表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/242

127話 女王ユリネリー

 城に忍び込んでみれば王だと思ってたら実は女王だったという状況に固まってしまったが黙ったままなのは失礼と思い、挨拶をしようと思ったが、直前にある事に気付いた。

 俺はまだ透明・・ままのはずであるとどうやって気付かれたっと戦慄が走るが、明らかに目の前の少女、俺と年が変わらなさそうな子は敵意があるようには見えず、出たとこ勝負と腹を括り、姿を現して、挨拶する。


「失礼しました。私がバーバラ冒険者ギルド長エルザに繋ぎを依頼した冒険者のトールと申します。ここまでの失礼とこの後も失礼をするかもしれませんが粗忽者と笑い、流して頂きたいと思います」

「だいたいの事情はエルザから聞いております。こちらが助けて頂いている立場、貴方は堂々とされて良いのですよ?」


 上品にクスクスと笑うと頭にある耳がピコピコと揺れる。尻尾の形も加えて判断するところ、きっと狐の獣人ではないかと思う。

 自分がそんな大層な人物だとは思えない俺は、どう反応したら良いか分からず、はぁっとどっち付かずの返事をするのが精一杯であった。


「では、本題に入りましょう。この国、獣人国で裏工作をして他国との繋がりを断絶させ、戦争、もしくば、不利な取引を飲ませようとしてくるっと考えておられるというところまでは聞かせて頂いてます。それに対抗する為の手も既に打って進行されているとそこで王である私との歩調を合わせる為の口裏合わせと伺ってますがどう言う事でしょう?」


 先程まで少女という印象だったが、雰囲気がガラっと変わり、統治者としての威厳を匂わせてくる。

 俺はここで失敗すると獣人国は勿論、美紅の立ち直るキッカケも失うと自分の中で仕切り直して腰を据えるように話し始める。


「まずは、エコ帝国が獣人国にちょっかいをかけてきてる事実を獣人国民に知らしめそうと考えております」

「その事を知った国民が混乱や恐慌に陥る可能性は考えておられてますか?」


 国も大事だが国民も大事だっという強い思いが俺に伝わる。


「はい、勿論、その可能性も考えてました。その対策として緩和策も取らせて頂いてます」


 伺いましょうっと俺に言ってくる。

 俺は一呼吸置いて話し出す。


「今、首都の巷で騒がれているアニマルガールズという2人組の少女のお話はお聞きになられた事はあるでしょうか?」

「ええ、なんでもウサギとネコの扮装した少女が街での揉め事を解決して廻っていて、大層な人気者と評判ですね。もしかして?」


 俺が何を言おうとしてるか感じとったらしい女王は事実確認を求めてくる。


「だいたいは思っておられる通りだとは思いますが、その2人は私の仲間です。その2人が表舞台に引っ張り出されたエコ帝国の者と戦って勝って、獣人国はエコ帝国の侵略を受けようとしている、だから、他の国と仲良くして頑張りましょうと言ったらどうでしょう?混乱はないとは言いませんが理詰めで女王であるユリネリー様が訴えるより、すんなり耳に入るのではないでしょうか?何も求めない正義の味方の訴えと考えてましたが、どうやらアイドルのようになってますが効果は良くなっていると思います」


 俺は苦笑しつつ、伝える。

 女王は頷きながら、一理あると思ってくれたようで1つ目の山を越えたようである。


「そこまで上手くいったとして、他の国、エルフ国、ドワーフ国との連携が取れるという保障はあるのでしょうか?私達は今まで敵対こそしてきませんでしたが友好も築いてきませんでした。話を聞いて貰うには時間がかかると思うのですが?」


 当然、その疑問もあると分かっていた俺は慌てず、話す。


「その事もちゃんとといいますか、門前払いにあわない程度の手は考えてあります。私の手紙を各国に届けて貰えれば、少なくとも話は聞いて貰えると思います」

「なるほど、救国の使者の手紙を無視するトップ達ではないと信じておられるのですね」


 そう、俺に微笑みかける女王は最初に会った時の少女の顔を垣間見せるがすぐに引っ込める。


「では、引きずり出して解決したらすぐに使者を送るということでよろしいのでしょうか?」

「いえ、それでは遅すぎます。私の手紙は既に手元に用意してありますので、すぐに女王も各国に届ける書簡を用意されて、そうですね、各国の名物を急に食べたくなったと我儘を言った事にして信用の置ける人物に今すぐにでも走らせる必要があります。予定では、1週間後にある場所、これは後で説明しますが、追い詰めて決着を付ける予定です。エルフ国は強行軍したとしてもギリギリかもしれませんが、ドワーフ国とは連絡を取るのには間に合うはずです。私の仲間の訴えを済ませた後に国民に既に国も動いていて、例えばドワーフ国とは既に話が付いてますと言った場合、国民の心情はどうでしょうか?」


 俺の言葉にはっとした表情をする女王は、そこまで考えておられるのですかっと呟くと考え込む。

 俺が言っている事は綺麗事の部分が多い。獣人国とて一枚岩ではないであろう。だが、そこを打ち抜いてでもして貰わないとこの作戦は失敗する。

 祈るような気持ちで女王を見つめた。

 嘆息した女王は首を横に振る。

 駄目だったかと一瞬、唇を噛み締めた俺に気付いたのか微笑んで言ってくる。


「ここまでお膳立てされて、できませんなど言う統治者など要りません。分かりました。獣人国というチップを貴方に全部賭けさせて貰います。信じてますから」


 心の中で、オファっと打ち抜けれたのは俺でしたとばかりのプレッシャーと可愛い笑顔にやられかけている自分を奮い立たせて、動揺を隠して頷く。


「任せてください。俺は美人と胸の大きな子の期待だけは裏切らないと自負しておりますから!」


 テンパった俺は、腹の中で思っている事を吐き出してから、やっちまったっとアワアワする。

 女王はキョトンとした表情を堰を切ったかのようにクスクスと笑いだす。


「トール様のお目に適って何よりです」


 俺が、えっと、そのっと様子が面白いのか一回引っ込めた笑みが漏れだす。


「あのう、トール様は勘弁願えませんか?」


 色んな意味で既にむず痒い俺はせめてそこだけでもっと思ってお願いすると意外な返しを受ける。


「いいですよ?私の事をネリーと呼んで頂けるなら要望に応じましょう。断ったら常に救国の使者様と呼び続ける覚悟があるとご理解して頂きたいと思います」


 澄ました顔をした女王はとんでもないことを言ってくるが更に酷くしますっと言われている以上、俺も譲歩をする事にする。


「人目がないところであれば、そう呼ばせて頂きます。ですからお願いしますね?」

「駄目です。公式の場でもネリーと呼び捨てにする事を求めます」


 にこやかな笑顔でとんでもないことを言いだす女王に俺は目を剥いた。

 これならトール様と呼ばれているほうが良かったかもしれないっと後悔の念が襲ってくる。

 俺は頑張って、ですからね?っと説得をしようとするが、女王は顔を横に向けて知りませんという態度を見せ、言ってくる。


「これは獣人国、女王としての決定です。もうどちらかをお選びください」


 口元が微笑んでいるから嫌がらせではないとは思うがちょっと意地悪だと思う。まあ、美人に我儘言われて聞くのも男の甲斐性だとあの馬鹿も言ってたし、ってか言われてみたいと叫んでたな・・・そう言う意味じゃ、断るのは言語道断ってやつだな。


「負けました。ネリーと呼びますので意地悪はここまででお願いします」

「意地悪ではありません。当然の要求です」


 そう言うと俺のほうへと手を彷徨わせて近づいてくる。その時になってやっと気付く。ネリーが目を瞑っていたのは見えないからという事に。

 俺はそっと近づくと彷徨わせてた手を掴む。

 有難うございますっと微笑まれる。


 少しづつ俺の手から腕へと最終的に顔へと手を持ってくると俺という存在を知ろうとするかのようにコワレモノを触るように触れてくる。


「これがトール様の顔ですか・・・とても優しげなお顔をされておられるのだろうなっと目が見えなくとも分かります」


 こんな距離で微笑まれて赤面しているが見えてないなら気付かれまいと割り切り、トール様は止めて頂けるのでは?っと言って見る。


「私が言ったのは救国の使者様と呼ばないと言っただけですよ?」

「いえ、俺はトール様は止めてくださいと言いましたよ!」


 そうでしたっけ?可愛く惚けられるが本当に困った人だ。

 このまま言い合っても言い含められそうな予感がビンビンしているので、逆らうのを諦める。


 ふと、思った事を聞いてみる。


「そう言えば、どうして俺が入ってきたのが分かったのですか?目が見えなかったので姿を隠しても意味がなかったのは分かりますが?」

「その事ですか?私の視覚がないのを補おうと体がしてるのか、聴覚と嗅覚がとても敏感になってます。なので、風の流れのおかしさと嗅ぎ慣れない匂いがすれば知らない誰か、今回ならトール様以外いないと思ったのです」


 なるほど、俺の姿を隠す方法も今後の課題になりそうだなっと思った。


「だいぶ話は脱線しましたが、すぐにでも書簡を用意して使者を出します。時間との勝負になりますね」


 俺も気持ちを切り替えて、ええっと答え、頷く。

 ネリーは俺から手紙を受け取ると申し訳なさそうに言ってくる。


「すぐに準備をしたいと思いますので人を呼びますので・・・」

「そうですね、後の細かい手筈はエルザさんから伝えて貰えるようにしときますね」


 確かに、ここに俺がいると不味い事になりそうだと思い、分かりましたっといい、窓から出ていこうとして縁に足をかけて前のめりになったところで呼び止められる。


「トール様、私に顔を触れられて、顔を近づけられただけで照れて赤面される貴方はとても魅力的な人ですよ」


 バレてたっと鼻が出る勢いで噴き出した俺はタイミングが悪い、いや、絶妙のタイミングだったらしく、俺は落ちるようにして窓からの脱出をするハメになった。

 感想や誤字がありましたら気楽に感想欄へお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ