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132話 事後処理と俺と美紅の苦難

 昼前に俺は目を覚ました。勿論、朝食まで続いた説教の為に寝る時間を貰ったという話ではない。朝食の時間になった時にルナが目を覚まし、快眠ですよっとばかりの幸せそうだったので、寝れてない俺はイラっとして思わず、ルナを載せてた足がルナの重みで痛いっと不用意に言った事が原因でクリティカルな一撃を頂き、昏倒するという不幸な事件があったのである。

 そのせいで今、昨日の夜も中途半端だった事と朝食を食べ損ねた俺は腹ペコであった。


 あの2人は俺に対する優しさが欠けているように思うのは俺だけだろうか?日に日に扱いが酷くなっているように思うんですよ。

 なんやかんやで毎日が充実してるのがルナ達のおかげと考えると少し恥ずかしかった俺は思わず独り言が漏れる。


「どうして、あの2人は俺に優しくないんだろうな?」

「優しくないの?」

「ああ、他の人にはやたらと気を使って簡単に怒らないのに俺だとどうしてあれほど導火線が短いのか・・・」


 ここまで話して、おかしいっと俺は思い始める。


「なるほど、トオル君の本音はそんな感じなのですか」


 俺は何かに気付き始めるが、その可能性を否定する材料を探し続けるがどうしても難しいと判断して、おそるおそる振り返るとそこには認めたくない現実が食事を載せたお盆を持ってそこにいた。


「意地悪な私達はこんなもの持ってきませんね。ごめんなさいね?」


 美紅は機嫌を損ねたようでプイっと横を向くとそのまま出ていった。ご飯だけでも置いていってくれてもいいのにっと声に出せたら俺はもっと強くなれるだろう。


「徹は馬鹿なの。美紅は今回の事、本当に徹に感謝してたの。今の料理も徹の為にわざわざ一から作り始めて持って来てくれたのに、ちょっとした愚痴だったんだと思うんだけど、あれはないの」


 そう言われた俺はすぐに立ち上がると美紅を追いかける為に扉に手をかけた時、再び、ルナに声をかけられる。


「徹は私達の事を家族と言った。他人に遠慮するような事をしたくなかっただけなの。素の自分で徹の傍にいたいと思ってたの。迷惑だった?」


 少し泣きそうな顔をしたルナを見て、俺はなんて馬鹿野郎なんだとやっと自覚した。


「俺が馬鹿だった。俺もルナ達にそうされて、嬉しかったんだが、自分でそう考えている事に照れて、思わず口にしただけなんだ。これからもそう接してくれると俺は嬉しい」


 ルナはうんっと目尻に涙を浮かべて、美紅を追いかけてあげてっと言われ、扉を開けて美紅を追いかける為に廊下を走った。


 おそらく、食堂のほうに行ったと思った俺は食堂のほうへと向かう道を曲がるとお盆を両手で抱えて壁にもたれている美紅を発見する。

 誰か来たと目元を拭う姿を見て、2人を泣かせるなんて俺って奴はと自分を殴りたい衝動に駆られるが今はその時じゃない。


「意地悪な私に何か御用ですか?」


 目をいつもより紅くさせているのに強気に言ってくる美紅を見て、俺は胸が痛かった。

 そして、俺を拒絶するような空気を発しているが、俺はそれに負ける訳にはいかない。

 近づいてくる俺に怯えのようなモノを見せる美紅に心にダメージを受けながらでも俺は、美紅を少しでも怯えさせないように意識がけて近づいて行く。


 美紅からお盆を取り上げ、窓枠のところに置くと美紅の両手をそっと握って美紅の瞳を覗き込むようにして話し出す。


「美紅、さっきのは美紅やルナへの俺の甘えからくる愚痴みたいなものだったんだ。すぐに訂正すれば良かったんだが・・・甘えを認めるのって正直、照れるというか恥ずかしいんだ。その辺は理解して貰えると嬉しい、かな」


 俺は照れを苦笑いで誤魔化しながら話すと美紅は聞き返してくる。


「私達の事、煩わしいとか思ってませんか?」

「思ってる訳ないだろう?一緒にいて楽しいと思っているって」


 俺が即答で答えるのを見て少し表情が明るくなる。


「本当に一緒にいていいんですか?」

「言ったろ?俺はお前達を家族と言った。そして、俺はお前を肯定してやるって言ったじゃないか」


 嬉しそうな美紅が、じゃあじゃあっと更に聞いてくる。


「胸が小さくても大きい人と差を付けませんよね?」

「それはとても繊細な問題だから、この場でのコメントを差し控えさせて貰います」


 俺は目線を反らして即答を思わずやってしまう。

 美紅は涙目になって俺の首を締めて、フンヌっと唸りながら俺を前後に振る。

 本気で締めている美紅の手を叩いて、緩めてっと意思表示するがお怒りの美紅は力を緩めないのでヤバいっと思っていると後ろから声がかけられる。


「あらあら、楽しそうな事をされておられるようですね。もしかして首を締められてませんか?」


 その声でパッと俺から手を離す美紅。

 俺は助かったと深呼吸をして振り返ると女官を3人連れたネリーがいた。


「まだ、事後処理と今後の打ち合わせなどあるのにいつまでもこないと思ったら、人の城の中でラブコメですか?一回、死んでみる?」


 青筋を浮かべたネリーの怒気は本物だと理解した俺はごめんなさいと土下座する。

 美紅もどうしたらっといった風にオロオロしているとネリーが言ってくる。


「美紅さんにはやって貰いたい事があります。最初は、希望を聞こうかと思ってましたが強制参加決定です。アニマルガールズの出動です。国民の要望で凱旋パレードを城に挙げられてます。すぐに用意して首都のメインストリートを練り歩いてください」


 絶句する美紅を尻目に女官の1人にルナさんにも要望を伝えてください、あの方なら2つ返事で了承してくれるでしょうっと言うと残りの2人の女官に美紅さんを連行してあの可愛い衣装に着替えて貰ってくださいっと良い笑顔で伝える。

 明らかに、可愛い衣装というの言葉に悪意を感じる。


 美紅が俺を見て、トオル君、助けてっと半泣きで言ってくるが俺もこれから何かあると分かっているから負債を増やさない為に美紅と目を合わせない。


「大丈夫、昨日まで着てた服で今日1日歩くだけじゃないか・・・」


 女官に両手を捕まえられて連行されて行きながら、トオル君の裏切り者っと叫び声が俺のところに届くが、俺も何もなしって事はないはずなんだっと言い訳をする。


「さて、トール様はですが、事務処理は勿論あるのですが・・・そうそう、私、トール様の事を知りたくって色々調べたんですよ?まあ、それはどうでもいいんですが」


 ちょっと待ってください。個人情報を調べたと言われた側は心穏やかにおれませんよ?っと俺がぼやくが綺麗に流される。


「事務処理を完了してから時間を無理矢理取らせますので、うちの兵士の肉弾戦の相手になってくれませんか?全てと言うとトール様も大変だと思いますので、とっても逞しい筋肉の持ち主ばかりを選別しますので、全員を参ったするまで相手してあげてくださいね?」


 俺は脂汗が滝のように流れるなか、誠心誠意、どこに出しても恥ずかしくない究極土下座を決める。


「どうかそれだけは、ご勘弁を・・・」

「とりあえず、事務処理に行きましょう」


 そう言うネリーに再び、お願いするが、どうしましょうか?っと笑顔で言われる。


 王族の女の子って怖いお?どこかに囚われのヒロインに相応しい王族の方居られたら至急、徹まで連絡ください。この場から逃げる意味も兼ねて、全力で向かいますのでっと馬鹿な事を考えながら、俺はネリーにドナドナられた。



 事後処理の事務方はだいたい終わらせ、次はエコ帝国の処遇についての話に移行した。


「さすがにこれだけの事をやって、証拠も押さえられて、尚且つ、一般人レベルまでに晒されてしまえば、もうシラを切るのも無理でしょう」


 ネリーはここにいる面子、ガンツとミザリーと俺に向かって言う。

 ミザリーは軍を動かすだけだと思って来てたようで、この場にいる自分に違和感と何を話したらいいか分からず、さっきから俺の袖を掴んで強張った顔をして時折、俺に目配せしてくる。

 この視線に俺は覚えがありまくる。テンパった時のルナがどうしたらいいか分からない時に助けを求める目にそっくりだった。


「まあ、そこでシラ切るようなら、こちらにも考えがあると伝えて、素直になるようにしてやらんといかんじゃろうな」


 ガンツが凄味を見せる笑顔を浮かべる。やはり、ザバダックの事もあるから適当な事では済ませないと思っているようだ。


「勿論、そのつもりですが、エルフ国はどういうスタンスでいかれるのですか?」


 キターっとばかりに俺に視線で助けを求めるミザリーに嘆息すると代わりに応える。


「おそらく、ティティならそんな事言ってきたら最初の3倍は要求を刎ね上げてギリギリまで絞り取るか爆発させて受けて立つとか言いそうだな」

「ティティというはティテレーネ王女の事ですか?」


 俺が代弁すると、まさかそこに食い付くっと言いたくなる部分を聞き返してくる。


「え?ああ、ティティにそう呼んでくれと言われたしな。ティティは俺の事を兄様と呼んでくれて、俺の可愛い妹さ」


 エルフ国の姫は侮れませんっと親指の爪を噛むとミザリーに伝言を頼む。


「ティテレーネ王女に国としては仲良くしましょう。ですが、いずれ、この事は決着を付けましょうっとお伝えください」


 ミザリーがテンパりながら、この事とは?っと聞き返すが、ネリーに王女ならそれで意味が伝わるはずですっと切り捨てられる。


 俺は3カ国の出方を纏めの時だと思い、俺自身の思いを伝える事にする。


「みんなに取ったら今回の事は腹立たしい事ばかりだと思う。しかし、今回の事はエコ帝国全体の話じゃなく、上層部の一部が暴走した事だと理解をお願いしたい。特に普通に生活をしている国民には全くと言っても良いレベルで関係がないんだ。黙認してたと言えばそうなるのかもしれないが、今まで国レベルの力がある3カ国が何も言えなかった相手に国民レベルで何もできなかったという事を配慮してあげて欲しい」


 俺はそういうと頭を下げる。

 本来なら異世界人である俺が代表でこんな事を言う事ではないのかもしれない。でも、クラウドにいるシーナさん、ミランダ、ルルやデンガルグのおっちゃんにダンさんにザックさんにそして、ツンデレさん。他にも俺と接してきた冒険者に良くしてくれた市場の人達。この世界に最初に来た時に親身に面倒を見てくれたザウスのおっさん。

 もう俺は異世界人とか関係なくこの地に住む人達に強い思い入れがある。決して他人事じゃない。


 頭を下げ続ける俺にガンツは溜息を吐き、言ってくる。


「トールにそこまで言われて、首を横に振れる者などおらんよ。なるべく、そちらに被害がいかんようにはするが、エコ帝国にダメージを与えようとするとゼロとはいかんという事は覚えて置いて欲しい」


 ネリーとミザリーにそれでええじゃろ?っと聞くと了承される。


「その辺の細かいところは国レベルで私達が纏めますので後で文章にしますので確認してサインをお願いしますね?トール様」


 俺が頷くとネリーにトール様から何か要望はありませんか?と聞かれた俺は前々から苦々しく思ってた事を言ってみる。


「3カ国ではないと思うがエコ帝国では首都のみだけで奴隷制度が認められている。それの撤廃と現在、奴隷として扱われている人達の保護の為に3カ国で受け入れて貰えないだろうか?奴隷制度を撤廃しても、差別も残るし、生活もままならないと思う。普通の生活なんて、エコ帝国では無理だと思うんだ」


 ガンツがニヤリと笑って、良い所に気付くなっと声を上げて笑う。

 ミザリーも奴隷っと言葉を聞いた時に嫌悪感を表して、国に必ず上申しますっと俺に約束してくれる。


「獣人国としても受け入れに応じます。あれは誰の目にも映るエコ帝国の闇の代表みたいなものです。あれを撤廃させたらエコ帝国の腐った上層部はだいぶ困った事になるでしょうね。問答無用に待ったなしでさせましょう」


 どんな手を使ってでもさせます、手続きに時間がかかると言われたら、私達がエコ帝国の指揮を執りますから玉座を明け渡せと言えば、すぐに首を縦に振るでしょうっと笑顔で言うネリーに俺は頼もしさと何やら良く分からない恐怖に包まれる。


 俺が介入できるレベルの話はだいたい終わったという段階でネリーが笑顔で言ってくる。


「では、トール様は夕食の時間までうちの兵士との訓練に汗を流して来てくださいね?」


 という言葉と共に扉が開かれる。開かれた先にはマッチョの男が数名おり、俺を見つめて、ほんのり頬を染めている。


「トール様、俺達とボディランゲージしよ?」


 俺の血の気が一気に下がる。

 そして、廊下まで連れられ、俺は叫ぶ。


「この展開だけは、らめぇぇぇーーーー!!」


 俺の悲鳴が響き渡るが誰も助けには来てくれなかった。




 その日の夜、俺と美紅は抱き締め合って、お互いを慰め合って泣きながら俺達は仲直りをした。


「なんで、それぐらいで泣くか分からないの」


 ルナの呟きを拾った俺は、俺もお前がオヤツを抜かれるだけで泣けるのか分からねぇーよっと思った。

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