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112話 一度言ってみたかった事

 俺は意気揚々とギルドを出ようとしたところで受付にいるシーナさんの下へと戻る。

 いきなり戻ってきた俺に驚いた様子のシーナさんとダンさんが俺をみて、どうかしましたか?と聞いてくる。


「元々きた最初の理由を済ませるの忘れてて・・・」


 美紅も隣でペコペコ謝って馬の代金を忘れてましたっと告げる。

 シーナさんにクスっと笑われて、いつでも良かったのにっと言われるが俺のケジメ的に問題ありなのでっと言うと後ろで、テリアが、じゃぁ、もう面子丸潰れねっ!っと笑われて立つ瀬がなくなった俺を救う意味だと信じたいシーナさんが割り込むように代金を伝えてくれる。

 俺は言われるままに代金を払う。


「はい、頂きました。では、依頼をお願いしますね」


 シーナさんは微笑んで俺達を送り出してくれる。

 俺が戻ってきた時から終始笑顔だったダンさんが俺の肩を叩きながら言ってくる。


「トール、お前らには緊張感は皆無か?まあ、それがお前達の持ち味なのかもしれないがな」


 じゃ、依頼は頼んだぜっと背中を叩いてくる。


 俺達は居た堪れなくなって逃げるように冒険ギルドから飛び出した。



 冒険ギルドを出て、西門へと向かっていると俺はルナとテリアにお小言を言われていた。


「徹が忘れて、飛び出そうとするから出戻って恥ずかしい思いする羽目になったの」


 あの流れで出戻るとか有り得ないのっとお冠なルナは屋台に視線をロックオンさせて俺の袖を掴んで引っ張っていた。


「本当っ!有り得ないからねっ?ところでルナが見つめているクレープって美味しいの?」


 ルナが瞳をキラキラさせて見ている様を見て何やら興味が出てきてるらしいテリアが上目遣いでお願いっ?って感じで見ているあたり、きっと匂いから美味しいモノということは見抜いていると思われる。

 俺は溜息を吐いて、詫びという意味もない訳ではないがちょっと冷静になって分かる範囲での打ち合わせも兼ねてクレープでも食べながら話しあいの場を持つ事にした。

 美紅に3人分のクレープ代を渡すとトオル君のは?っと聞かれて、俺はホットドックをっと親指で差すと納得したようで3人で楽しそうに買いに行ったのを見つめた俺はホットドックを買うついでに4人分の飲み物も買って行った。


 美味しそうにクレープを齧りだした3人を見つめつつ俺はみんなの前にツンデレさんがくれた地図を広げる。


「俺は確かにツンデレさんを信じてここへ向かおうと思った事は認めるが実はそれだけじゃないんだ」


 俺は早速とばかりに自分なりの根拠があったことから話し始める。きっとここが根拠がはっきりしないと話が進みづらいと思ったからである。


「ルナ、美紅。この印があるあたりって何か心当たりないか?」


 美紅は小さな顎に手を当てて考えているようだが、まだ思い付いてないようだがルナが反応を示す。


「ふもも、ふほももっふ、ふもーー」

「口に入ってるモノを飲み込んでから喋れ!」


 俺はルナの頭をチョップすると涙目になりながらもモグモグと噛むとやっと飲み込んだ。


「私の残りのクレープをあげるからホットドック半分頂戴?」


 俺は無言でチョップをする為に振り上げると防御体勢に入る。


「待って、ちゃんと心当たりもあるの!」


 まったくっと言いつつも半分ホットドックをちぎる俺は甘いなっと思いつつ、ルナに渡すと食べかけのクレープを俺に寄こしてくる。


「ありがとうなの。この○が付いてるあたりって徹が剣を手に入れた時に修行したあたりじゃないの?」


 ルナがそういうと美紅も思い出したようで、そういえばっと言っている。

 得意そうな顔したルナは俺から貰ったホットドックを美味しそうに齧り出す。


「そうなんだ。テリアは分からないだろうけど、この辺りって自然の要塞って感じで隠れるのも勿論、防衛、逃亡もしたい放題って感じの場所なんだ。だから、ツンデレさんの情報をあっさり信じたワケがこういった理由もあったんだ」


 テリアはへぇーと言うと聞いてくる。


「アンタも和也と会う前にそういった事してたんだっ?」

「ああ、その時の事を思い出せば、むかつくが和也の修業のほうが合理的で何故してるか分かる修行で、その時の修業は目の前の2人にされたんだが、修行というより苦行で死と隣り合わせの精神修行だったな、良く言えばではあるが・・・」


 テリアが2人に目を向けると一斉に視線を反らされる。きっと勢いでやって今は反省しているっという感じなのであろう。

 いつかこの苦行を語りたいモノである・・・


「それはともかく、ここに山賊の根城にするには最適だろうと思われるんだ。しかもだ、俺達は結構、この辺りを走り回っているから意外と地理に明るい」

「いくつか心当たりもあるってことっ?」


 俺達3人はテリアの言葉に頷く。


「この○がある場所でもっとも山賊がいそうで守る易しく逃げるのも簡単という場所で俺の中で筆頭候補は俺が山籠りして時に寝泊まりしてた大きな川の傍にある坑道後が臭いと思っている」

「そうですね、イカダでも用意しておけば一斉に逃げれるし、立て篭もれば要塞と化す。しかも坑道は奥へ抜ける道もあるから大人数の討伐隊だけ気にしたら逃げ道に困りません」


 ルナはモグモグしながら追従してくる。

 テリアは俺と美紅の話を聞いて呆れる。


「もうなんか難易度とかじゃなくて無理な感じがするんだけど・・・」

「まあそうなんだが、でも、人質さえなんとかなるようなら全滅も全員捕える事もできる自信はあるんだよね」


 行って様子見てからじゃないとなんとも言えないんだけどねっとテリアに言うとどうするの?聞かれる。


「まあ人質を救出後は頭脳プレイと言いたいがどうみても力技に頼る事になるけど言わせてくれ。『我に秘策ありっ!』ってやつだ」


 一度は女の子の前で言ってみたいリストのベストテンに入っている言葉である。俺の本棚の植物図鑑のブックケースに一緒に仕舞って・・・おっとここからはシークレットモードだよ。


 決まったっと思って前を見るがどことなく冷たい目と生温かい目に見守られている事に気付く。


「徹って時々、近寄っちゃ駄目って感じな事を言う事があるから困るの」

「いいじゃないですか。男の子って感じで私はこういうトオル君もいいと思いますよ」


 なんだと!かなりカッコイイセリフだと信じて放ったのに・・・

 2人の放った言葉に打ちのめされているとテリアが俺の肩を叩いて憐憫の表情を浮かべて言ってくる。


「トール・・・アンタ、馬鹿ねっ?」


 俺はテリアから視線を切ると食べ終えたゴミを回収してゴミ箱に捨てると言った。


「さあ、出発しよう!」


 真昼間の太陽に俺の目元がキラリっと光ったような見えるのは一律、気のせいと思って頂きたい。


 俺達は西門を目指して歩き出した。



 西門を抜けて俺達はショートカットする為に獣道らしきも捜すのも面倒という事で木々を飛び移るという大胆なコースを利用して目的地へと走った。

 テリアが普通に着いて来れる速度で走ってもショートカットの恩恵もあるが4時間もすると着く事ができた。


 到着して高い所から様子を窺うと予想通り、坑道後を根城にしているらしく、篝火を焚いている事と坑道前に見張りがいるところから見ても間違いはないだろう。


「徹の読み通りだったようだけど、この後はどうするの?」

「まずは中の様子、人質がどうなってるか知る必要があるかな」


 俺は当然のようにそういうが美紅が問題点を言ってくる。


「それは分かりますがバレずに潜入しないことには人質を盾にされて八方塞がりになりますよ?」


 勿論、その問題は俺もちゃんと気付いていた。

 そこで俺はついに見せる時がきたっといき込んで魔法を唱える。


「混合魔法、火水アレンジ!」


 俺の廻りにキラキラしたモノが降りかかると俺の姿が消えて3人はびっくりする。


「凄いだろ?光の屈折率ってのがあってな?人の目ってそれをずらされると見えなくなるらしい。って言いながら俺も理屈は分かってないんだけどな」


 姿を現し、苦笑すると3人は詰め寄ってくる。

 まず、ルナが、


「沢山の人の目をごまかせるの?」

「実験はしてないけどいけるんじゃないかな?」


 次に美紅が聞いてくる。


「姿はともかく、物音、特に足音などは消せないんですよね?」

「それは少し宙に浮けば済む問題だから気にする必要ないな」


 最後にテリアがジト目で聞いてくる。


「ねぇ、トールっ?女の子の着替えやお風呂を覗こうと考えた事ない?」

「そ、そんな事実は存在しないことよ?」


 俺はテリアの目を見つめられなくて登り始めた月を眺めた。

 そんな俺の顔を両手で鷲掴みするルナにより視線を戻させられる。


「そんな事に使ってないって私は信じてるの」


 そう優しい事言うルナを俺は見て、そう思っているなら少し指に込めた力を緩めて欲しいと思った。

 美紅は何故か素振りを始めながら微笑みを浮かべながら言ってくる。


「今回の件が済んだら、お時間くださいね?」


 俺はもっと違う手を考えれば良かったと激しく後悔した。



 しかし、これ以上の手がないと言う事で満場一致でこの方法で人質の様子を探る事に決まり、俺は姿を消して飛びながら音もなく近づいて行った。

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