100話 美紅の相棒を求めて
やはり短い春でした(;一_一)
しかし、読んで頂けている貴方達がバイブルの、つば・・・げふんげふん
モチベーションです。最初の頃から読んで頂けている方から最近読み始めた方まで、最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。
では、とうとう3ケタ突入の100話です。よろしくお願いします。
ミラさんに言われた言葉が突拍子もなくビックリを超えて時が止まる思いをしていた。
正直、自分には魔法の才能はないと思ってただけに上手くなれる可能性が見えただけで既に浮かれていたのに、今のミラさんの発言。
「トールさん、貴方は、史上、そして、今後、追随出来る者が現れないと思われる大魔法使いの卵と私は断言します」
なんて言われて、ヤッターって喜べるほど俺の頭はお花畑ではない。
現に隣にいるテリアですら、自分が見極めようとしてる人物が過去未来含めての最高の魔法使いの卵だったと言われて、浮かべかけてた笑顔のままで固まっている。
ミラさんは苦笑しながら声をかけてくる。
「現時点での可能性の話ですよ。ですが、これだけの可能性を持っている自分を信じてあげてください。魔法とは誰かを信じ、誰かを助けたい、自分の意思を貫けると信じる力こそが魔法を強くするのですから。例え、絶対破壊不能、絶対防御不能を覆す事をできる奇跡を起こせる可能性がトールさん、貴方にはあるのです。決して手っ取り早く強い力が入りますが、頭打ちしてしまう闇の力に手を出さないでくださいね?」
ミラさんは願うように言ってくるが闇の力って?それって前世で・・・違う!俺はもう卒業したんだ!
俺はミラさんに闇の力って?と聞くと言うべきか悩んだようだが教えてくれた。
「闇の力、先程の魔法の原動力とは逆のマイナス感情。憎しみなどが代表でしょうか?私達はそれらを否定の感情と言ってます。否定というのは否定してしまうとその先がありませんがそこに発生する感情はとても強く簡単に沸き出します。それに頼りきり否定し続けて向かう先は虚無です。先程も言いましたが否定した先に進むべき道はありませんので頭打ちしてしまいますのでトールさんは決して手を出さないでくださいね?」
私と約束ですっと小指を出してくる。これってまさか・・・
昔、和也が自分のところではこうやって約束すると教えてくれましたっと俺に言ってくる。あいつが絡んでると思うとするのが悔しいがミラさんが置いてけぼりを食らった人のように涙目になってるのを見て、渋々、指きりをする。
「嘘吐いたら、ファイアボール100発!指切った!」
ちょっと待ってっと叫びそうになる俺がいたが、よくよく考えると元のヤツの針千本飲ますってのも半端ないよなっと思い、思い留まった。
だいたい、嬉しそうに指きりするミラさんに鬼のように言えるやつがいたら俺が殴ってるよ。
ミラさんは立ち上がり、さてっと言うと俺を見てくる。
「次は魔法の実地です。なんとなく話から想像はできるかもしれませんが理屈や理論はありません。本能と直感と気持ちの強さが魔法を強くし、なんでも奇跡を起こせるようになります」
俺はかなり嫌な予感がしてきている。さっきまで可愛らしくしか映らなかったミラさんの笑顔がとても不安を誘います。
ミラさんはテリアに離れるように伝えるとある宣告をしてくる。
「死なないギリギリまで攻めるので自分で感覚で理解して魔法を発動させてくださいね?」
くそう!この2人は変なところで同じ発想とか!
思わず、後ろに全力で跳ぶが、すぐに失策と気付く。
「今のトールさんが離れてしまうと私に打つ手あるんですか?」
ニッコリと笑ったミラさんは手を上に挙げて振り降ろすと空から無数のファイアボールが流星群のように落ちてくる。
俺はその魔法を睨みつけて、どう切り抜けるべきかと必死に頭を働かせ始めた。
そして、丁度その頃のクラウドの職人街と言われる一角にあるグルガンデ武具店では、出発の準備の済んだデンガルグと美紅の姿があった。
美紅はクラウドに帰ってきた次の日の各自の行動の時にデンガルグを訪ねて、自分の力に耐えうる武器の相談をしに来ていた。勿論、その時はいずれのつもりで聞いていたのだが、徹にああ言われた以上、ルナと別れたその足で再びデンガルグを訪ねて、力を貸してほしいと願い出た。
その武器を作るのに適しているのは2つ、神の一部と噂されるオリハルコン、高位な存在が消滅した後、しばらくすると現れると言われる核の2つらしい。
しかし、オリハルコンのある場所のアテなど勿論ない。高位な存在が消滅した場所しかないのであるが、美紅が1つ心当たりがあった。それをデンガルグに問うと充分、可能性があると言われる。時間もそろそろ現れてもおかしくない時間だと伝えられる。
デンガルグさんに興奮気味にいけるぞっと言われるが自分が伝えた事ではあるが正直躊躇してしまっている。
その伝えたのがトオル君が拘り、命を落としかける要因になった存在だったからである。その存在の名前をフレイドーラと言う。
以前、トオル君の可能性を見る為に命を張って挑んできたエンシェント級のドラゴンであった。トオル君が垣間見せた可能性に満足して逝ったドラゴン。
デンガルグさんが言うにはそれ以上の好条件はないだろうと太鼓判を押してくるが、しかし、トオル君の友達と言ってた存在を利用していいのだろうかと迷いが拭えない私にデンガルグさんは言ってくる。
「嬢ちゃんがどうしてそこまで気にするかは分からんが、嬢ちゃんに使われなかっても、そのドラゴンの核は誰かに利用されるじゃろ。利用されるだけなら救いがあるわい。見世物なんぞになったらワシなら破壊してくれっと思うじゃろうな」
踏ん切りはまだ付いてないが他の誰かに利用される可能性が後押ししてくれて私はフレイドーラが逝った場所、初代勇者と魔神の最終決戦地へと向かう事を決めた。
そして、私は馬車で2日かけてデンガルグさんと共に再び、最終決戦地へとやってきた。
一度潜った場所であった為、迷いもなく、出てくるモンスターも私とデンガルグさんの敵にならず進む。
ほとんど歩く時間分ぐらいで最下層へと到着した。
到着すると私の胴体ぐらいの大きさの鼓動のように光る核が部屋の中央で鎮座していた。
ここに来るまで2日と少しの時間、どうすべきかと考えながらやってきたが未だ答えは出ないままである。私の様子からまだ答えを見つけてないと気付いていたデンガルグさんはその核の前で腰を落ち着けると目を瞑って私の答えが決まるのを待っていてくれてるように見えた。
答えが決められない私はなんとなく核に触れると思わず、後ずさった。
自分でも何故、下がったか分からなかったが核の上に視線を向けた時に理由を知った。そこには少し強面の長髪の男が立っていた。
「久しいな、今代の勇者よ。もう会う事はないかと思っていたが何用だ?我に言わせず自分で言うがいい」
突然現れたフレイドーラに驚いた私は一瞬言葉を失う。その様子を片目だけ開けて確認だけするとデンガルグさんは再び目を閉じて介入する気がないと意思表示をする。
今の様子を見る限り、こちらの目的は知れているだろう。初代勇者の事を知っていて、自分専用の武器のない今代の勇者がドワーフを連れて自分の核の前に居れば誰だって分かるだろう。
「もう、お気付きかと思いますが、私は自分の力が振るえる武器を求めています。そこで貴方の核に注目したのですが、正直、迷ってました」
フレイドーラは、フムっと頷くと続きを促してくる。
「トオル君は貴方に強い拘りを持って行動される事があります。そのせいで命を失う恐れもありましたが、これは貴方への非難なので受け止めていてください」
私の非難を浴びて、思わず目線に逃がす様子がトオル君を思い出す感じだった為、少し笑ってしまう。
「その貴方を使う事をトオル君がどう思うかと考えると躊躇してた次第です」
「我は先程、我に言わせず自分で言うがいいっと言ったはずだ。嘘を、正確に言うなら本音を隠すな。お前が恐れているのはそれではないだろう」
フレイドーラの言葉を聞いた私は固まる。そう、私が本当に恐れているのはそれではない。確かに言った事も心配はあるから嘘とは言えないが本当でもない。正直、そこを見破られるとは思ってなかった私は沈黙する。
「そこまで言いたくないのであれば我が言ってやろう。お前がそこまで恐れるのは我を使って自分の力を振い切れなかった時に徹に責められるのではなく優しさから責められなかった時に耐えれないからであろう!」
私は思わず膝を折りそうになるがかろうじて耐える。フレイドーラが言った事はまさに私が一番恐れている事であった。
きっと、トオル君はフレイドーラを使って武器にしても怒らない。そして、力を振いきれなかっても責めずに庇ってくれるだろう。嬉しい事だがそれでは駄目なのだ。
「そんな覚悟しかないものに我を使わすのは正直面白くないな」
「どうすれば、納得できますか?」
フレイドーラは思案顔になると思い付いたらしく言ってくる。
「我の徹への想いを超えてみせろ」
そう言ってきたのに驚き慄く。
フレイドーラは命を張って生き様を示したような人だ、その想いを超えるとかその難題ぶりに頭を抱える。
ふと、頭にチラついたルナさんの顔を思い出した私は思わずルナさんならどう言うだろうと考える。すると、あっさりとフレイドーラを超える想いを伝える方法を理解するが、この場で伝える羞恥心を超える勇気がない。
違う手を考えようとした時、ルナさんに伝えた言葉を思わず再び思い出す。
「私はトオル君のヒロインになりたい。でも、後ろでキャーキャー言ってるだけで護られるヒロインにはなりたくないし、なるべきでもない。私はトオル君と共に歩けるヒロインになりたいのです。ルナさんはどんなヒロインになりたいのですか?」
私はなんて事を言ったのであろうと自分を責めた。あんな事を言ったのにここで引き下がったらもうトオル君だけに限らずルナさんの前にも出られない。
我は一人で葛藤する少女を見ていて、若干イジメ過ぎたかと思っていた。
自分の核をどうせなら徹の縁の者に使われてアイツの役に立つほうが嬉しい。しかし、老婆心から迷っている少女に徹に続き、乗り越えるべき壁をするというお節介をしてしまった。
もういいだろうと思い、少女に使うといいと勧めようと思った矢先に向こうが先に動いた。
顔を真っ赤にして高らかに叫ぶ内容に我は度肝を抜かれ、呆けた後、爆笑する。
やはり、徹の関係者はこうでないといけないと我は嬉しく思った。
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