130話 チェックメイト
新米パワーがもう1話書かせましたので上げさせて頂きます(^。^)y-.。o○
グリードは周りを見渡すと100名を超える部隊だったのに今では20人をきる人数まで落とされていた。
これが戦争なら完敗な状態だっとギリっと歯を鳴らす。
しかし、これは戦争ではなく破壊工作が目的だ。目標を破壊してしまえばこちらの勝ちである。
だいぶ廻り道をさせられて予定より4日遅くはなってしまったが振り切って、目的地と目と鼻の先というべきところに到着した。
もう勝った気分を味わっていると部下が報告してくる。
「今まで、付かず離れずと追ってきた獣人部隊の姿が見えません。たいした障害もなかったのにも関わらず、引き離したかのような判断はまだ早いかと」
「そんな訳はないだろう。所詮、獣もどきの集まりが我らを恐れて尻尾を撒いていったに決まっている」
自分の絶対優位を疑わないグリードは部下の進言を聞き入れない。明らかに部下の目のほうが現状を理解できてるのははっきりしている。
そんなやり取りをしていると別の部下が慌てた様子でグリードの天幕へ失礼しますっと言いつつも返事を確認せずに入ってくる。
「入っていいと許可はまだしておらんぞっ!」
「申し訳ありません。緊急事態だったもので、獣人達の姿を捜す為に出ていた斥候の責任者の私が代表で知らせに来ました。我らは、軍に囲まれてます。今度は逃げるルートは存在しておりません。しかも軍は獣人国だけではなくエルフ国、ドワーフ国の3カ国の混成軍です・・・」
目を剥いて絶句するグリードにどうしましょうかっとうろたえた部下が聞いてくる。
「馬鹿を言うな!いつの間に3カ国が手を組んだというのだ。組むとしても時間もかかる。しかも、3カ国が一堂に集まったという知らせもなく、共闘するなどあり得ん!」
「しかし、少数の混じっているだけであれば勘違いを疑いますが、ドワーフ、エルフともに500程の人数がいて、獣人国で1000とても勘違いをしようがありません。間違いありません」
勿論、争っているような様子もなく我らを囲むようにして徐々に近づいてきておりますっと言ってくる。
グリードは迷っていた。今なら突破できる可能性が無くはないかもしれない。包囲網が狭まってくるとどうしても層が厚くなってくる。そうなると、狙った場所での戦闘に勝つ事ができても勝利した瞬間に袋のねずみになってしまうのは目に見えていた。
グリードが判断を下そうとした時を選んだかのように声が響き渡る。
『獣人国民の皆さん、私の声が聞こえているでしょうか?私は獣人国、女王ユリネリーです。』
突然、近くで大声で叫ばれているようによく聞こえたから周りを見渡すが、誰もいるように見えず、部下の報告からもいませんっとあがってくる。
ちっ、使えない!と叫びつつもユリネリーの演説は続いた。
『ここ最近、正体不明の人よる事件の多発には皆さんもお気付きかと思います。ですが、ご存知のようにアニマルガールズの活躍のおかげでたいした被害は出ておりません』
遠いところから地響きかというような低い男の集団の声が届く。
『そして、その事件を起こしている相手が、とある国が主導でやっている事を掴みました』
どこの国だぁ!っと雄叫びのように騒ぐ声が聞こえてくるを耳にしてグリードは難しく考えるのを止め、部下達に撤退の準備を急がせる事にした。
『その国はエコ帝国。勇者を触媒に魔神から守っている事で今まで高圧的に外交して私達を苦しめてきたあの国が仕掛けてきてます。ここまで聞いて、おかしいと思われている方達もいるでしょう?何故、裏でコソコソする必要があるのかという疑問です。今まで通り、強気な外交で、無理矢理に要求を飲ませればいいのに廻りくどい今回の事をやってきてるエコ帝国に疑問を覚えてらしゃると思います』
グリードは焦燥に駆られる。
あそこまで自信ありげに言っていると言う事はバレているとみるべきだ。
急ぎ、部下達に撤退させようと声を張り上げるが意識操作をしてない部下達は手を止めて、演説に耳を傾けてこちらに反応を示さない。
『今までの強みの勇者召喚ができなくなっているのです。学者の一部では時々、女神の神託を聞いている者がいて、その者の話では、もう召喚をする為の媒体はなく、召喚する事は叶わないと訴えてたそうです』
やはり、バレていたかっと歯軋りをさせ、周りを見ると意識操作されてない部下の動揺が凄い事になっていた。
最悪、捕まってもエコ帝国の権力で無事帰れるだろうと高を括っていたのであろうが、その安全装置もないと分かると慌て出したのであろう。
グリードは無駄と分かりつつも、静まらせようとするが恐慌状態に陥った部下は制御が聞かない。
『エコ帝国の方達もこの演説が聞こえているでしょう?貴方達は許されない事をしましたが、アニマルガールズとそして、エルフ国を救い、ドワーフ国の危機を未然に防ぎ、魔神の欠片すらも倒した男性が中心に動き、我ら3カ国を纏めたおかげで被害らしい被害は出ておりません。大半のエコ帝国の方々は只の兵士で命令されたから動いてたと思います。司令官を差し出すというのであれば、命の保証だけは致しましょう。1時間だけ待ちます。良き返事を期待しております。その立役者から司令官への一言があるそうなので代わります。良く聞いて聞き逃さないでください』
『獣人国の皆さん、こんにちは。今、ご紹介頂いた3カ国の繋ぎをさせて頂いたトールといいます。エコ帝国の者にはクラウドのAランク冒険者と言った方が顔の通りがいいかもしれないな。グリード、聞いているか?俺に剣の力があるから勝てないとほざいたからボロイ剣にしたら言い訳して逃げた。そして、今度は組織としてお前に挑んでやったぞ。これで満足か?エコ帝国の上の奴らは好き勝手にやり過ぎた。お前達を擁護してくれるはずのエコ帝国に発言力などもうないに等しい。これから3カ国に今までの負債を返す為に必死に頭を下げる立場だ。部下に捕えられたり、こちらに捕まる無様な事になる前に自分の足でこちらに来たらどうだ?今更だが、ご希望なら俺が相手になってやってもいいぞ?それぐらいの優しさは持ち合わせているから、お前の軍人としての潔い行動を期待する』
『以上だそうです。エコ帝国の軍人に誇りがあるかどうか皆さんで見守りましょう』
言いたいだけ言うと演説は終了する。
足を踏み鳴らす音だと思うがそれが一定のリズムで地響きのように伝わってくる。
部下達は遠巻きにグリードを囲みだす。さすがに目の前の部下に命令しても聞かないと言う事は理解できた。意識操作した部下は命令をする前に他の部下に拘束される。命令されてないことには無抵抗なところを突かれた。
副官の立場だった者が一歩前に出て言ってくる。
「グリード司令官、ご決断をお願いします」
周りは全て敵だと認識した。
1時間もせずに、グリードは部下達に拘束されて目の前に連れてこられた。
「グリード司令官に投降を勧めましたが我らに斬りかかるという暴挙に出ましたので拘束してお連れしました」
なんて事を言っているが結局のところ、命欲しさに投降を進めたが抵抗されたから捕まえて連れてきたって事を耳心地良い言葉に変えているだけだろうっと俺は思ったが交渉はネリーに任せてあった。
「そうですか、それは残念ですね。グリード司令官、貴方の英断を期待しておりましたが遺憾に思います」
笑顔で伝えるネリーを見れば、言葉通りではないと誰でも分かる為、グリードは青筋を浮かべて唸る。
「俺と勝負しろっ!トール!!そして、私が勝ったら、解放しろっ!」
なんて身勝手な・・・いや、もっと前から分かっていたが呆れる。
「お前が投降してきたら受けてやるつもりだったが部下に差し出されたお前と俺が何故してやらないといけない?しかも、勝てる訳ないが勝ったらその破格の条件を付けれる立場じゃないぜ?」
俺は全力で馬鹿にしたように言ってやる。俺はネリーに目配せすると頷かれる。
「このまま生かして戻るのも手間なのでグリード司令官はここで楽になって頂きましょうか」
蒼白な顔をしたグリードは慌てて言ってくる。
「トール様、どうか、私に1度だけで良いのでチャンスを!お慈悲をお願いします!!!」
拘束されているから頭だけを地面に擦りつけるように言ってくる。俺は無表情のまま見下ろし、溜息を吐き出すようにして言う。
「分かった、分かった。見苦しいから1度だけチャンスをやる。だが、相手は俺じゃない」
俺はそう言うとエルフ国の軍が二つに分かれて後ろから歩いてくる者の為に道を作る。
遠巻きに見ていた獣人国民が熱狂の声を上げる。
黒猫装束の少女が現れる。
「お前の相手はアニマルガールズのミクニャンが相手をする」
そう俺が宣言すると獣人国民はミクニャンっと連呼してヒートアップする。
そんな完全アウェーなのにグリードはニヤリとイヤらしく笑った。
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