123話 あれは誰だ!?
ふぅ、長かったです。前は気付かれましたが、おそらく誰にも気付かれていないフラグの発動の時を迎えました。
春奈のリベンジは完了ですよっ!(笑)
それから、テリアは俺に隠してた事を吐き出したせいか、その後にルナと言い合いをして仲直りして楽しそうにしてた事が良かったのかは分からないが、いつも通りの雰囲気を醸し出し、今も後ろで楽しそうに3人で女子トークを繰り広げているようだ。
つくづく思うが、よくそんなに話す事があるよなって離れた御者台で寂しく1人でいて思う。ボッチとか思わないで頂きたい。あの中に常にいたら何を話したらいいか分からなくなると思っているから、ちっとも寂しくなんかないんだからねっ?
後一つだけ言わせて頂きたい。本当の事だからといってなんでも耐えれるという訳ではない事を気付き、優しさをお願いします。
クラウドを出てから4日目の夜、野営の準備が済んで、食事を取りながら俺達は明日の事を話し合っていた。
俺はテリアの話を聞いた事により、クラウドを出る時に内心考えてた手は下策だなっと思い、方向転換をしていた。ずっと馬車での移動中の合間を縫って色々考えた結果などを口に出して、みんなに話して相談しようということである。
「実は、俺としては電光石火作戦でグリードの居場所を見つけて、問答無用に微塵切りにしてやろうと当初考えていたが、それでは色々、問題がある事に気付き、この手段は使わないと決めたんだ」
「うんっ、正直な話、そのグリードを止めたからといって工作された手段が止まる保障はないとトールと話をした結果になりましたっ」
俺とテリアは事前に話し合った内容通りだと頷き合う。
「じゃ、どうやったらいいと思うの?」
俺達の言っている意味を理解できないのかルナが聞いてくる。
俺はルナの疑問に答える事が説明の続きになるから丁度いいとばかりに話し出す。
「ああ、まず、その事前工作が何かって事を調べるのを前提なんだが、アイツ、グリードを裏舞台から表舞台に引きづり出す。そして、グリードが帝国の近衛騎士である事をばらし、帝国の王、始めとしてトップの周辺の者達の暴走が起きていると獣人国民に知らしめていく必要があると俺は思っている」
俺がそう説明すると美紅が疑問を覚えたようで聞いてくる。
「そんな事をすれば、獣人国とエコ帝国との戦争に発展しませんか?」
美紅の懸念はもっともだ。俺もそこには注目はした。
それに対する、対策も完全とは言えないが良い手がある。
「それについては俺なりのアイディアがあるから任せてくれないか?」
「分かりました。ですが、その危険を冒す価値はあるのでしょうか?」
ある、少なくとも俺はとても大きな意味があると思っていた。
俺は自信があると伝わるように力強い笑顔を向けて頷く。
「今回の事が中途半端、上手くいって完全に事実を伏せられたとしても、それでは何も改善されないと思っているんだ。まず、伏せられたとして、帝国からすれば、ばれてないから次の手が打てて、俺達が張り付いていられるなら阻止できるかもしれないが、俺達もずっと傍にいる訳にもいかない」
俺の説明に頷くルナと美紅だが、多分、ルナはそろそろ理解が追い付かなくなってると俺はルナの目の泳ぎ方から推測した。
「そして、中途半端に漏れた場合がもっとも性質が悪い。獣人国民からすれば、帝国がという状況証拠を手に入れたとしても、もしかしたら、エルフが?ドワーフが?と疑心暗鬼に陥るのがもっともヤバい。テリアに聞いたところ、獣人国は閉鎖的なせいか他国の情報が乏しい。その中で噂の伝染は口頭となる。不安が尾ひれを付けていくとどんなモンスターになるか分からないからな」
「確かに完全に伏せるのは無理ですから、おそらく中途半端になるという展開は分かります。しかし、情報を正しく広げようとする手はあるのですか・・・ああ、それがトオル君のアイディアってことになるんですね」
ああ、と頷くと3人を見渡して締めにかかる。
「とは言っても、まずは情報だ。グリードの居場所は勿論、目的。後は俺達側の事前準備。特にテリア、お前にはフレッチュに着いたらお願いしたい事があるんだがいいか?」
「勿論っ!で、何かなっ」
俺はテリアに頼み事を伝えた。
「分かったっ。着いたらすぐに行動するねっ」
俺は美紅を力強く見つめ、口の端を上げて言う。
「絶対にグリードを逃げ場のない状態でプライドを砕け散る方法で美紅と対決させてやるからな!」
「はい!私もその決着を付けれるなら、なんでもする覚悟です」
俺は、その覚悟を待っていたと伝えると若干不安そうな顔をする美紅に悪戯小僧のように笑いかける。
ルナは、既に話に着いて行けてないのは確定したようなので、後でゆっくりと説明し直すとして、2人に俺のアイディアを伝える事にする。
説明を終えると美紅は悲鳴を上げるが、ルナはどこか嬉しそうにニコニコするという対極の反応を見せる。
「特に美紅は、アレがまだ中途半端になってたから丁度いいだろっ?」
なんとか抵抗をしようとしてた美紅だが、今の言葉がトドメになったようで項垂れる。
俺がしたい事の意味も理解できなくはないと思ってしまったのが敗北の始まりだったのだよっと俺は、ほくそ笑んだ。
先に休ませて貰いますと言うと、テントへとふらつく足を引きづっていく美紅の背中を敬礼して見送った。
「とりあえず、明日からが本番だ。ルナ、明日、移動中にどの程度理解してるかテストするからそのつもりで。5つ間違ったらルナもアレ途中だっただろ?」
俺が主語を伏せたのにも関わらず、何の事か理解したルナは蒼白になる。
「じゃ、俺も休むわ」
そう言ってテントに向かう背中からルナが作戦の概要をテリアから聞き直そうと必死な声が聞えてきて、俺はクスっと笑うとテントの中に入って背中を見せてこっちを見ない美紅にオヤスミっと声をかけ、眠りについた。
次の日、馬車で移動中に俺からの質問に必死に答えるルナがいた。若干、目を真っ赤にさせているルナ、今、決死の覚悟を迸らせていた。
「じゃ、最後の質問。グリードとの決着方法は?」
既に4つ間違っているルナは後がなかった。必死の形相から捻り出した答えは・・・
「逃げれない状態にして、ボコボコ!」
間違いにしても攻められる事はないだろうが、返事を返さない俺を見つめるルナの悲壮感が半端ない。
何故、イジメてるような構図になっているのだろうか・・・
俺は溜息を吐いて、答える。
「はい、合格」
「やったのーーーー」
ルナはそういうと荷台の上に大の字になると寝息をたてていた。ルナ、恐ろしい子!
とはいえ、俺も甘いなっと思いつつ、頭を掻く。
そして、昼まで特に何事もなく過ぎるが美紅はずっと空を見上げながら、溜息を吐いていたのが印象に強く残り、凄く悪い事をした気分にされたが心を鬼にして見なかった事にした。
昼に携帯食で軽く済ませるとミランダの調べで本拠地とされる場所にやってくると本当にいて、あのマッチョは本当に何者なのだろうと思う。
ミランダにとって近衛騎士隊長など通過点でしかないような事を言ってのける存在の謎が更に深まった。
それはさておき、結構、堂々と野営しているが何故ばれないのであろうと思っているとテリアが説明してくれる。
「他の国の事をよく知らないから、余程の事がないと他国方面に近づこうとしないのっ」
近くで充分な食糧は取れるし、土地も肥えているから、無駄に取ろうという考えもないと伝えてくる。
なるほどっと思った俺はテリアに頼んでた事をする為に行動をお願いすると頷くと来た道を1人で戻っていった。
「トオル君、もう、ここで壊滅にしてしまって、すっきりさせませんか?」
美紅は据わった目で野営している帝国の部隊を見つめながら言ってくるが俺は嘆息して言う。
「それをしてもイタチゴッコだって説明しただろ?俺のアイディアを使うのが嫌なだけで、効果はあるって分かってるんだろ?」
美紅がさめざめと泣いている姿を見て、ヤレヤレと肩を竦める。
ルナは美紅の頭を撫でながら、大丈夫、楽しんだらいいのっと言うが、美紅は私には無理ですっと膝を抱える。
「とりあえず、潜入して情報を集めてくるから、見つからないように隠れててくれ」
普段の2人なら心配する必要もないのだが、美紅の精神状態がかなり違う意味で悪くなっているので声をかけて俺は山賊の時のように魔法を唱えて姿を消すと野営地に近づき、あの中央の無駄に豪華なテントに近づいて行く。
入口に近づくとご丁寧に入り口は開いてあった為、簡単に侵入する事に成功する。
中に入ると偉そうに座って報告を聞いているグリードがいた。
「ご指示がありました、港周辺を重点的に油を仕込む作業は予定より早く済みました。後は火事が起きた時に首都方面に向かうように仕向ける為に反対側の門の仕込みを開始しようという段階まで進んでおります」
淡々と説明する部下の言葉に苛立つグリードはテーブルを叩いて立ち上がると怒鳴る。
「遅すぎる。事態は急展開を迎えているのにそれに合わせて動けなくて何の意味がある!」
なんて無茶を言っているのだろうか?自分が美紅とコンタクトを取ろうとしてなければ、発覚が早くなる事はなかったであろうにと溜息を吐きたいが我慢する。
「それでは、今ある状況で港を火の海にして、逃げる方向を選択させる事になりますが、グリード様の仰っていた、どこかから攻められたと噂を流させる事もできるかと思います。人数が少なくなる為、拡散が弱くなるとは思いますが」
使えない屑めと罵ると仕方がないからそれでいけと命令する。
「で、どこから火を点けると広がるようにしているんだ?」
「港にある3番倉庫から火が廻るようにしております。では、火を点けて目撃されると殉死させる者を送りたいと思いますが、すぐに行動させますか?」
少し考えたグリードはニヤリと笑うと組んだ指の上に顎を乗せると言ってくる。
「夜になってからでいい。暗くなってからほうが混乱するだろうし、燃え上がる炎もよく見えるからな、演出は必要だ」
俺はそこまで聞くとテントを後にする。
色々、突っ込みたい事は沢山あったが、1つだけ同感だと思った事がある。
「俺も演出は大事だと思うぜ」
ルナ達の居る場所へと向かい歩いている時に小さな声で呟いた。
日は沈み、夜になると人通りが少ない港の傍にある倉庫街へと続く道を松明を片手に歩く、冒険者風の男が1人いた。
良く見れば、装備はボロそうなのに着てる服が上等過ぎて違和感があるが本人はうまく偽装したつもりのようで酒に酔っているフリをして3番倉庫へと近づいて行く。
そして、3番倉庫の扉を開けると、ニヤリとしたと思ったら松明を掲げた時、声をかけられる。
「おい、そこで何をしている?」
俺は堂々と倉庫の奥から歩いてやってくる。
まさか誰かいるとは思ってなかったらしく、俺を見て上げた手をそのままに固まっていた。
「もう一回聞くぞ?ここで何をしている?松明を掲げて」
俺が聞き返すとその体勢のまま後ずさりする男に合わせて前に出るのに合わせたかのように隣の4番倉庫から爆発音が聞こえた。
すると、その騒ぎに気付いた港関係者と思われる、ガテン系の獣人の男達が十数人駆け付けると俺達を見ると中の1人が叫ぶ。
「今の爆発はお前らの仕業か!」
「今、俺の目の前で松明を掲げているヤツの仕業だ。俺はそれを止めに来た」
目の前の男は、えっ?知らないぞっと呟いているが、知った事じゃない。
「もう分かってるんだよ!お前がこの倉庫に仕掛けた油で火を放って、この港町を火の海に沈めようとしている事はな」
俺が詰め寄るとやはりバレてたのかと悟ると足掻くように松明を倉庫の中へと投げ込む。
「しまった!でも、お前は逃がさない」
俺は叫ぶと逃げるより命を断つ恐れのほうが高い為、鳩尾を打ち抜いて気絶させる。
男を気絶させる事には成功するが、投げ込まれた松明は見事に油に引火して激しい炎をあげる。
「おい!水を持ってこい!消すぞっ!!」
「馬鹿野郎!!油で点いてる火に水で消そうとしたら被害が拡大する。3番倉庫周辺の燃えるモノを急いで運んでどかすんだっ!」
ガテン系の男達が水を使おうとしたのを見て俺は叫ぶと、そ、そうなのか?と顔を見合わせる奴らに、いいからすぐ動けっと怒鳴ると慌てて走り出す。
そんな時である俺達の背後の倉庫の上に人影が2つ現れる。
「大丈夫ぴょん!そんな火事なんて私にかかれば簡単なのびょん」
謎の声が聞こえるとエアーバブルっという掛け声が響くと火が付いた油の周辺に薄い膜のようなものができるのが分かる。
すると、どんどん、火の勢いは衰えていき、終いには鎮火する。
ガテン系の獣人が倉庫の上を指を刺し、あそこだっ!と叫ぶと状況について行けなかった他の獣人も見上げる。
ウサギ耳を着けた青髪のロングヘアーの白の水着のワンピースのようなものを着てお尻には丸い尻尾を装着し、手には肉球グローブを着けて、ノリノリでポーズを決めているバニーさんがいた。
その隣で身を縮みこませている猫耳を黒髪に着けた黒のモフモフさせているビキニスタイルの尻尾付きの黒猫さんがいた。勿論、肉球グローブ着用である。
「あれは誰なんだっ!」
そう叫んで固まる者、少数と近くに行ってよく見ようとする素直なガテン系の獣人が多数を俺は眺めて、さすが、ガテン系、そっち方面には素直だなっと俺は感心して頷く。
しかし、本当にアレは誰なんだ?(棒)
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