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136話 ドキドキだぁ!

 変わっていたのは衣装だけではなく、見た目も雰囲気も変わったテリアに俺達は出迎えられた。

 赤髪なのはそのままだが、頭には狐耳が飛び出しており、何故か片方が力なく倒れている。一度だけしか効果のない薬の効果を解除したのであろう。


 何より気になったのが、雰囲気のほうである。俺達が知っているテリアはとても明るく、エネルギッシュと言った風に元気印といった存在であった。

 今、目の前にいるテリアは良く言えば、神秘性を感じる巫女さんであるが、俺達から見ればどう見ても魂が抜けたような別人に見えた。


 しかし、俺はどことなく、これを受け入れていると言うとおかしいが、これがここでのテリアであるのだろうと理解してしまっていた。


「そう、落ち着いた感じになると美人さんって感じがするな、テリア」


 俺がそういうがまったく反応を示さない。

 勿論、俺の本音は違う。

 続けて言おうとした時、横から声をかけられる。


「お前が予言に示された小僧か、いくら予言に示されたからと言ってノコノコ来よって」


 シワシワの顔をしたジジイが俺に声をかけてきたと理解して見るがどうみても好意的には見えない。耳の形から同じ狐系のようだから意外とテリアのジジイかもしれないので一応、挨拶から入る。


「私が、トールと言います。以後お見知りおきを。失礼ながら、貴方は私の事を知ってらっしゃるようですが、私は貴方を知りません。教えて頂いてもよろしいでしょうか?」


 一応、年長者と言い聞かせて、使い慣れない敬語で話すが、無視される。

 かなり頭に来るが我慢して再び問うが相手にされない。


「その方はこの山の管理者のロトト様と仰います」


 テリアが代わりに説明してくれた。


「テリアの血縁関係の人か?」


 俺がそう聞くとテリアは首を横に振って否定してくる。

 そう聞いた俺は遠慮する理由が1つ減って楽になる。


「おい、ロトトと言ったか?お前も予言を見たんだろ?お前が神と崇める予言の相手を崇めろとかは言わんが、会話のキャッチボールはするのは最低限の務めじゃないのか?」

「な、なんて失礼な奴じゃ、ここの管理者と言えば、本来なら獣人国の女王も頭を下げるのが適当な相手なんじゃぞ?その相手に指図してくるとはバチアタリな!」


 なんでバチアタリなんだ?っと俺は軽く混乱する。

 ルナも疑問に思う事があったようで聞き返していた。


「獣人国の女王に頭下げられた事あるの?」


 ルナの言葉を聞いて苦虫を噛むような顔をする。


「少し、気になったのですが、貴方は予言を見た事があるのですか?こう言っては何ですが、貴方が権威に感じられている予言を信じてられるのでしょうか?私から見て、騒いでいる割に予言の内容を人から聞いて、都合の良いところだけを抜粋しているだけのように見えるのですが」


 美紅に突っ込まれたロトトはテリアを指差し、泡を吹くようにして叫び出す。


「仕方なかろうっ!予言の泉に近寄れるのはその代で1人のみ、目の前にいる穢れのその娘だけなのだからっ!」


 俺は久しぶりにキレた事を自覚するが今、俺にあるのが激情ではなく、とても冷たい怒りであった。


 今、こいつはテリアを指を指してなんて言った?穢れと言ったように聞こえたが、そんな訳はないだろう。自分が権威に感じている予言を読める人物をそんな代名詞で呼んだりするなんて、有り得ない。

 俺は優しく、聞いてやる事にした。


「おい、ジジイ、誰が穢れだって?もう一度言ってくれ、腐臭のするジジイ」

「ぶ、無礼な小僧だ、村の者、獣人国の者達にも声をかけて潰してくれる!!」


 俺の頑張って優しくした言葉に激情を迸らせている。そのままポックリいけばいいのにっと俺は思い、見つめる。


「ロトト様、お待ちください。獣人国の者達に声をかけても、この方に挑もうとする人は皆無でしょう。下手をすると女王が動いて、最悪の事態が生まれる恐れがあります。かと言って、村の者を女子供も全部動員して挑んでも、魔神の欠片といえ、それに勝つような人に勝機はあるのでしょうか?」


 そのまま暴走させればいいのに、テリアはジジイを止める。

 そう言われて、血管を浮かべて、フーフーと興奮しているジジイに馬鹿にする意味が伝わるように笑いかけてやる。


「ようはジジイはテリアの読んできた予言を偉そうにみんなに報告するだけの馬鹿でもできる仕事で威張ってる老害なんだろ?そして、予言を見に行けるテリアに嫉妬してる醜い生き物ってことなんだろうな」

「もう許せん、数々の愚弄、捨て置けん!」


 どうやら年を取り過ぎたせいか、元々そうだったのか分からないが、俺の怒り具合を計れないようで、ブっ込んでくるジジイをモノを見る様な目で見つめる。

 俺の怒り具合が理解できている、ルナと美紅は、ビクつきながら、恐る恐るといった様子で、徹、落ち着くのっと言ってくる。

 テリアもジジイを止めたあたりから俺の様子を理解したようで、ジジイに警告を発する。


「ろ、ロトト様、すぐにトール様に謝ってください。貴方は怒らせてはいけない方を本気で怒らせてしまってます。私が告げた、予言の内容をお忘れですか?数々の女神を魅了したっと予言にあったと伝えたはずです。そんな相手に予言の泉がある山を管理して予言の代弁をしてるだけの狭い世界の人が挑んではいけません」


 テリアも必死だったのだろう。落ち着いていれば、オブラートを包んだ言い方をしたのだろうが、そのまま伝えてしまい、ジジイは発狂するのではという感じで、意味不明な言葉を乱立させる。

 余りに煩いので俺はジジイに殺気を飛ばす。


「黙れ、無闇に殺す事はしないようにしてるつもりだが、ご希望なら沿うぞ?」


 俺の殺気を受けて、呼吸困難に陥ったジジイはやっと黙る。真っ赤な顔から真っ青に変わり、下が緩いのか、アンモニア臭が漂ってくる。

 その臭さにも負けずに動けないジジイに近づき、目を覗き込むようにして伝える。


「俺とやり合いたいなら相手になる。今すぐ山を降りて、人でも軍隊でも集めればいいさ。俺はその間に泉に行ってくる。そうそう、後な、テリアはここに置いておけない、この里がどうなろうと知った事か、俺が力づくで連れ出す」


 分かったら、さっさと行けっと階段から蹴っ飛ばして落とす。

 悲鳴を上げながら落ちていくが死んだらそれまでと俺は気にしない事にした。


「トオル君、気持ちは分かりますがもう少しやりようはなかったのですか?」


 美紅は階段から落ちていくジジイを落ちるのを止める気もなかったのに俺に言ってくる。

 ルナは何も言わずにテリアの頭を撫でていた。

 2人もテリアを穢れと呼ぶジジイに怒り心頭だったようだ。


 俺はテリアに近づく、俺に聞いてくる。


「本当に連れ出してくれるのっ?」


 俺は、ああっと頷く。


「私は耳に障害があって人並みには問題ないけど獣人としては欠落のある存在だけど、迷惑じゃない?」

「テリア、俺はお前に予言の事を告げられた時に言ったはずだ。恥ずかしいから言葉にしないでくれって言ったよな?」


 俺が言わんとしてる事を理解したテリアは涙を流す。


「それでもっ、女は言葉にして欲しいって言ったっ!」

「俺は男だから分からん。男である俺はこうして伝える」


 テリアを撫でていたルナから奪うように抱き締めて言ってやる。


「テリア、着いてこい!」


 テリアは、うんうんっと泣きながら頷き、俺の肩に噛みついた。かなりマジで・・・



 叫ばす、テリアが落ち着くまで耐えた俺は、みんなに言う。


「さあ、泉に向かおう。多分、俺達は呼ばれた側だから入れて貰えるだろう」


 美紅にそっとハンカチを渡される。どうやら、俺は心の汗が噴き出しているようである。

 有難く使わせて頂いて、汗が落ち着くと感謝を告げて、洗って返すと言ってポケットに仕舞おうとすると神速の動きか!と思われる速度で俺からハンカチを取り返した美紅は綺麗なハンカチで俺が使ったハンカチを丁寧に包んでカバンの一番下に仕舞う。


「私がちゃんと洗っておきますので大丈夫です。お気になさらず」


 なんなんだ?俺の洗濯に不満があったのだろうか?

 しかし、どことなく嬉しそうな美紅の様子が気になるが、今はその時ではないであろう。


 少し、奥に行くとテリアが立ち止まって言ってくる。


「丁度ここから通れない人はここで壁にぶつかるのっ」


 ああは言ったがちょっと心配になってきた俺は心で動揺しながら、テリアが言う場所に手から触れてみるというチキンハートを炸裂させたが無事に通り抜けられる。

 続いて着いてくるルナ達も通れて、泉の前に到着する。


「で、どうするの?徹」


 聞いてくるルナに俺は本来なら鍵となる水晶を泉に浸すと答えるところなのだが、どうも気なる。これから何かが起こる予感が止まらない。


『フーン、本当にカンがいいっ、このまま引っ張っても意味なさそうだからっ・・・テリア、体を借りるよっ!』


 俺が躊躇しているとどこからか声がすると思ったら光が生まれ、テリアにぶつかる。

 テリアは悲鳴を上げているが、あれは安全だと俺は根拠もなく理解していた。


 光に包まれたテリアは手足が伸び、至るところが増強されていく。

 それを見つめる俺は震えて俯く。

 そんな俺の様子に気付いた2人が俺を心配して呼び掛ける。


「大丈夫ですか、トオル君!」


 光に包まれてたテリアが姿を現し、それを見た俺が叫ぶ。


「そこまで、育てば俺もドキドキだっ!!!」


 ミザリーとは勝負にはならないが春奈ちゃんとは勝負ができそうに育ったテリアを見て俺は雄叫びを上げた。

 美紅は俺を白い目で見て、ルナは黙って俺の左頬を打ち抜いた。

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