131話 幻想を壊した先にあるモノ
子供の頃、とても高い、遠いと思い、登る事、飛び越えるのが無理だと思ってた遊具や川などや遊び場にした場所はありませんか?もし、あったら、久しぶりにそれを見に行くと頭で理解している以上の言葉に言い表せない気持ちに包まれると思いますよ?
ただ、場所次第では通報されてもバイブルは責任をとりません(笑)
私はエルフ国の軍の後ろでルナさんと共に一緒に出番を待っていた。
トオル君は言っていた。アイツはきっと往生際悪く足掻いて自分では投降してこないだろうっと。そして、捕まってきたのに厚顔無恥も甚だしくも俺と決闘を求めてくるだろうと予測しているようだ。
「俺と勝負しろっ!トール!!そして、私が勝ったら、解放しろっ!」
本当に予測通りに要求してきた。なんて底の浅い人なのであろうか、いくらトオル君のカンが鋭いと言ってもここまでくると少し泣きたくなってきたが、この後、トオル君が言うセリフは聞いている、その後も同じなのであろう、トオル君の予想通りに・・・
「お前が投降してきたら受けてやるつもりだったが部下に差し出されたお前と俺が何故してやらないといけない?しかも、勝てる訳ないが勝ったらその破格の条件を付けれる立場じゃないぜ?」
次が女王が締めるはずである。
「このまま生かして戻るのも手間なのでグリード司令官はここで楽になって頂きましょうか」
せめて、次のセリフだけは予想を裏切ってください。そうでないと私の10年が余りに悲しすぎます。
「トール様、どうか、私に1度だけで良いのでチャンスを!お慈悲をお願いします!!!」
ああ・・・どこまでも小さな枠の中にしかいない人なのであろうかと絶望とは違うが大きく落胆する。自分にとって大きな壁、楔となって私を苦しめてきた存在が幼い頃に付けられた色眼鏡を取るとこんなに矮小な存在だと知って、怒りを通り抜けて憐れみを感じ始める。
「分かった、分かった。見苦しいから1度だけチャンスをやる。だが、相手は俺じゃない」
トオル君のお呼びがかかった。私の忌まわしき鎖を断ち切れと言ってくれている。
さあ、過去の自分との決別をしよう。
私はエルフ国の軍の真ん中にできた道を歩く。
遠巻きにいる獣人国の方達はミクニャンっと連呼し、道を開けてくれたエルフ国の軍人は、声を揃えて、ご武運ををっと敬礼付きで見送ってくれる。
「お前の相手はアニマルガールズのミクニャンが相手をする」
トオル君の言葉を聞いたグリードは相手が私だと分かるとニヤリとイヤらしく嗤う。
私が相手なら勝てると思っているのであろう。
昨日までの私になら無抵抗でとはいかなくても行動に制限をかける程度はできたであろう。
だが、既にトオル君によりその恐怖の幻想は破壊されている今、どの程度の効果を期待できるというのだろうか?それが分からないような人だと更に落胆する。もっと高い位置にいて逆らうのが無駄なのかと思ってた時期があっただけに恥ずかしさも溢れる思いだ。
トオル君の指示でエコ帝国の副司令にグリードの拘束解除と本人の武器の返還をさせる。
嫌そうな顔をしながら命令通りに動こうとする、この人はトオル君に命令されるのがイヤなのか、拘束したグリードに逆恨みされるのが怖いのかっと思うが視線を交互にしているところから、おそらくどちらもだろうと思う。この人も大概な人だなと思うが、このケースになった時の兵達の扱いは死ぬまで鉱山で強制労働と決まっていたから、あんな拗ねた事ができるのも今の内なので許してあげようと思う。
拘束から解放されて、腕を廻しながら元部下を睨みつけながら装飾だけやたらと派手な片手剣を受け取ると私をイヤらしく見つめ嗤ってくる。
「さて、分かっているな?お前は無抵抗に私に斬られろ。難しい事は言わない、ただ、突っ立ってればいい」
何を馬鹿な事を言っているのだろう?ああ、そうか、以前の私だったらそうしないと思わされていたんだなっと理解する。
チラっとトオル君を見ると自信ありげな笑顔しているが、良く見ると組んでいる腕に力が入り過ぎてて震えている上に掴んでいる腕に指が食い込んで血が流れている。最初に見た時から自信ありげな表情がピクリとも動かないところにも気付いて、私の中に暖かいモノが流れ込む。
私の事を信じて、最後を任せてくれた。しかし、私を縛る鎖がまだ外れてなかったらどうしようという不安が今のトオル君の姿なのであろう。
大丈夫です。私は貴方の期待に応えて、貴方の下へと帰ります。
私は何も語らず、フレイドーラを抜く。
この肉球グローブは凄い、外さなくても剣を握れるのである。あの人のスペックはどこまであるのであろう。
だから、目の前の人はあの人に勝てなく、いなくなってもあの人の席に座る事ができなかったのであろうと少し同情する。
「なっ!ま、まあいい。無抵抗といっても構えもせずに斬ったらイチャモンを付けられるかもしれんからな」
まだ、私を支配していると勘違い、いや、勘違いじゃないと信じたい気持ちが私の行動を否定してくる。
そのまま、動くなっ!と目を血走らせながら剣を上段から斬りかかってくる。
私は無感動に下段から斬り上げ、グリードの剣をふっ飛ばし粉砕させる。所詮、装飾だけに拘った剣、なんて脆いのであろう。デンガルグのおじ様に頭を下げて見た目じゃなく、軍人らしく実用的な剣を作って貰えば・・・ああ、きっと腕を磨いて出直せっと怒鳴られて終わりですね。
グリードは粉砕された自分の剣を見送って、茫然としている。
「美紅ぅ!お前は何をしているのか、分かっているのかっ!」
勿論分かっている、貴方よりねっと心中で呟くと私は抜き身の剣をそのままに近づくと怯えの走った表情で下がるグリード。
何も答えない私から受けるプレッシャーからか汗が滝のように流れ出す。
私はグリードの横を駆け抜ける。この場にいる一部の者にしか目で追えなかったであろう速度で駆け抜けた直後、グリードの右腕は宙を舞い、血が噴き出す。
「腕が!腕がっ!わ、私が悪かった。頼む、助けてくれ」
「そう貴方に訴えた方は私以外にも沢山いたはずです。その時、どうしたかが貴方にとっての正解なのでしょう?」
グリードだけに聞こえる声でそういうといきり立った。
「クソガキが生意気言いやがってっ!!私の為に死ね!美紅ぅ!!」
無策に突っ込んでくる、グリードを見ていると腹の底から沸き上がる衝動があった。私はその衝動に素直に応じた。
しかし、この後は私は激しく後悔する事になると心のどこかで分かっていたような気がする。
「美紅って言うにゃ!今の私はミクニャンだニャ!!」
高らかに叫び、横一線に剣を走らせるとグリードの首を断ちきる。
私は剣を振り上げ、勝利を宣言すると怒涛のミクニャンコールに包まれる。
固まった笑顔の表情のまま、私は思った。
『やってしまった!』
それから、長い事、猫の獣人と兎の獣人の女性がとても人気者になる事になる特に猫の獣人が一番人気で、とある猫の獣人のコメントを載せると、
「ミクニャンのように強く可愛くが正義ですニャ」
と騒がれる事になる。
とりあえず、未来はともかく、現在は美紅はその場から逃げるように去って、ベットのシーツに包まって、夕食にも出てこない程、身悶えた。
俺は色んな手続きや対応に追われ、やっと解放されたのは日付も替わり、歩きながらでも寝れるぜっと無駄にテンションだけはある状態で部屋へと帰ってくるとルナは相変わらず、幸せそうにシーツを蹴っ飛ばして寝ているのを溜息混じりに蹴っ飛ばしているシーツをルナにかけてやるとムグムグと口を動かして幸せそうにしている。また食べ物の夢でも見ているのであろう。
さて、寝ようと思うと美紅のベットでも誰かが寝ているような膨らみがある事に気付き、なんとなしに近づくとそこで美紅は静かに寝ていた。
長いまつ毛だとは思っていたが、こうやって寝ているとよく分かる。美紅の寝顔ってこんなに愛らしい感じなのかっと初めて見る美紅の寝顔をジロジロ見ながら、やっと美紅も安心して寝れるようになった事に俺は今日までの苦労が報われた気がした。
俺は無意識に美紅の頬に手を当てるとしっとりとした肌触りの美紅の頬を堪能する。肌はモチモチして、目はパッチリっと開いて、徐々に朱色に変わっていくのはきっと攻撃色・・・攻撃色??
気付けば、目を覚ましている美紅と見つめ合っていた。落ち着いて考えれば、今まで眠りの浅かった美紅に触れたら起こすのは確定だろうと俺は得心した。
俺は無駄と知りながら言ってみる。
「お疲れ、俺ももう寝るよ。おやすみ」
フゥーーっと唸る一匹の獣が俺に斬りかかる。
「躊躇なしに斬りかかるなっ!!寝顔を見たのは悪かった!許してぇ!!」
俺の言葉に更にヒートアップした美紅の暴れぷりにルナが飛び起きて、美紅を押さえてくれる。
「なになに?何があったの?」
事情を説明するとルナが呆れた顔して俺が悪いと言ってくる。が、しかし、斬りかかるのは駄目なのっと美紅を説教する珍しい絵があった。
衝動を飲み込んだ美紅は分かりましたっといい、床に正座すると自分の前を目の据わった顔で叩く。あれはあそこに正座っと言っていると数多い経験が俺に教えていた。
どうやら、寝かせては貰えないらしい。夜更かし大好きな最近の若者が沢山いるというが、説教されながら貫徹させられる体験を沢山すると早く寝ようって気にきっとなるぜ?これ、徹からお知らせな?っと馬鹿やらないと心が折れそうな今日この頃、朝食までの長い戦いがこれから始まる。
ルナですか?俺の正座に圧力を加えるのって言いながら俺の膝枕で寝言を言いつつ幸せそうに寝てましたよ。
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