126話 後、2手
シルバーウィークも終わろうとしてます。明日からの学校、仕事を思うと行きたくないと冒険者ギルドに初めて来た時の徹のように地面に転がって、ダダをコネたくなる気持ち、痛いほどバイブルも分かります。だって、バイブルも行きたくないもん(笑)
そんな人達の少しでも慰めになればと、今日2つ目の更新をさせて頂きます。シルバーウィークの最後の夜をお楽しみください。
今日も私達はバーバラの街を暗躍する悪(主に酔っ払いと度が過ぎた口説きをする男の駆除)を滅する為に跳び回っていた。
徹に何かをしろっと言われていたが最近、なんだったかよく分からなくなってきてるが美紅が何も言ってこないところを見るとそこまで外れた事をやっている訳ではないと思っている。
今日もアニマルガールズの出動だ!
いつもなら着いて来てるだけっといった風な美紅が私に話しかけ、止めてくる。
「ルナさん、待ってください。目標を発見しました」
この格好をしてる時はルナピョンと呼んでっと言っているのに形式美を理解できない美紅は人前以外では呼んでくれない。
美紅が指差すと言っても肉球グローブのせいで差せてないが手を向ける方向を見ると3人の獣人に仮装した男がいた。
手でハンドサインをしているようで無言で会話している。誰かに見つかる危険を下げる意味なのだろうが、私達のように屋根の上から見てると「私達は怪しい人ですよ」と叫んでいるようなものだ。
私は美紅に頷きかけるとその男達が移動を開始しだしたので気付かれないように後をつける事にした。
後をつけると街の外れのちょっと人通りが少なそうな場所にある井戸の前にくると男達の挙動が極端に怪しくなる。
「どうやら、何か井戸に何かを仕掛けるつもりのようですね」
「ここはルナピョンにお任せなのぴょん」
美紅が今は普通に話してもいいんですよ?っと頭が痛そうに言ってくるが聞こえないフリをして魔法を行使して、もう大丈夫っと美紅に頷いてみせる。
「そこまでです・・・ニャ、おとなしく捕まるニャ!」
美紅はまだ慣れないようで顔を赤くしながら言っているのを見て、楽しめばいいのにっと私は思いつつ、男達を追い詰めようとすると、慌てた男が手に持っていた瓶を井戸の中に投げ入れようとすると跳ね返ってきて自分の顔に勢いよく当たって昏倒した。
「丈夫な瓶だぴょん。今の当たり方でも割れないなんて、どこで売ってる瓶だぴょん?」
私は本当に気になったから聞いただけなのだが、男達は馬鹿にされたと思ったようで、顔を顰め、お互いの顔を見合わせると頷くと私達に背を見せて逃げ出す。
勿論、逃がす気のない私達は追いかける。全力で追いかけようとした私を美紅が止めてくる。
「ルナさん、できるだけ私達が捕まえないようにして、獣人さん達に捕まえさせるようにトオル君が言ってたのを忘れてませんか?」
えっ?そうだっけ?っと思いながらでも忘れてなかったかのように言おうとしたら、美紅は顔を肉球グローブで覆い嘆く。
「ちゃんと覚えておいてくださいね。あんまり遊んでばかりいますとトオル君にルナさんが目的を忘れて遊んでたと言いますよ?」
そんな事を言われたら、きっと再テストをさせられると理解している私は肉球グローブを合わせて、徹がよくやる謝る時とか食事をする時にする格好をする。
「ちゃんとやるから、それだけは勘弁して欲しいの!」
美紅はクスっと笑うとどうしようかなっと私を弄りだす。
後ろから追いかけてきてる私達がそんな呑気な事をやっているとは必死に逃げる男達は夢にも思わないまま、追いかけっこが大通りに出るまで続いた。
大通りに出ると私達は通りに居る獣人達に協力を要請する。
「皆さん!私達が追っている獣人に仮装しているその人達を捕まえてくださいニャ!」
「ルナピョンからもお願いだぴょん!」
市場にいた男達の目がギラリと光ったと思ったら飢えた獣が少ない食糧に跳びかかるように一斉に男達に跳びかかる。
土煙が舞って収まると殴られた跡のある男達の姿が見え、意識はないように見える。私の見立てだと抑え込まれた時点で意識は失っていたように見えるが同情するような相手じゃないと思い、気にしない事にした。
「そ、その、男達は井戸に薬物を放り込もうとしてましたニャ。私達の協力者のトールという少年が冒険者ギルドのギルド長に話を通してるはずですニャ。これを持って、その男達を連れていってくれませんかニャ?」
美紅は恥ずかしげに体を隠すようにしてモジモジしていると男達は悶え、地面に倒れると、仰せの通りにしますっと返事をしてくる。
「向こうの井戸の前にも1人倒れているぴょん。そっちもお願いぴょん」
私は、片手を上げて、片足を刎ね上げてお願いすると俺に任せておいて!っと叫んで数人の男が競うように走っていった。
「ありがとうね、井戸に何をいれようとしたか知らないけどねぇ、飲み水だけじゃなく洗濯もできなくなるとこだったよ」
そういうと私達の口に飴玉を放り込んでいくオバちゃんにお礼を言って私達は市場を後にした。
再び屋根の上の人になった私は貰った飴を幸せな気持ちで舐めていると美紅が話しかけ来る。
「トオル君が言ってたように少しづつ、人が起こす事件が増えてきましたね。若干ですが予定より少し早いような気がしますがトオル君は間に合うでしょうか?」
「大丈夫なの。徹はいつも遅刻ギリギリといった風にやってくる事はあっても必ずやり遂げてきたの。美紅も見たはずなの。私達にこの衣装を渡した時に言った徹のセリフとあの顔を・・・」
何も心配してないっと伝えると再び、飴の幸せ味を堪能する。
「そうですね、トオル君は『お前達の行動を絶対に無駄になんかにさせない。ミランダやシーナさん達がいるクラウドにみんなで笑って帰れる未来を掴み取ってみせる』と言ってられましたね」
うん、っと言いながら飴を口の中で転がしながら思い出す。いつもここぞっと言う時にしか見せない徹の自信に溢れた力強い満面の笑みを。
徹が今までやってきた事を思い出すが、アローラ史上、徹のようにこんなに色んな事を成し遂げた人物はいないと私は断言する。確かに、戦う力だけなら徹より凄い人物は初代、2代目など色々いる。だが、この2人ですら、魔神との話以外で何かを成したという事はない。
そう、それは女神である私も含めて、尊敬したあの人すらも徹のように何かを成しては来ていない。
徹とは何者であるのかという事ですら私にとって興味が尽きない存在である。だから、私は徹の行く先の終着点を見てみたいと心の底から思った。
俺はゴビと合流をして状況報告を聞いていた。
「確かに、削る事はしていいと言ったがちょっと興が乗り過ぎてないか?」
「すまん、少々、怒りに任せてやってしまったと反省している」
予定通りに追い込みながらバーバラ方面にしか逃げれないように上手に狩りをしてくれているようだが、予定より減らし過ぎてるように思ったから突っ込んでいるところだった。
「まだ許容範囲だと思う、間に合うと思うから調整を頼むな?自暴自棄になって特攻されたら計画がご破算になったら次にこっちの予定通りで進ませられる状況が生めるか分からないんだからな?」
すまんっと尻尾を股に挟みながら謝ってくるゴビを見て苦笑をしながら、まだ取り返せる範囲さっと元気づける。
「しかし、それ以外は予定通りに事が進んでいるよな。バーバラ周辺に追い込むまで、どれくらいにする予定なんだ?」
「ああ、疲弊させるつもりがあるから1週間後と考えているが予定がそんなに大きく前後させないと俺が保障する」
自信ありげに言ってくるゴビの言葉を信じて任せる事にした。
俺は地図を広げるとある場所を指差して伝える。
「最終的にあいつらをこの場所に追い込んで欲しいんだ。できるか?」
「断りにくい良い聞き方をするな?そんな聞き方されてできないって言う男がいたら獣人国に住む場所がない」
犬歯を見せて、獰猛に笑うゴビは狩猟民族の誇りにかけてっと伝えてくる。
「で、ここでアレをやるつもりなのか?」
「ああ、その下準備をこれからまたバーバラに戻ってするつもりだ」
そう言う俺を呆れた顔をして見つめるゴビに苦笑する。
「忙しい奴だな。少しは休んでから行ったらどうだ?」
「みんな頑張っている。俺も頑張らないとな」
そう言う俺にお前より頑張っているやついないぞ?と苦笑される。
「いやいや、きっとルナピョンとミクニャンも頑張ってるはずさ」
「そうだな!ミクニャンも頑張っているのに俺達がダレてる訳にはいかん」
急にキリっとさせるゴビを見て俺は爆笑すると釣られてゴビも笑いだす。
「じゃ、次は決戦の地で会おう」
「必ず、成し遂げてみせる」
俺達は拳を打ち合うと別れる。
次は獣人国の王との面会だと気合いを入れ直して、休む間もなくバーバラへと移動を開始した。
強行軍でバーバラにある拠点にしてる空き家にやってくるとテーブルの上に何も書かれてない紙にハンコが押されていた。
『依頼完了』
まったく分かり易い方法で連絡してくれたと俺はニヤける。どうやら、王には話が通っているようだが、真昼間だと王が1人の時間を捜すのが大変だと思われるから夕食が済んだぐらいを狙おうと思う。
今はまだ、昼になったってところだから、だいぶ時間があるから食事を取って今のうちに仮眠を取って体を休めておこう。
気が付くと外は暗くなっており、とっくに出発してる予定の時間になっているようだと気付く。
別に時間を決めてた訳ではないから問題はないのであろうが、自分で思っているより疲れてたようだ。尚更、ここで休めたのは良かったと思い、王に会う為に空き家から出て城を目指して、屋根伝いに走り出した。
既に姿を消している俺は堂々と城の外から空を飛んで、一番上にある部屋の窓が開いているところに侵入する。きっとここが王の部屋だろう。
俺が入り易いように開けて置いてくれたと思い、感謝しつつ奥へと浮きながら進んでいくと綺麗な声が俺に呼び掛けられる。
「お待ちしておりましたよ。トールさん」
声がする方を見ると月明かりに照らされた姿は美しく、白銀の髪は光の反射で煌めいて、窓から入ってくる風により揺れて幻想的な絵がそこにあった。そこまで強調しなくても充分立派ですよっと思える胸は美しくバストアップされている。何故か先程から目を瞑っているのか分からないが、それでも彼女の美しさを損なうモノではなかったが・・・
ギルド長、王以外の人に話をしてるじゃないかっと困っていると自己紹介される。
「あ、私が誰か分からないから返事ができないのですね。遅れましたが、私がこの国の長、女王をさせて頂いている、ユリネリーと言います。初めまして、救国の使者様」
今度は絶句してしまい、俺は固まって途方に暮れた。
感想や誤字がありましたら気楽に感想欄へお願いします。




