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122話 テリアの告白、そして、跳べルナ!

 ふぅ・・・なんとか間に合いました。では、出かけてきます。

 皆さんも良いシルバーウィークを!

 バイブルも明日から楽しみます(^O^)/

 俺は今、御者をテリアに交代して貰ってお昼寝をしようと寝っ転がって、御者をしているテリアの背中を見つめながら出発してからの事を思い出していた。



 初めて行く場所という経験は既に何度かしているが、エルフ国やドワーフ国と違い、獣人国の事はクラウドで聞く事はまずなかったというか、獣人の人を何度か見た程度でまったくどんな国で首都がどこで、今、行こうフレッチュがどこにあるかという話ですら、まったく聞いた事がなかったぐらいだ。


 その事で頭を悩ましていると美紅が俺の様子を見て溜息混じりに地図を開けると説明をしてくれる。


「フレッチュまでは5日ぐらいかかるそうです」


 フレッチュまでの経路から休憩ポイントの目算までしっかり調べていた美紅を見て俺は呟く。


「さすが、美紅だな。ちゃんと事前にそういう事を調べているんだ」

「ええ、誰かが寝ている間にしっかりと地図と睨めっこしながらミランダさんに色々、教えて頂いてましたから」


 まだ、お怒りの美紅のご機嫌を取る為に俺は美紅の料理の手伝いを甲斐甲斐しく頑張り、その日の夕食後には許して貰った。


 なんか、父さんが母さんのご機嫌取りをしてる時と同じ行動してるような気がする。

 俺は、ああはなるまいっと心に決めていたはずなのに・・・


 そんな俺を眺めていたルナは嘆息してジト目になった目で見つめて言ってくる。


「徹は馬鹿なの。言ったら駄目な事を言ったりするから」


 そう言ってくるルナを見て、お前だったら、アメをあげたら許してくれそうだから助かったんだけどなっ!って言ってやりたかったが、やっと機嫌が戻った美紅が元に戻ったらっという恐怖から飲み込んだ。


 いつもならルナと一緒に俺を馬鹿にしたり呆れたりするテリアがまったく話に介入してこない。何も、今回だけに関わらず、旅を始めてから、話しかけられても生返事が増えている。

 そして、気付くと俺を見ているテリアの姿をよく見るようになった。

 出発の時、ミランダがテリアの事を言ってたがこの事なのだろうか?

 何があったのであろうかと悩むが少し落ち着くと解答用紙だけのテストで答えを求めるようなものだと気付き、テリアが話してくれるか、事態が動くのを待つしかないと腰を落ち着ける事にした。



 気付くと俺は考え事したまま、寝たようでルナに揺すられて起きた。起きると空は茜色に染まり、日が沈むのに1時間もかかりそうにない時間のようで起こしたルナにテントを張るから手伝うのっと引っ張られる。


 夕食はザウスのおっさんに振る舞われた味噌風味のイノちゃんの肉入りの鍋であった。

 ルナとテントを張っている時に遭遇するとルナの一撃により仕留められ、夕飯の食材に早変わりである。

 出会った当初の時のイノちゃん相手に何故しなかったのかと魔法の時にも思ったが実は聞き出してある。ずっとあそこにいて、戦うっという発想がなく、戦ったら自分はそれなりに強いっという事が頭になかったそうである。

 しかも、その事に気付いたのが俺と初めて行った突撃ウサギを狩る依頼の時にゴブリンに囲まれ、あれ?私、そういえば戦えたんだって気付いたそうだ。

 まったく呑気な女神がいたもんだっと今なら笑えるがイノちゃんに追いかけられてた時の俺が知ったら叫んでただろうなっと苦笑する。


 美紅の料理の腕がどんどん上がっている事を褒め、感謝すると凄く良い笑顔を向けてくれる。

 おや?一生懸命、料理を手伝った時よりこっちのほうが物凄く喜んでいるように見えて、俺は選択肢を間違ったのであろうかと一瞬悩んだが上手くいった事だし、いいかと割切る事にした。


 食事が済み、美紅の洗い物を手伝う為にルナが着いて行くのを見た俺は当然のように止めた。


「ルナ、洗い物は美紅に任せたほうが良くないか?」

「大丈夫なの!私はやればできる子なの。昔とは違うのですよ!」


 ザウスのおっさんのとこでのやり取りとザックさんのとこの事は昔と表現するには近過ぎると思うんだが、俺の言葉は聞かないっとばかりに美紅の背中を押して川のあるほうへと歩いていった。

 この場にミランダが居れば、美紅ちゃんだけ褒められて羨ましいのねっと笑顔で呟いたであろう。


 昨日から沈黙を保っていたテリアが2人になった事で腹が決まったのか、俺に話しかけてきた。


「ねぇ、トールっ。聞いて貰いたい事があるんだけどいいかなっ?」


 真剣、いや、やや思いつめた感じのするテリアが俺に話しかけてくる。

 俺は聞く体勢になる為にテリアに体を向けて腰を落ち着けると、ああっと伝えて頷く。


「私がトールと旅をする理由を覚えているっ?」

「ああ、何を見極めるのかは分からないが俺がその求める人なら頼みたい事があるからだったと思う」


 そういう俺の言葉にテリアは頷く。


「本当はねっ?見極めはとっくに付いてたのっ。トールじゃなきゃおかしいって思ってたからっ。本来ならその時に話をして時を待つのが私の役目だったんだけどね・・・一緒にいられる今が楽しすぎて、今を大事にしたくて黙ってたっ」


 ごめんね、トールの判断する時間と覚悟を決める時間を奪ってたっ、と泣くのを我慢しているテリアの頭に手を置くと俯き加減になってた顔を勢いよく上げる。目尻に溜まってた涙が弾けて飛ぶのを確認した俺は空いてた右手で涙を拭ってやると頭に置いた左手で撫でながら笑みを大きくして伝える。


「大丈夫だ。覚悟ならとっくの前に決めてある。テリアの頼みを全力で聞いてやるってな。2日前に美紅に言ったセリフは別に美紅だけに限らず、ルナもそうだし、俺はテリアもそうだと思ってるぞ?」


 俺達は仲間であり、家族なんだって言ってたやつっ?っと聞き返された俺は赤面してしまったのを自覚した。


「頼むからそれは胸の内で考えるだけにしてくれ。聞き返されたり、思い出すとかなり恥ずかしいんだ」

「女はね、そういう言葉はしっかり毎回言われたいのっ!」


 俺は照れから、何が女だ、ガキンチョの癖にっとツッパルとテリアが1コしか年違わないじゃないっ!と叫んで、睨みあいになるがすぐにお互い笑ってしまい終了する。


「気にしてた私が馬鹿みたいっ」


 俺はその言葉に肩を竦めて、じゃ、遠慮なく続きを言ってくれと伝えるとテリアは話始めた。


「まずは私の素性からっ、私は人ではなく実は獣人なのっ」


 俺は嘘っと言って、立ち上がると立っているテリアの周りをグルグル廻るとおもむろに後ろに行った時、テリアの短パンを引っ張って中を覗き込む。

 すると、電光石火という表現が正しい動きで俺は蹴り飛ばされる。

 蹴られた頬を押さえ、シナを作って仁王立ちするテリアを見上げた。


「なんばっしよっと!」

「なんばっしよっと、じゃないわよっ!何を堂々とお尻を見ようとしているのよっ!!」


 顔を真っ赤にしたテリアに詰め寄られる。


「いや~、獣人っていうから尻尾を隠してるのかなって思って?」

「まったくトールは馬鹿っ?尻尾があってもお尻を見るのは駄目だと分からないのっ?」


 そういや、そうだなっと頷く俺を見たテリアは項垂れる。

 落ち着いて考えると俺はテリアの真っ裸を見ていた事を思い出すがなかったなと納得した。

 きっと、ルナとテリアが不眠ブレイカーが備わっているように俺にはシリアスブレイカーがあるんだろう。何?なんかちょっとカッコいいかも?

 きっと良い意味で肩の力が抜けたテリアは俺の行動を忘れたかのようにして話を続けてきた。


「とりあえず、私は今、一族に伝わる、1度だけ人の姿になれる秘薬で耳と尻尾が無くなってるのっ」


 俺はなんでそんな面倒な手順を踏んでるんだ?っと聞くとテリアが困った顔をして言ってくる。


「クラウドでも獣人はいないこともなかったとは思うけど、獣人国の事はほとんど知らないと思う。逆もまた然りで私達も人、エルフ、ドワーフの事をよく知らなかったのよっ。特に人の事になると迷信が出回るレベルで知らないのが普通の環境にいたから危険を避ける意味でも人の中に紛れるのが1つ」


 1つ?まだあるのかっと聞く俺にテリアは頷きつつ、2つ目の理由のほうが意味は大きいのっと伝えてくる。


「獣人国が困ってますっと伝えて歩くような事をする訳にはいかなかったという事と仕掛けてきてる相手に気付いているという事を知られたくなかったからなの」


 このタイミングで俺に話しかけてきたのは・・・


「その仕掛けている相手がグリードってことになるのか?」

「多分、予言の者と一緒に居ると知らせが来ると言ってたし、ミランダの話でも獣人国に工作しているという話からして間違いないと思うっ」


 予言?っと俺は首を傾げるとそういえば言ってなかったっ、とテリアは説明してくれる。


「私達の部族は予言が現れる場所に入れる唯一の少数部族でねっ?私達の部族にある泉に光の文字が浮かび上がる時があって、その内容が予言」


 俺はその言葉を聞いて、ノルンの言葉を思い出していた。


「それを光の文字が浮かぶ泉に浸しなさい。そうすればエクレシアンへの道が開かれます。その先にあるものを見てきなさい」


 そして、捜さなくても時がくれば出会うと言ってた意味を理解した。

 俺が急に考え込んだのを見たテリアは慌てたよう言ってくる。


「お願い、トールっ。予言は外れた事がないのっ。私達の部族を救えるのはトールだけっ」


 慌てるテリアに驚いた俺は苦笑いをしつつ、何を考えてたかを伝えるとホッとされるついでに納得される。


「なるほど、もう、どう考えてもトール以外に予言の人物はいなさそうねっ」


 俺には1つ疑問というか気になる事があったので聞く事にした。


「前に俺がエルフ国の救国の使者だからとか言ってたけど、あれが予言に示されてたのか?」


 俺の言葉を聞いて、ああ、そんな事言ってたわねっ、と言いつつ、首を横に振って違うと言ってくる。予言ではこうだったと話始めた。


「ユグドラシルを魅了し祝福を得て、他の女神達に見初めさせ、好意を一心に受け、特にアローラに現存する最後の女神に・・・」

「危ないのっ!!!」


 突然、俺の後ろから気配もなく飛び込んできたルナがテリア目掛けてドロップキックをかます。

 テリアがきゃぁぁーーーっと叫んで吹っ飛ばされているが膝を使って飛ばされているだけだから蹴りによるダメージはほとんどないだろうがルナはいきなり何をするんだっと俺は詰め寄る。


「大丈夫なの、危険が危ないは去ったの!!」


 とても大丈夫には見えない。言葉も支離滅裂だが、目の泳ぎ方と汗の掻き方がおかしい。

 そんな俺の手を掴む者がいた。


「トオル君、それ以上は触れないであげてください。テリアちゃんも怪我も何もありませんし」


 美紅が指差す方向から頭に着いた葉っぱを払いながらルナにノシノシと近づいて行くテリアを見て、平気そうだと分かると溜息と肩を地面に向けて落とす。

 ルナに詰め寄って文句を言うテリアを見ていつものテリアに戻ったようだからまあいいかと割切り、腰を落ち着けて、足に肘を立てて掌に顎を乗せると2人のやり取りを美紅と眺めて、穏やかな時間を過ごした。

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