138話 エクレシアンの女王
今日は、バクマンを見てきます。前回、ピクセルを見に行った時の番宣でやられて、見たいと思ってしまったもので・・・帰ってきたら今度は何にやられて帰ってくるのでしょうか?(笑)
俺はカバンの底にある水晶を取ろうとしゃがんでいると美紅が後ろに来て、声をかけられる。
「少し、動かないでくださいね。頭の裏に土や草が付いてますから払うので」
俺の頭に付いてた草を取り、土を払ってくれた。
払ってくれた美紅に有難うと告げる。
それをした張本人は、知らん顔して明後日の方向を見ていた。
まあ、確かに俺も悪かったとは思うから特に言いたい事はないが、どうして、俺の周りにいる女の子は口より先に手が出る娘が多いのだろうと本気で思う。
理沙もすぐに手が出るタイプだったから、多少は慣れがあったから普通に思ってたけど、やはりおかしいよなっと俺は思う。今して思えば、手を出してこなかった身近な人物は佐藤だけだったと気付き、俺の癒しはあそこだったのかもと遠い目をした。
水晶を取り出した俺は、みんなを見渡し告げる。
「正直、どうなるか分からないから、怖いと思うなら泉との境界線になってると言ってた向こう側で待っててくれてもいいんだぞ?」
そうは言うが3人はきっと頷いたりはしないだろうなっと思いつつ、答えを待つ。
「行かないっていう選択肢なんて用意してないの!」
「ふぅ、最近、ルナさんは時々、トオル君の真似するのが好きですね。勿論、私も行きますよ」
美紅はルナの言い回しに苦笑している。
俺がそんな事言った事あったっけ?と聞き返すとクリミア王女に初めて会った時にと言われて思い出す。確かに似たような事を言った覚えがあった。
俺はテリアを見ると俺の袖を掴んでいたので聞いてみた。
「テリアはどうする?待っててもいいんだぞ?」
「ううんっ、私も行く。私もトール達と一緒に知っていきたい。それと、トール達の事も色々聞きたい。意図的に話してない事あるよね?責めてる訳じゃないっ。私も隠してたし、もう、特別話すような事はないと思うけど、気になる事なら答える。だから、みんなの事も聞かせて欲しいっ」
俺はテリアの頭を撫でると伝える。
「分かった。一緒に行こう。俺達の事は今回の事が終わったら時間を取ろう」
テリアは俺の言葉を聞くと二コリと笑うと袖から手を離した。
割れないように布で包んでいた水晶を取り出すと、みんなに行くぞっと伝える。
そっと泉に水晶を落として少し離れる。
長い事、波紋が続くなっと見つめているとどうやらそう言う訳でなかったようで徐々に強くなっていく。
すると上空に光の扉が現れた事に気付くとそこに行く為のガラスでできた階段みたいなのがあるのに気付くと波紋は落ち付き、静かな泉に戻る。
「どうやら、昇って、あそこに来いってことらしいな」
まず、俺がその階段に昇ろうとすると美紅が私から行きますっと言ってきたので首を横に振って断る。
「何かあった場合、空を飛べる俺が一番安全さ。普通に落ちるだけなら美紅も怪我すらしないだろうが、こういう事は手堅く行こう」
そう言われると反論できないらしく、先を俺に譲ってくれる。
俺は少し強めに踏みつけながら階段を昇っていくがまったく壊れる雰囲気はなかったのでさっさと昇りきると大丈夫そうだと下にいるルナ達に伝えると皆が昇ってくる。
皆が集まると俺は、入ろうっと伝えると頷かれ、俺が先頭で入っていった。
一瞬、眩しさに目を瞑ったが抜けた先は普通の一軒家ぐらいの敷地によく貴族とかが花壇と池の傍にある建物の下でお茶を楽しむ場所と言えば伝わるかのような場所に出た。
本当にそれだけしかない閉鎖的な世界を俺は後ろを振り返るがルナ達はいない。俺はなんとなくこうなる気がしてたから慌てたりはしないが、確認事項が増えたと思い、お茶を楽しんでる女性が居る事に入った時から気付いてたので近寄る事にした。
「失礼させて頂いてますよ?」
褐色の肌に灰色の髪を腰まで伸ばした女性がいた。草で編んだようなドレスはグラマーな肢体を持て余すようにドレスから零れそうになっている。
耳を見るとエルフ特有の長い耳をしており、俺達の世界で言う、ダークエルフといった姿だった。
「お待ちしておりました。トール、いえ、徹様」
「それは光栄だ。だが、何故、ルナ達と俺を分離したのかの説明を聞いてもいいかな?」
俺がそう聞くと、それは心外ですっと言った表情をして答えてくる。
「私にとって都合が良い部分より、徹様のほうがこの形のほうが都合が宜しかったと思っておりましたが違いましたか?」
確かに、3人の前では質問しづらいモノがあったのは事実だが、3人の安否は気にならないかという話にはならない。
「3人は無事なのか?」
「ええ、何度、入っても出てきてしまうというループに陥ってちょっとパニックになってらっしゃいますが、見てみますか?」
そう言うと、虚空に手を掲げるとそこにルナ達の姿が映りだす。
確かに褐色の女性が言うようにひたすら出入りを繰り返しているようだ。
「声を届かす事はできるか?」
「ええ、できますよ。さあ、どうぞ、声をかけてあげてください」
にこやかに何でもない事のようにあっさり要望を応えてくれる。
色々、思う事はあるが、ここは後廻しにしてルナ達を安心させよう。
「俺の声が聞こえるか?」
どうやら聞こえたようで、俺の姿を捜そうとキョロキョロしだす。
「徹!どこにいるの?」
「まだ自己紹介はしてないから絶対ではないが、エクレシアンの女王と対面しているよ。どうやら、俺としか会う気が無いらしいから、少し待っててくれないか?」
「本当に大丈夫なのですか?」
美紅は心配そうに聞き返してくる。
「ああ、向こうがその気なら今、こうやって会話させる気はないだろうし、分離させる事もできる相手なのだから空間を渡る時に好き放題できただろうしな」
俺の言葉に一応の納得はしてくれたようだ。
本当に申し訳ない気持ちがある俺は誠意が伝わる事を祈って言う。
「本当にすまない。なるべく早く戻るから待っててくれ。じゃあな」
俺がそう言うとルナ達の姿を映してたモノが消える。
再び、ティーカップを持ち、お茶を飲み始めながら言ってくる。
「酷いですわ。徹様の要望にお応えしたのに、私だけを悪者にされるなんて」
「それは悪い事をした。だが、全部、嘘だった訳じゃないだろ?アンタにとって都合の良い事もあるっと言ってたんだから、そこは大目に見てくれないか?」
そうですねっとクスっと笑うと納得したようだ。
「とりあえず、まずはお互い自己紹介からしようか。俺は・・・」
「大丈夫です。良く存じてます。貴方がアローラに降り立ってから全て見てましたから」
アンタは俺のストーカーかっと言いたくなりかけたが思い留まる。
なんか最近、俺は知らないのに向こうが知っているという状況が続いているような気がする。
あの重たい肩書を思い出してしまい、これからも増えていく事になりそうだと諦観する。
「では、私の自己紹介を、徹様がお気付きのように、エクレシアンの女王です。私としては和也が言っていたダークエルフと呼ばれるほうが好きですけどね。これでも、元は普通のエルフなんですよ?名をスーベラと言います」
クスクスと笑いながら説明をしてくれる。
やはり、エクレシアンの女王だったかと納得すると同時にやはり和也もスーベラを見て、ダークエルフを連想したようだ。
「後、付け加えるなら、私は始まりの加護を受けし者です」
始まりの加護を受けし者と言われた俺は固まる。なんだろう、とても嫌な予感がヒシヒシしてくる。
今まで、加護について、はっきりと明言はしてこなかったが、言葉から連想されない不信感がどうしても拭えなかった。
確かに、加護の力は絶大だ。それは加護を受けし、勇者を2人と剣を交えた俺が痛いほど理解している。
それなのに俺は未だに、加護が欲しいと思った事がない。
色んな予測はできるし、おそらく大きくは違わないと分かるが、どうもスッキリしない。何か見るポイントを見逃してる気分なのだ。
俺があれこれと悩んでいるのを理解してて、楽しそうに見ているスーベラを睨むが暖簾倒しである。
「加護とはなんだ?と俺は今まで考えてきた。その答えを知っていると思って間違いはないのか?」
「ええ、勿論です。加護を得た者なら誰でも理解してしまう事なので」
和也も轟も理解しているという事か。
以前、加護の事をテリアの答えはアレだった。
だが、俺の答えは似て非なるものであった。
俺がルナのいた世界に召喚された時にルナの説明にあったものが原因じゃないのかと俺は思っていた。ルナがそれがあれば、条件次第では世界の壁を貫けるという考え方ができるほど強いモノが宿れば、絶大の力を得るのも夢ではないと俺は思っていた。
「加護とは、神が纏う神気を伸ばして与える者と繋がりを持たせる事じゃないのか?そして、繋がりから人と神の力が混ざり合う事で、人の心の中にある不浄なるもの、穢れなどが混ざり合い、蓄積されていく。そして、人にとっても神気は毒と同等なのではないだろうか?何かを代償にしているのではと思っているがどうなんだ?」
「ええ、とても良いところまでこられてます。ですが、反対なのですよ」
反対とはどういう事なんだ?と聞き返すとスーベラは自虐的な笑みを浮かべ、言ってくる。
「穢れは神から人へ、人の生命力は神にとっての毒なのですよ」
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