103話 動き出す運命
思わず、上手に焼けましたって言いたくなる具合にこんがりと焼けた物体がそこにはあった。
何を隠そう・・・俺だった。
ミラさんに肉薄する事に成功したが、トラップに嵌められて俺は隙を見せてしまい、魔法を直撃された。しかし、その1発はかろうじて耐えて体勢を整えようとしたがその暇を与えてくれないミラさんのエグイ攻撃により、こんがりされてしまったのである。
「トール、アンタっ、馬鹿でしょ?今の明らかに斬りかかれたのにミラの胸の揺れに目を奪われて動きが止まるとか普通しないからねっ?アンタにとってその痛みを受ける事より胸を見るほうが大事ってのはびっくりよっ」
俺を見下ろすテリアの瞳はどこまでも冷たく優しさを求めて、泣いた。勿論、心も号泣であった。
そんな2人の様子に苦笑しながら近づいてくるミラさんは俺に回復魔法を唱えてくれる。
「でも、肉薄するところまではとても良い動きをされるようになりましたね。最初など近寄る事もできず、良いように的になってらしゃったのに」
そう、最初はもう前に進む事ができなかった。ひたすら、主にアオツキに頼りに必死に凌ぐ事になり、しかし、それすら掻い潜られ被弾すると後は怒涛の如く攻められるのみであった。
「確かに和也に聞いてる限り、剣の腕も上がってきてるようですし、えーと、評価しづらいのですが魔法も斜め上の角度に成長されているのは間違いないですね」
「そうよねっ、確かに凄いとは思うんだけど、どうして普通は手順を踏んで正道から入って派生って感じなのにっ、アンタは邪道から入って正道を覚えるって流れになるのか、さっぱりだわっ」
回復魔法により、なんとか起き上がれるぐらいに回復した俺は、いや~っと照れた風に頭を掻くが、テリアに褒めてないからっっと悲しいお知らせをされる。そして俺は再び泣いた。
苦笑したミラさんが俺を抱き締めて、頭を撫で撫でしてくれる。
「大丈夫ですよ。トールさんはちゃんと成長されてますからね?」
僕!今日からここん家の子になる!
ミラさんのふくよかな胸に包まれて僕は幸せです。このまま眠りたいっと顔を左右に振りながら胸を堪能していると左右に振ってるタイミングを読み切った動きで俺の顔を踏んでくるヤツが現る。
「何を馬鹿やってんだ?おい、ミラ、回復魔法はしっかりやっとけよ。まだ脳がやられてるみたいだぞ?」
えっ?そうなんですか?っと言いながら本当に俺の頭に回復魔法をかけるミラさん。
「この野郎、俺のハッピータイムを邪魔するとはいい度胸だ。今日こそは俺の手で安らかな眠りにご招待だ!」
「そういうセリフはせめて、ミラの胸から顔をどけてから言えよ?そのうえ、そのセリフは俺に一太刀入れてから言おうぜ?」
あきれ顔の和也は言ってくる。
俺は泣く泣く仕方がなく幸せの塊から顔を離すと親の敵を睨みつけるようにして叩きつけるようにして言う。
「今日こそは、お前を3度転ばずからな?」
「馬鹿か?それは昨日のお前だろ?まあ、最初の頃と比べれば自分の足で帰ってこれるようになっただけマシだがな」
良し、上等だっとばかりに俺は扉に向かおうとするが和也に止められる。
「まあ、本当は今日も遊んでやろうと思ってたんだが、そうも言ってられない状況が生まれつつある。とりあえず、これを見ろ」
和也は足元を叩くように蹴ると真っ白な地面はどこかの作戦室みたいに映像を映し出す。どこかの街のようだが・・・ん?廻りの地形がどこか見覚えがある気がする。
「上から見てるから確信できないって顔してるがお前の思ってる場所であってるぞ。あの街はモスだ」
「後、気になるのが街を囲むようにいる軍隊みたいなのはなんだ?」
モスの正門を囲むようにして配置されている軍隊を見つめて俺は聞く。
「あれはエコ帝国の軍隊だ。まあ、レジスタンスの駆除が目的なんだろうな」
エコ帝国からすればテロリストなんだろうがなっと嘲笑うようにして見つめながら言ってくる。
モスにはあのロケットオッパイもとい、クリミア王女がいるはず。エコ帝国に敵視されるぐらいに規模が大きくなるぐらいに頑張っていたようである。クリミア王女が心配って気持ちは強くあるが、それ以上に俺の胸に支配する気持ち悪さがあるのに気付く。
和也も苦笑いをする事で俺と同じように感じている事を伝えてくる。
「正直、帝国とレジスタンスとの戦いだけなら、お前に知らせず訓練を続けようと思っただろうが、それだけで収まる気がしない。行ってこい、まだまだヘナチョコだが、少しはマシになったところを俺に見せろ。訓練の続きはまた今度だ」
こいつの言う通りにするのは癪だがそんな事言ってる場合ではないようだ、しかし、大きな問題がまだ残っている。
「俺もそうしたいと思うんだが、クラウドから向かうよりは近いと言っても馬車で半日はかかるぞ?間に合う気がしないんだが」
和也は俺の言葉に返事せずにミラさんを呼んで、あの馬鹿を最短時間で送れるあの方法でモスへと跳ばせっと言ってくる。なんだろう?とっても嫌な予感しかしないのであるが・・・
ミラさんは、えっ?っという顔をして本当にするんですか?っと聞き返している。
「ミラさん、他に方法があるならそっちでも・・・」
「馬鹿野郎、最善を尽くせないで、お前の中の男はそれで満足できるのかよ!」
和也のセリフに俺は二の句も告げられない。ここで引き下がるとコイツに負けた気分にされる。それだけは我慢ならん。
「ミラさん、やったってくんさい!俺は行かねばならんのですよ!」
俺は今、とってもいい顔をしているだろう。
それを見てる和也が、おおっ、と拍手をして俺を称える。
俺と和也を見て溜息を吐いたミラさんはあきれ顔になりつつ言ってくる。
「じゃ、行きますよ?強い衝撃があるので気を付けてくださいね」
祈るような仕草をして目を瞑ると俺の足元から光が生まれる。そしてそれが爆発するのかっと思えるほど光ると本当に爆発したかのようにして俺を吹き飛ばした。
いつの間にあの世界から現実世界に帰還したのか分からないが俺は今、空の人になっていた。凄い勢いで跳ぶ俺はまさにミサイル。
母さん、俺、ミサイルにされちゃいました・・・
青い空に映る母は人差し指と中指を揃えてデコの辺りでピッっと振ってニカって感じの笑顔を向けてくる。
「息子の心配をしろ~~~~!!」
と叫びたかったが風圧の為それも叶わなかった。
「さて、行ったか。あの方法なら一時間は切れる時間でモスにいけるだろう」
「あの~、私もトールを見極めるって目的があるから行きたいんだけどっ、あの方法しかないのっ?」
私は追いかけたいけど、あの方法は嫌だなって思い、和也に問うといい笑顔をして答えてくれる。
「大丈夫だよ。ミラに頼めば一時間で書ける魔法陣でなら一瞬で着けるから」
和也のセリフを聞いて私は呆れる。なんで、敢えてあの方法に拘ったのだろうと思う。
そして、私は気付く。ミラもこれに気付いて呆れてたんだと分かると私はミラに変わって言う事にする。
「前から見てて思ってたんだけどっ、アンタって結構、トールの事好きよねっ?」
肩を竦めて苦笑いする和也は私から逃げるようにして背を向ける。
「テリアちゃん、男って生き物はいくつになってもツンデレで面倒な生き物なんだよ。覚えておいて損はないけど、俺が言ったってことは内緒にしておいてね」
そう言うと和也は本当にどこかに行ってしまった。
呆れて去る和也を見ていると後ろから肩を叩かれる。
「和也にとって、トールさんは弟のように可愛いのですよ。いつも反抗されるような態度を取られて楽しんでるですよ。だから、すぐいじりたくなるようで困った人です」
ミラさんは和也が去った方向を優しい視線で見ていた。
「さあ、こちらも用意しましょう。テリアさんもいつでもいけるように準備を済ませて置いてくださいね」
私はそう言われると荷物、よく考えたらアイツ、荷物置いて行ってるじゃないっ!もうっと不満を漏らしつつもアイツの荷物を持って行ってやることにする。2人分の荷物を用意すると私は魔法陣を書いてるミラを見つめて時間が来るのを待っていた。
約束も必要もない。
導かれるかのように交差するまで・・・もう少し
再び3人が揃う。
感想や誤字がありましたら気楽に感想欄によろしくお願いします。




