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129話 俺が選んだ道

 そう、もう秋といって良い時期。実りの時期です。

 そういう訳で朝から叩き起こされて、親に私達は今日も仕事だから1年分の新米の引き取り(運べという事)お願いね?(強制)が発動させられました。

 手がプルプルですよ。でも1農家から買ってますので混ざりモノのない良い米を毎日堪能させて貰っているので文句は言えません、

 皆さんは新米はもう食べられましたか?

 エルフ国とドワーフ国が既に俺の反応待ちだったとは露にも思ってなかった頃、俺はある仕掛けを獣人国の首都バーバラにする為に奔走していた。

 それは、元の世界でいうところのスピーカーのようなものを魔法で疑似的に創り出して設置していた。

 本来は姿を隠した状態で声による撹乱を狙い、編み出した魔法だったが、元々の目的は和也に一撃を入れる為だったが、鼻で笑われて見破られ、無駄になったと思っていたが思わぬところで役に立ったなっと苦笑いをしつつ、次のポイントへと急いだ。


 街を駆け回っているとルナ達が頑張ってくれているおかげで、致命的な事態にはなってないせいもあるだろうが、基本的に獣人達は陽気で気楽な民族なようでちっとも深刻な空気にならない。


 まあ、もっともグリード達からしてもそれが本命じゃないから本腰を入れてないと分かっている。

 そう、獣人国との戦争や取引は副次的な目的でしかない。他の目を本命に向けさせないのが狙いであった。

 本命はテリアの部族に伝わる泉に浮き上がった予言にこう書かれていたとテリアに俺だけに説明された部分にあった。


 予言によると魔神の手の者がエコ帝国を唆して、この泉を破壊しにくるという事らしい。

 どう、唆されているというのも、美紅が結界から出た事を知ったエコ帝国は再び、美紅の代わりの勇者を召喚しようと何度もチャレンジをしたらしい。

 しかしながら、失敗続きで召喚できなかった。

 それは当然の結果である。ルナが神託で必死に伝えてた事を思い出せば、召喚する為の媒体が存在しないという事に気付き、燃やす物がないのに火種を一生懸命用意しても燃え上がる事などないと気付けたのだろうが、愚かな者達は他に理由を求めた。


 その愚かさを突かれ、踊っているのが今の状況である。


 今、ゴビが追い込みをかけている場所はテリアの言う泉から一番近い場所にある野営に適した場所である。

 報告を聞く限り、グリード達は上手い事、ゴビ達をかわしながら目的地に近づいていると思っているようだと聞いている。

 ジワジワと戦力を削られ、兵も疲弊し、工作がまったく上手くいってないのに追い込まれている場所、泉の傍に到着したら自分達の勝ちだと思っているかのように指揮官は意気揚々だと馬鹿にする報告を受けて、俺から見ると次でチェックメイトになるのを知らずに単身突破するキングを見てる気分だ。

 だが、それも逃げれているのではなく、俺達が意図的にそうしてるだけで、もうすぐ気付くだろう。逃げる場所がない事に。



 俺は仕込みが済むとネリーと打ち合わせする為にお忍びでやってきているバーバラの冒険者ギルドに向かう事にした。

 そこで思わぬ顔が揃っている事に驚く事になる。


「相変わらず、忙しいようじゃな。元気そうで何よりじゃ」


 腕を組みつつ、男臭い笑顔を見せるガンツとその後ろにいるビキニアーマーが目に入る。

 俺は神速の歩行を発動させると大きな果物へと飛び込んだ。


「わいの桃源郷がやってきたっーーー!!!」


 ひゃっほーいっと叫ぶ俺と悲鳴を上げるミザリーにより、その場が急に騒がしくなる。

 呆気に取られるガンツはエルザと顔を見合わせると苦笑し、ユリネリーの様子に気付くと笑みを深める。

 幸せの塊に顔を埋めて、この世の天国を満喫しているとある事を思い出す。

 桃源郷にある桃を食すと不老不死になれるとか聞いた事がある気がする。俺のチャレンジャー精神が刺激され、やってやんよっと爆発する。


 さあ、実食っという時、俺は疼きでは済まないレベルの激痛を後頭部に受けて、床に叩きつけられる。

 血がダクダクと流れるのを認識しながら後ろを見上げるように見るとはっきりと分かる青筋を立てたネリーが釘バットを握り締めて笑顔で言ってくる。


「トール様、少しは血の気は落ち着きましたか?もう少し抜いておきますか?」


 俺の血で鈍い輝きを見せる釘バットをちらつかせて言ってくるネリーに、もう結構ですっと涙を流しつつ、許しを請うた。

 ってか、この世界にも釘バットあるんだ・・・


「目が見えないと聞いておったがよくトールがやっている事が分かったのぅ?」


 ガンツは髭を撫でながら言ってくるのを笑顔で答えるネリー。


「女の子に無用に突っ込むと痛い目にあいますよ?友と呼ぶだけ、貴方も同じように痛い目を会ってきてそうですね」


 むぅっと唸るガンツ。お前もかっと俺は内心思いつつ、頭に魔法をかけて治療していると、そういえば、あの2人に一緒に説教されたなっと思い出す。


 やっと冷静に状況を理解し始めた俺は、この場にいると思ってなかった2人に理由を問う。


「どうして、2人がここに?ガンツはまだ書簡を貰って飛んできたと言われれば納得できるけど、ミザリーは明らかに時間がおかしくないか?」

「それはのぅ・・・」


 ガンツはミザリーをチラっと見るとミザリーは頷いて見せて、顔が赤いままだが俺に説明を始めてくれる。


「では、私から説明させて頂きます。エルフ国にエコ帝国がちょっかいをかけた事をキッカケにエコ帝国の動きを探っているとドワーフ国でも何やらやっているのを掴みました」

「ザバダックに魔剣の製造法を教えたのがエコ帝国という事らしい」


 ガンツは吐き出すように言う。相当頭にきているのが傍目でも分かる。


「そこで姫様が王を通して、ドワーフ国との外交を始められました。正直、時間のかかる話になると私などは思っていましたが、姫様の努力もあるとは思いますが、貴方の存在が壁に穴を開ける要因になって、すんなりと話が纏まりました」


 ミザリーは今まで俺に見せなかった友好的な笑顔を見せる。いつも俺を見る時はしかめっ面や白い目をしてるイメージしかないせいか照れる。明らかに普段の自分の行いのせいだとは気付かないフリをする。


「エルフ国、ドワーフ国と続けば、当然、獣人国にも何かするだろうと判断した姫様は動向を探りを入れられましたが、国交がまったく開かれてない場所ということもありますが、エコ帝国が間にあり、難航されている時に姫様は思いきって動くと判断されます。そう、貴方が獣人国へと向かったという情報を根拠に」


 優しい笑みを浮かべるミザリーの言葉を継いでガンツが言ってくる。


「あの姫様は単刀直入に、兵をドワーフ国に駐屯させてくれっと言って来よったわ。さすがに国交が開かれたといっても間もない事だったから断ろうとしたら、きっとトールの為に必要になりますっと自信ありげに言われてな、好きにさせたわい」


 本当に必要になってびっくりじゃがなっと笑うガンツを見て、俺はどこまで恐ろしい存在になるの?ってティティに言いたい気持ちで一杯であると同時に兄として誇りに思った。


「トール様は本当に凄いですね。本来ならエルフ国を救った時点で救世主として歓待され、優雅に暮らすという選択肢も選べたでしょうに、その後も数々の偉業を積み重ねても、自分を只の冒険者と思っておられるのですから・・・」

「そうだね、もうアンタは只の冒険者と思う時を終わらせないといけないね。今回の事、良い考えだとは思うが、1つ大きな穴がある。それはそれを纏めた人物の存在だねぇ。アンタが只の冒険者と言い続けると誰が主導かと3カ国のトップは落ち着いても、その下で揉めるのは火を見るより明らかさ。その3カ国の者が納得できる人物、アンタ以外いるなら紹介してから只の冒険者と名乗りな」


 ネリーの言いたい事を繋いだようにエルザが俺にそう言ってくる。目がアンタはどうするんだい?っと問いかける。

 この場にいる者達の心の内の代弁をしたとばかりにエルザは周りを見渡すが頷かれて支持される。


 俺は正直、そんな大層な人物ではないっという気持ちに嘘はないが、エルザが言うようにこのまま放置すると揉める状況も理解できた。

 それでも、俺には不適格ではという気持ち、いや、逃げの気持ちが襲ってくる。

 でも自分が吐いた言葉を思い出す。俺は美紅にお前が楽しいを見つけてやるって言った。俺を可能性と信じた美紅を裏切るような真似はできない。


「ああ、その重責は俺が背負う。改めて、頼む。俺の為に力を貸してくれ」


 深く頭を下げる俺の肩を力強い大きな手が叩く。


「鼻からワシはお前の味方じゃ、お前が間違ったら止めてやるわ」


 ワシらはそういう関係じゃろ?っと俺の顔に拳を当てられる。


「エルフ国は貴方の進む道を信じると国民の総意です」


 笑顔で信じてますっと伝えながら俺の手を取る。


「勿論、私達はトール様に助けられる側、異論などありません。お礼は何が良いでしょうか?獣人国の王の座などいかがですか?」


 俺の頬を触りながら、悪戯っ子のような笑みを浮かべながら爆弾を落としてくる。

 ガンツはそれはいいっと爆笑し、ミザリーは姫様に殺されますっと必死に反対していた。

 俺もパニックに陥りそうになったが2人の反応が早くて大きかったから呆けただけで済んだ。


 俺が呆けているとドアを激しくノックする音が響く。


「誰だい、ここには人を通すなっと言っておいたはずなんだがっ!」


 せっかく面白いところだったのにっと呟く言葉が全てを台無しにしている気がするぞ?


 ドアを開けた先にいたのはやりきった男の顔をしたゴビがいた。


「お前さんの注文通り、追い込んだぜ?」


 俺は笑みを強めて、待ってたと伝える。


 さあ、チェックメイトの宣告をしに行こうとその場に居る者に伝えると皆、力強い笑みを見せ、各自、行動を開始した。

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