98話 黒と白
もうすぐ折り返し地点が見えてきますが疲れてませんか?頑張って付いて来てください(^O^)/
100話が折り返し地点じゃないよ?多分ね(;一_一)
時間が惜しいと言う事でとりあえず扉の中に入る。
中に入るとそこは外と同じような草原のようだが湖か池か分からないがそれがあるという違いぐらいしか区別が付かない。
俺達は言葉を交わさず、迷わずお互い斬りかかるという同じ行動に出て2人して顔を顰めるところまでお互い同じで嫌気を刺す。
「普通は自己紹介なり、これからする予定の説明が先なんじゃないのかよ」
「よろしくお願いしますもなしにいきなり斬りかかるとかお前大丈夫か?」
鍔迫り合いしながらお互い様な事を言い合う俺達を外にいる2人に見られたらきっと馬鹿呼ばわりされていたであろう。
一旦、鍔迫り合いから脱し、飛び離れる。
俺はコイツは死ぬような攻撃しても大丈夫な奴と決めつけ、迷いもなく本気で斬りかかる。勿論、急所などまったく気にもしないで。
「おいおい、思い切り良すぎるだろ?」
俺の攻撃をなんなく捌く和也はニタニタしながら言ってくる。あの余裕の表情を潰したくて俺は回転を上げる。
アイツは両手剣を使ってるから攻めてくると一撃系になるだろうが俺は二刀流だ。アイツに合わせて一撃に狙いなどせず、手数で押していくのが正解であろう。
「ふむ、思いっきりもいいし、自分の特性も理解はできてるようだが・・・相手の事を見た目で判断するのは頂けないな?」
俺はゾクっと背筋に悪寒を感じると迷わず後ろに跳びながら防御態勢に入る。すると、和也は両手剣で俺が必死に防ぐのがやっとの速度で連打してくる。
「そうだ、そうやって必死に食らいついてこい。ギリギリ死なない攻撃を入れていってやる。外に出ればミラに頼めば、生きていれば腕が切り離されてもここでならミラなら治せるからな」
「ば、馬鹿野郎。そんな死ぬほど痛そうな事を推してくるなよ!」
必死に捌き、いや、捌かせて貰いつつ、言い返すと和也はニヤリと笑って言ってくる。
「大丈夫だ、死ぬほどの痛みなんてすぐになれる。死ぬ痛みすら慣れた俺が保障してやるよ」
絶対こいつ俺をいたぶって楽しむ気だ。
俺はこいつの事が本気で嫌いだっと再確認する。
しかし、こいつとの力の差は歴然で手加減されてるのにも関わらず、徐々に傷を量産されていく。悔しいから一矢報いたいが多少無理して一撃を入れようとしても簡単に防がれて痛い思いをさせられる。
「おうおう、有りもしない隙を隙だと思って斬り込んでくる辺り、彼女もできた事もない童貞君みたいだな、あ、そうか、本当にそうだったんだな?悪いな、本当の事を言っちゃって」
本当に申し訳なさそうな顔をして言ってくる和也だが口の端が上がってるのを誤魔化し切れてない。まあ、そこを誤魔化し切れてても俺は信じなかっただろうがな。
「くぅ!確かにな、お前みたいに巨乳のミラさんやきっと他にもいたんだろう!巨乳の可愛い子から美人まで選び放題だったんだろう?こんちきしょう!お前みたいなリア充がいるから俺達みたいな奴らには廻ってこないんだ!」
俺は魂からの叫びをシャウトする。叫びとシャウトは同じだと?気にするな!それぐらい俺の思いは爆発してるんだよ!きっと誰かの思いを受信してるんだ!
俺のシャウトを受けた和也は俯いたと思ったら勢い良く顔を上げるとキッっと俺に睨みつける。あの視線は凄く見覚えがある。決してリア充がする目ではない。俺達側の者がする目である。
涙目な和也が俺にシャウトし返す。
「リア充だと?ふざけるな、そのセリフをお前が言うか?ルナちゃんや美紅ちゃんに囲まれていつも無防備な格好を見られるだけに飽き足らず、ルルちゃんに慕われ、しまいにはティテレーネ王女には兄様呼ばわりか?本気で一回死んどくか?」
今までの気迫が嘘のように俺に全力の殺気を飛ばしてくる。一瞬、本気で死んだかと思うほど強烈だったがギリギリ耐える。
「しかも、今はテリアちゃんも候補にしようとしてるお前は万死に値する・・・」
あれはアカン、真面目に俺達寄りのダークサイドに片足、いや、どっぷり浸かってる奴の反応や。
「少なくともお前の廻りには綺麗どころの巨乳が勢ぞろいしてたんじゃないのか?記録じゃ、かなりお前妬まれてたぞ」
馬車の移動中にコルシアンさんと話してる時にそんな事を聞いた時、時を超えて和也に嫉妬した。
そして、ミラさんを見て、やはりと納得してたが違ったのか?
「ああ、その記録に間違いじゃない。確かに傍目から見れば俺はハーレムの主だっただろうな。廻りにいた女性にも愛されていたと自負している」
やはり、こいつとは相成れない。もう手遅れだとしてもこの世から消すつもりでいこう。
だが、和也は被り振ると意思の籠った視線を俺にぶつけてくる。
「だがな、女性の胸というのは貧乳が正義だと俺は思うんだ・・・」
噛み締めながら言ってくる和也を見て俺は目が点になる。脱力の余りにカラスとアオツキを落としてしまう。
今、こいつ、なんて言った?なんて力説った?
「確かに、俺はアイツを愛していた、が、アイツもまた貧乳ではなかった。惜しいぐらいに適乳だったのだよ・・・」
遠い目して語る目の前の馬鹿に俺はなんて声をかけたらいいのだろうか。
つまり、こいつが言いたい事って・・・
「つまるところ、お前の廻りには貧乳の可愛い子や美人がいなかったから俺が妬ましいと?」
やっと理解したかとばかりに鷹揚に頷く馬鹿に頭を抱える。
貧乳が正義だと?こいつは間違っている。俺が正してやらねば。
「目を覚ませ、巨乳こそが正義だ。お前は間違っている。何故、そんな幸せな空間にいてその真理に気付けなかった」
「寝惚けてるのはお前のほうだ!何故、貧乳が正義だと分からない!」
俺達はお互い胸倉を掴み合いつつ、額をぶつけながら睨みあう。
きっと冷静な第三者がいたら、お前ら、とりあえず落ち着けと常識的な対応をしてくれただろうが、悲しいかな馬鹿が2人しかいないので止まる事を知らない。
和也は引き下がれない戦いが今っといった顔をして次の一撃にすべてをかけるといった気迫をのせて睨みつけてくる。
「白のスク水を着たルナちゃんと美紅ちゃんと砂浜で追いかけたり、追いかけられたりする喜びに何故気付けない!」
両手剣を正眼の構えで清廉な気迫を放ってくる。しかし、言ってるセリフのせいで全てが台無しになっている。
「馬鹿野郎!黒のビキニを着たミラさんに前屈みされたら自分も色んな意味で前屈みになる幸せにお前は気付けなかったのかよっ!」
色んな意味?谷間を覗こうとしたり・・・色々だよ、察してくれよ。
取り落としたカラスとアオツキを拾って左右に手を広げていつでも飛び出せる体勢になる。
ー主よ、汝も大概、色々、目を覚まして現状と普段の幸せを正しく理解したほうが良いと思うぞ?-
何かカラスが言ったような気がするが聞こえない。
「男同士、これ以上の問答は無用!かかってこい!」
和也が叫ぶと俺は全力で身体強化して跳び込む。
激しい金属音と火花を散らせて長い時間、黒と白が交差し続けた。
そして、俺は荷物のように和也に担がれてあの世界から連れ出された。
「ミラ、こいつの手当てを。済んだら気を失うまで魔法の特訓をしといてくれ」
「もう!初日から飛ばし過ぎです。トールさんボロボロじゃないですか」
プンプンと怒るミラさんが俺の傷を癒すべく手を翳して何やら呟く。
「トールっ、生きてるっ?」
俺を突っついて生存確認してくるテリアに生きてるわ!と叫びたかったがミラさんの魔法の暖かさに負けて眠りについた。
「どうでしたか?トールさんは」
徹の治療が済んだミラは眠りに就こうとしている和也に語りかける。
「ふん、弱過ぎて、よく今まで生き残ってこれたっと思ったよ」
「でも、その様子を見る限り、貴方の望みを託せる人の可能性は見れたようですね」
ミラが優しげに和也を見つめるが和也は何も言ってこない。
和也は照れたり、悔しい時は黙る癖があると言う事は500年も一緒にいればさすがに分かってくる。
良かったですね、と言うミラの視線から逃れるかのように目線を反らす和也。
「ミラ、もう少しだけ、俺の我儘に付き合ってくれ。おそらく、後、少しで解放してやれる」
和也の言葉にミラは首を振り、愛しげに見つめながら言ってくる。
「私は貴方の宿り木になると決めた時から最後まで貴方の傍にいますよ」
すまないっと和也は言うが、被り振ると言い直してくる。
「ありがとう、最後まで世話になる」
そう言うと目を瞑り、眠りに就いた。
「はい、私はいつまでも貴方の傍で・・・」
和也の顔を壊れ物を触るようにそっと触れて微笑んだ。
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