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124話 萌える獣人

 ノリノリポーズを取るウサギさんが俺に言ってくる。


「後は、とお・・・じゃなくて、少年にお任せしていいかなぴょん?」

「構わないが、何者なんだ!」


 ウサギさんと黒猫さんはお互い見つめ合い、頷くと自己紹介してくる。


「ウサたんのルナピョン!」

「ニャンコのミクニャン・・・」

「「私達、アニマルガールズ!!」」


 ウサギさんは相変わらず楽しそうだが、黒猫さんはどうやら恥ずかしいようで顔が真っ赤なうえ涙目だ。


「いいぞ~ルナピョン!」

「その恥ずかしがってるとこが可愛いぞ!こっちを見てくれミクニャン!!」


 ガテン系の野太い声が響き渡る。

 えっ?マジで?もう食いついて来てるの?

 余りの食いつきの良さに俺は愕然とする。俺の本来の予定ではもう少しかかる予定であったが、獣人の理屈より感情を優先にする種族と判断してた度合いを読み間違ってたようだが、これは嬉しい誤算だ。


 声援を受けて、ウサギさんは大喜びで手を振っているが黒猫さんは身を更に縮めた。


「そこの男については少年のほうが詳しそうだから、後はお任せぴょん」

「では、さようならニャ」


 そう言うと2人は身を翻して、闇の中へと消えていった。


 一部の獣人が、ルナピョン~ミクニャン~っとまだ叫んでいるが年長の者は早い段階で我に返って、俺に話しかけてきた。


「あの2人と知り合いなのか?」

「いや、今回で2度目の遭遇だが、どうやら良く似た目的で動いているようだと今回の事で分かった気がしている」


 どう言う事だっと聞こうとしている獣人の言葉を遮って俺は言う。


「心配しなくても俺は説明してからちゃんと帰る。まずはあそこで気絶してる奴を縛り上げてからにしようぜ?せっかく捕まえた手がかりだからな」


 獣人の若いヤツがまだ叫んでいるヤツらを年長の者が殴ると、そこで寝てる奴を縛り上げておけと指示すると俺に向き直る。


「で、説明してくれるな?これでも俺は、この街の警備をする側の者だ。適当な説明じゃ納得せんぞ?」


 俺は神妙そうな顔をしているが内心、キタコレっと叫んでいた。


「ああ、俺は見た通り、人だ。エコ帝国の一部の上層部に怪しい動きがある事を掴み、調べているとこの獣人国に行き着いたんだ。そして、首都と反対側の門辺りで何やらコソコソしている奴らがいたのを見つけるとさっきのアニマルガールズだったか?が現れて、そいつらを追い払ったんだ」


 ここ以外にも仕掛けされているのかっと慌てる獣人を俺は止める。


「落ち着け、そこはまだ何もしてないようだ。一応、俺が調べたからな。で、逃げるそいつらを追いかけた俺はそいつらの拠点を見つけた。そこにいたのは予想通りで尚且つ、予想以上のやつらがいたよ。ここから先は俺に付き合ってくれる奴だけにしか話す気はない」

「我らに牙剥く奴らを放置する気などない!協力するから話せっ!」


 頭に来てるらしく本当に牙を見せる獣人。どうやら犬の獣人のようだ。


「できれば、警備や兵士のような存在に力を貸して貰えると助かる。伝手はないか?」

「あるが、お前の言葉だけでは動けん」


 任せろとか言われたら心配になるほどの単細胞で困ったが、怒ってても冷静な部分があるようでホッとする。


「その拠点に案内しながら続きの説明をする。いきなり突っ込んで行きそうな単細胞は人選に外して、2,3人に絞って俺と見に来る奴を見繕ってくれ」


 そう言うと犬の獣人の男は近くに居る奴に誰かを呼びに行かせたようだ。


「今、呼びに行かせた。その間にお互い自己紹介しておこう。まず、俺はこの街の警備隊長のゴビ。見た通りの狼の獣人だ」


 俺は内心、汗を掻きまくりで狼だったんだ!っと思いつつも紹介し返す。


「俺はエコ帝国にあるクラウドからやってきた、トールだ。これでもAランクの冒険者だ」


 ほう、どおりで良い動きをすると思ったっとゴビに納得される。どうやら縛り上げた男に詰め寄って攻撃した時の事を言っているようだ。

 威厳ありげに腕を組んで、頷いているが、このおっさんはさっきまで「ミクニャン!」って叫んでた獣人だと忘れてはいけないと俺は心に刻んだ。


「お前と共に行動してたら、また会えるだろうか・・・」


 俺はあえて、誰ととは聞かなかった。



 呼びに行かせた人物が到着すると、まだ拠点がバレていると気付いていないから、気付かれないように頼むと伝えると移動しつつ、来た人物にゴビに話した内容を簡単に伝える。


「で、予想以上の奴らとは?」

「ああ、只の兵士じゃなかった。そこにいたのは近衛騎士達だったよ」


 驚く獣人達に、表舞台に出てこないタイプの裏の近衛騎士だろうけどなっと付け加える。


「我らと戦争でもしようと言うのか!」

「いや、それは多分違うな。こういう言い方すると腹が立つかもしれないが、エコ帝国は正面から戦っても獣人国と事を構えて、勝つ戦力はある」


 面白くなさそうではあるが、意地を張るのが無理なほど戦力比があるのは分かっているようだ。


「しかし、いくら戦力比があると言っても、それはあくまでエコ帝国と獣人国とだけでやった場合だ。獣人国が例えば、ドワーフと組んだら?エルフと組んだら?両方と組んだらどうだろうか?この勝敗はあっさり引っ繰り返る」


 一緒に着いてきてる者は俺の言っている意味を表面だけしか分からないようで何が言いたいと顔を顰めるが隊長のゴビは理解したようで、違う意味で顔を顰める。


「つまり、今回の港の火事も我ら獣人国にとって敵が誰か分からなくする為に混乱させるのが目的だったと?疑心暗鬼にすることで他国に協力を申し出れなくする為に」


 俺が、ああっと答えると漸く、周りの獣人も理解をする。

 そして、目的地が近い事を伝えて、一旦説明を止める。

 昼間に来た場所を目指し歩くと警戒らしい警戒をしないまま野営している奴らを眺めるとゴビは言ってくる。


「さすがにここからでは本当にエコ帝国の者か分からんぞ?」

「俺は少しの間、姿を消す事ができる。俺と触れている者も多少の時間はできるから、ゴビのおっさんは着いて来てくれ」


 そんな事ができるのか?っと聞かれ、俺は頷いて、注意を伝える。


「声や足音は消せないから慎重に頼む。後、俺が強く手を握り返したら、帰るタイミングと理解して、どんな状況でも帰る事を優先してくれ。ここでばれて逃げ帰られたら、エコ帝国にシラをきられてお終いだからな」


 苦虫を噛み締めたような顔をしたが了承してくれる。

 おっさんの手を掴むと魔法を使う。

 姿が消えた俺達を見た着いてきた獣人が驚いているのを見てゴビも消えていると実感したようだ。


「私にはお前が見えるが周りから見えてないようだな」

「ああ、俺と触れているから見えるだけで離れたら、おっさんだけ姿が現れるぜ?それはともかく時間がないから行こう」


 俺がそういうとおっさんは頷いて、俺に連れられて、グリードの天幕へと案内される。近くにいくと叫んでいる声が聞こえてくる。グリードの声だ。


 中に入ると部下に当たり散らしているグリードが居た。


「何故、火の手が上がらない!」

「もしかすると失敗したのかもしれません」


 苛立ちから親指の爪を噛むグリードが目を忙しく動かして何やら考えているようだ。


「こうなったらフレッチュで工作するのは難しい。こうなったら直接、首都でテロ騒ぎを起こして煽る。気付かれないように廻り込むようにして首都を目指すぞ」


 俺はそろそろ頃合いと判断して、おっさんの手を握り返すと頷かれる。

 速やかに俺達はこの場を離れた。


「で、どうする?人を集めて殲滅するか?」


 牙を剥いて言ってくるゴビに俺は首を横に振る。


「ここでこいつ等を倒したところで国同士のやり取りではシラを切られたら攻めきれないだろう。エコ帝国が言い逃れしづらい状況を作ったほうが今後、立ち回りしやすくなるから・・・」


 俺はその後にする事を伝えると獣人達はニヤリと笑い、俺の意見を好意的に受け止めてくれたようだ。


「そういう狩りは我らの専門だ。あいつらには身を持って知って貰うとしよう」


 そして、俺はどれくらい戦力を集められるかだとか、協力してくれそうな人などの話を詰める。


「俺は一旦、首都にある冒険者ギルドに1回行ってくる。その間、あいつ等の動向を追う者と協力者を集める者とで2手に分かれてくれないか?」

「冒険者ギルドに何をしに行くというんだ?」


 そう聞いてくるゴビに俺はニヤリと笑うと伝える。


「俺達がやっているのは人の小競り合いだが、どうせなら国同士のヤツにも口裏は合わせておいたほうが面白くないか?」


 ゴビはやはり普通の獣人より頭が廻るようで同じようにニヤリと笑い返す。


「「決戦の地は首都バーバラでだ」」


 ゴビはこの場に2人残して、大きな動きがあった場合1人を走らせるという事を伝えるともう1人を連れて街へと戻っていく。その途中で俺は単独行動に戻り、首都バーバラを目指して移動を開始した。




 あのボヤ騒ぎから3日後、私達は首都バーバラにやってきていた。


「昼間から酔っ払ってるだけでも悪い子なのに暴れるなんて問答無用なのぴょん!」


 ウサギ装束のルナさんはノリノリで肉球パンチで地面に叩きつけている。

 私は、その酔っ払いの仲間らしき人を最小限の動きでペシっと叩きつけて昏倒させながら、私達を呼ぶ集団があるのに気付き、目を向ける。

 その集団は2つあって、1つ港で会った力仕事をしてそうな獣人達でその反対側では見知らぬ獣人に囲まれたテリアちゃんが騒いでいた。


「誰なんだ、アレは?」

「お前、知らないのか?最近、獣人国で悪さする奴らをノシていくっていう可愛いアニマルガールズを?ウサギのほうがルナピョンで黒猫さんはミクニャンって言うんだぜ?」


 テリアちゃんの周辺にいる獣人が説明している。そして、向こうを見てみろよっと港で会った獣人達を指を差している。


「いいぞっ!ルナピョン!」

「ラブリ~ミクニャン!」

「ルナピョン、甘いモノ買ってきました!」

「愛してる!ミクニャン、結婚して!!」


 嬉しそうに甘いモノを貰いに行っているルナさんを横目に私はこっそりと溜息を吐いた。

 あの時に言っていたトオル君の言葉を思い出す。



「おそらく、理詰めで獣人達を説得しようとしても受け入れて貰えないと思うんだ」


 私はどうしてだと思い聞き返す。真剣に話をすればきっと信じて貰えるのではないかと思ったからである。

 トオル君は、その方法も可能と言えば可能なんだが今回は不可能だなっと言って来て続きを言ってくれる。


「今回の事でネックになっているのは大きく2つだ。1つは圧倒的に時間が足りない。美紅のやり方だとどうしても時間がかかる上、間に合わないだろうな。2つ目に獣人達は説得しようとしてもそれを正しいかどうかの判断基準、情報が欠落している。ならどうしたらいいかと言えば、感情に訴える」


 何を馬鹿な事をっと思われる方も多いとは思うが、これは法廷などでのやり取りでも法律などを無視してでも覆す方法として使われる事がある。だから、判例を覆す判決などが出たりするのだから。


「そこで正義の味方が訴えたらどうなるだろうか?きっと理屈を超えた説得力が生まれると俺は思う。更に受け入れやすくする為に俺は考えた。物々しい格好した相手?それはない。コルシアンさんが人の心の底に眠る本能とはと、ミランダはこれは最強よっと言ってたモノを組み合わせたこれが1番だと俺は判断した」


 トオル君が差し出したモノを見た私の顔は引き攣った。

 ルナさんは興味ありげに覗きこんでいる。


「出番だ、ルナ、美紅」


 トオル君はとっても良い笑顔をして差し出してきたモノを受け取らされると私は悲鳴を上げた。



 私達に歓声を上げてくれる人がドンドン増える中、ルナさんは飛び跳ねて手を振って喜んでいる。

 私は小さく手を振っているだけなのに歓声が更にヒートアップする。


 トオル君、本当にこれでいいんですか?っと私は疑問の声を伝えたい相手がいない事に気付きつつも思わずにはいられなかった。

 ちょっと予想と違い過ぎると思うんですけどっと私は心の内で涙を流した。

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