうする?」


 俺が聞くと村人達は急いで縄を持ってくると無駄に多くジジイを巻き付けて、鳥居の上に縛り上げた。

 落ちないように木に縛られてた縄と結び目に硬化の魔法をかけて回る。


「10時間はこの魔法は解けないから10時間後に降ろして貰え」


 俺は村人を再び見つめると逃げそうになっている奴らがいるのに気付いて叫ぶ。


「誰が行っていいって言った!」


 逃げかけてた村人は立ち止まると、ゆっくり戻ってくる。

 俺はテリアに振り返り、最後に言っとけっと村人の前を譲る。


「皆さん、私は今日、この村と決別します。おそらく、私がいなくなったら予言は誰が見るのかと疑問に思っておられるかと思いますが、その心配は既にないとお伝えします」


 テリアが周りを見渡すが、当然のように何故と騒ぎ出す。

 俺が静かにしろっと言うとピタリと止まる。相当、炎の翼から恐怖が染みついているのだろう。


「私は予言をされてた女神様に体をお貸しして、去られる時に私におっしゃいました。『もう、ここにいる理由はなくなった。もう予言を伝える事はないだろう』と」


 驚き過ぎて声が出ないようで口をパクパクさせている。

 今まで、何度となく危機を知らせてきて助かってきたというのに、もうないと伝えられてショックなのであろう。


「何をショックに思われているのでしょう?予言などないのが普通なのです。この里の外の人達は予言などなくても立派に生きてらっしゃいますよ」


 テリアが村を出てから見てきたモノの答えを今、みんなに伝えているのであろう。

 周りを見渡してから、ゆっくりとどこを見てるか分かるように鳥居の上で吊るし上げられて、騒いで煩いジジイにも聞こえるように言う。


「だから、この山の泉を崇める意味などなくなりました。もうあの人に頭を下げる意味はありません」


 白けた目をジジイに向ける村人。ジジイの権威が失墜した瞬間であった。


「この里に残るも出るも皆さんの自由です。後は各自で判断して動いてください。それでは皆さん、さようなら」


 テリアの別れの挨拶に反応を示す者はいなかったがテリアは気にせず、振り返って、俺達に行きましょうといい、歩き去っていく。

 村人の対応に腹を立てた俺は怒鳴る。


「テリアが我慢してるから、暴れたりはしないがな、俺はお前らが大嫌いだっ!その事をしっかり覚えておけよ!」


 俺が叫ぶと美紅が溜息を吐いて、ルナは俺の頭を叩いてくる。


「トオル君、気持ちは良く分かるのですが、テリアちゃんが我慢したのにトオル君が我慢しないとはどういう事ですか?」


 俺は項垂れて、スマンと3人に謝る。


「でも、ありがとうっ。トールの気持ちはとっても嬉しいっ」


 テリアに逆に慰められるという情けない構図になり、更に身を縮めながら、俺達は馬車がある場所へと向かった。



 馬車を回収すると俺達は一路、クラウドを目指して出発した。

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