10話 節約とやりくり
同日2話目投稿です。
初の2ケタ10話です。よろしくお願いします。
ギルドでルナの失敗した依頼の再チャレンジの機会を貰い、ルナはご機嫌、俺はザックさんに脅迫されて項垂れ気味で帰ってきた俺達はマッチョの集い亭の扉を開いたら待ち構えてたようでミランダが俺に抱き締めにかかってきた。
「おかえりなさ~い。2人とも無事で何よりだわ。少し休んでから食事?それともすぐに?トールは食事より私かしら?」
ぎゃっーーー、俺は生きてるって意思表示するように肉の塊から逃げようと気合いを入れて叫ぶ。このスキンヘッドマッチョは新妻ゴッコとかしてんじゃねぇー!マジで心が飛んでいくかと思ったぜ。
「トールったら喜んじゃって、うふふ」
「そうなの?そんなことはいいから、ご飯食べたいの」
必死に逃げようとしてる俺をあっさり離して、はいはい、すぐ用意するわねっと厨房に戻って行った。
昼間と違って、パンイチじゃなかったが薄着というかタンクトップ姿で抱きしめられてはっきり言って気持ち悪かった。
そんな俺達を見てた常連ぽい客が声をかけてくる。
「お前がミランダに気に入られたトールかい?ミランダに気に入られるなんて珍しいんだぞ。良かったな」
ニヤニヤ笑っているが性格が悪い笑いではなく距離感の近いイタズラめいた笑い方である。おそらくミランダが認めた相手はいい奴っという信用が生まれるのかもしれない。だとすると少なくとも、この客はミランダの人を見る目を信じている事になる。よく考えるとおっさんもミランダを信じてるような気がする。じゃなかったら値段の交渉ができるからといって今の俺達を任せようとは思わない性格をしてそうだからな。
ミランダは人としては信用できる人物なのかもしれないが、やはり俺にはそっちの趣味もないし、トラウマ克服してない状態ではマジきつい。
店の中にいる客達にからかわれたり、自己紹介しながらカウンターに座っている。普通、酒場とか食堂で声かけられたりするのって、この場合、俺じゃなくてルナじゃないの?とことんテンプレを無視する世界だ。待てよ?マッチョの集い亭・・・まさかな、それはないよね?
ちょっとした恐怖に包まれてた俺がいたが、厨房から料理を持ってきたミランダを見たルナが歓声を上げる。本当にルナって腹ペコ女神である。でも意外にもすぐ腹減ったってうるさいルナではあるが、食が太いという訳ではない。見た目の予想を裏切るような食事量ではない。はっきり言って小食と言っても間違ってない。
「待ってたの!夕飯はなになの?」
大皿の中を覗きこむ。皿の上には白飯と茶色のトロリとしたスープのようなものがかかっている。これはまさか・・・
「もしかして、ハヤシライスか?」
「そうよ、トールは米料理が好きみたいだから先に言っとくと今、材料がないから作れないけど・・・」
俺は唾を飲み込む。予感がするのだ、きっと外れないと確信している。
「カレーライスもあるから、楽しみにしててね」
両手を突き上げて、俺は叫ぶ。
「俺はカレーが大好きです!!ちょっと辛めが大好きです!!」
ミランダは、ふっふふと笑い、分かった、覚えておくわと言うと厨房に戻って行った。
俺はこの街にいる限り、この宿から出てはいけないかもしれない。カレーライス恐ろしい子!
食べ物に過剰反応示した俺が言うカレーってなんなのか気になったルナの質問が食事が終わるまで続いたのは言うまでもない結果だっただろう。
食事が終わった頃を見計らったようにミランダが飲み物を持ってやってくる。リンゴジュースを俺達に配ってくれる。どれくらい拡散してるかの違いこそあれど、地球にあったものは大抵ありそうだな、アローラって。文字とかもそのまま読めてたし・・・いや、異世界言語とかいう召喚者専用スキルってオチがあるのかもしれん。スキルで、「俺の業火で焼かれ・・・略」とかあると信じたい、一応、俺、異世界者、神様お願いします、と祈ろうとしたが祈る相手が隣で美味しそうにリンゴジュース飲んでる。祈ってもいいことなさそうである。
「部屋なんだけど、2人で1部屋、ベットはちゃんと2つあるんだけど大丈夫よね?」
その言葉を聞いた。俺達は特に慌てず、
「大丈夫 (なの)」
とりあえず、2日分先に払っておくよ」
ミランダに銅貨40枚払う。
先程の答えが面白かったのか、俺達の顔見てクスリと笑う。
ルナは多分、そういうことに疎い、俺は胸がない女性に紳士になれるという偶然がここにあった。そんなことを考えてた時にルナから冷気を漂わせる殺気が一瞬あった。なんか殺気のレベルは上がってる気がする。そして、それを流すスキルも俺は上げてるようだ。
ミランダから鍵を受け取り、俺達は部屋に行く。
今日、依頼に行ってる時に相談しようとしてた事を話し合う為である。
中に入るとテーブル1つのベット2つ、小奇麗な部屋といった感じである。ミランダが綺麗好きなのだろう。1つだけある窓の外を見れば通りを歩く人が見える。
お互いのベットに座り、話そうとしてるが若干ルナが満腹からの睡魔に襲われてる節が見え隠れする。
「ルナ、俺達、着の身着のままじゃないか?替えの服を用意しないとダメだと思うんだ。生活用品一式とか、必要最低限の装備とかね」
「お金は足りるの?」
「正直、相場も何も分からないから明日見に行くつもりだったんだが、倉庫整理に行く事になったから明後日いこうかと思ってる」
ごめんね、としょんぼりしたルナが謝る。
「いや、正直、銀貨1枚ぐらいだと替えの服も厳しいと考えてたんだ。明日の銀貨1枚の仕事は助かる」
慰めるつもりもあったが言ってる事も事実である。ルナは頷いて笑う。
相場が分からない物をあれこれ言っててもしょうがないし、買いに行く場所などの候補は明日の夜にでもミランダに聞いてみようかと思っている。
だいたい、装備とかとなると銀貨1~2枚でなんとかなると正直思ってない。
とりあえず、服、カバン、生活用品の順で揃えて行って、最低限揃えたら武器だけでも手に入れたいと思っている。
今、述べた事情があるため、俺はこれからルナにある意味、死刑宣告をせねばならない。俺の予想だがきっと、それを告知したらルナは泣き崩れると思うぐらいルナには重い話である。
「ルナ、心を強くして聞いてほしい事があるんだ」
「ど、どうしたの?徹、真剣な顔して」
俺の顔を見て、ビクついた様子を見せるルナは身を守るような仕草をして俺の言葉を待つ。
「さっきも言ったが色々買わないといけないものがあるから、お金がキツイっては分かるよな?」
「うん、分かるの?頑張って依頼をして、お金貯めないとダメなの」
「少しでも早く勇者のとこに行くためにも節約も大事って分かってくれるよな?」
少し恐怖に彩られた顔をしたルナがウンっと頷いた。もしかしたら、なんとなく理解しだしてるのかもしれない。
「その為にルナに協力して欲しいんだ」
「な、何をかな?」
溜めるような時間が生まれ、さすがの俺も正直、心が痛む。ルナの性格を考えると特にだ。
「明日から昼飯は抜きだ!1日、2食だ!!」
「へっ?なんて言ったの?」
ルナは耳に入ってきてる音を心がシャットアウトさせたようだ。
「・・・明日から1日、2食。昼飯抜きだ!!!」
「いやぁぁぁーーーー!」
ルナの悲しみに包まれた声が夜の空気を震わせて響く。まだ寝るような時間じゃないから迷惑は・・・と思ったら、煩かったらしく隣の人が壁ドンしてきた。
すまない、ルナ、耐えてくれ・・・
まだ、ベットでシクシクしてるルナだが、ここからが俺的に本題の相談事だ。
「ルナ、俺に魔法を教えてくれないか?使えるなら覚えたいんだ」
だいぶ落ち着いてきたのか、少し目を赤くさせてはいるがちゃんとした声で返事をしてくる。
「私はこれでも神だから全魔法使えるといって差し支えないんだけど、あんまり人に教えるのは良くないの」
その言葉を聞いて、俺の頭に過った記憶がある。
「全魔法使えるルナさんがどうして、イノちゃんに追いかけられてた時に木の上から魔法を打ってくれなかったかな?」
そう、俺に言われてたルナは徐々に俺の目線から逃げて行く。頬をに伝う汗はとっても素直なのに。俺はルナの視線を追いかけて、覗きこむようにして追い詰めていく。絶対、この女神、自分が攻撃魔法使えるって忘れてたな。
「教えてくれるよな?ルナ」
ルナは、はい、と答えると項垂れた。
明日から俺も魔法使いの仲間入りとウキウキが止まらない。昔の悪しき病気の再発をしない程度に頑張ろう。
せっかくの10話なのに盛り上がりがないとこになってしまってますが、徹が魔法を覚えるための取っ掛かりになりますので許してください。
次の更新は1日挟むかもしれません。間に合えば投稿します。
感想などありましたらよろしくお願いします。