96話 俺が後悔してはいけない選択
キャラクター紹介、更新完了しております。お暇が有られたら読んでみてください。一部、前の情報をプラスされている人物もいますので多分誰の事かはだいたい分かるとは思いますが・・・
俺の目の前で展開されていたのは西洋の魔女裁判のような有様で磔にされているルナ達を見た俺の時間は止まった。
何が起きてこうなったっと自問したところでグルグルとループして思考が繋がらない。着々と薪などを運ばれて積まれていく状況に動けずにいた。これが王都だったり知らない場所でなら何も考えず駆け寄り助ける為の行動を取れただろう。しかし、一番、俺達にとって優しい場所だと信じているクラウドで行われている。
視線を彷徨わせると南門のピーターが近くにいるのに気付き、やっとの思いで動き、声をかけて事情を聞こうとする。
近くに寄るといつもならルナ達を鼻の下を伸ばしてだらしない顔をしてるピーターが憎々しいと言った顔をしてルナ達を睨みつけている。
「何が起きてるんだ?」
俺は絞り出すようにピーターに聞くとこちらも見る事なくルナ達を睨みつけたまま答えてくる。
「ああ?何をボケた事言ってるんだ。あの罪人を処刑しようとしてるに決まってるだろう?ルナってやつはあれでこの世界の女神なのに魔神に何もせずにのうのうと遊んでたんだぜ?美紅ってやつはもっとタチが悪い。戦う事もできないポンコツだったのをエコ帝国の王様の優しさで結界の触媒になる事で世界を護る機会をくれたのに結界から出てきやがった。世界の人間の命を脅かした2人はこれから処刑って話をなんで知らない?」
嘆息しながら答えるピーターに驚愕した俺は後ずさりしてしまう。
何が起こってるか理解しようと頭がしない。廻りを見渡すと聞こえてくる言葉の切れ端が耳に入ってくる。
王は召喚の儀に入ったというから大事にはならんかったが・・・
あの女はニコニコ笑いながら俺達を馬鹿にしてやがった・・・
あいつ等が死ねばきっと俺達の不幸も報われるはず・・・
なんだ?どれもこれもヤツアタリに等しいような理由でルナ達は磔にされているというのか?
やっと思考が動き出した俺はルナ達を助け出す為に行動をすると決める。
思考が止まってる時には気付かなかったが廻りの空気、雰囲気が気持ち悪い熱気に包まれていた。おまけに凄い人数に囲まれている。助けようとしてるのが分かるとルナ達の身がどうなるか分かったものではないと思い、俺はルナ達と合流するまでは穏便に行こうと焦る気持ちをねじ伏せ、ゆっくりと近づいて行く。
後ちょっとといったところまで近づいた俺を見て叫ぶ声がする。
「トールがいるぞ、あの2人を連れ出すつもりだ!」
声がした方を見るとそこにいたのはルル。お前までなのか・・・
俺は身体強化と生活魔法の風を利用して一気にルナ達の元へと駆け寄り、縛られている体を解放する。
意識はあるようだが、立つ体力なのか気力が既にないようで崩れ落ちようとする2人の胴を抱えるようにして掴む。
突然、後ろに気配が生まれ、慌てて前に飛び出すがルナ達を抱えてたせいか、背中を浅く切り裂かれる。
振り返るとそこにいた人物を見て俺は膝から力が抜けて着いてしまう。
「トール、今ならその罪人を置いて逃げるなら追わないであげるわ」
包丁を握り締めているミランダであった。
「どうしてなんだ。ミランダはこの2人の正体は知ってたはずだろ!」
俺の心の底からの叫びをミランダは煩そうに聞くとうんざりした顔で言ってくる。
「トール、世の中ってのはね、綺麗事じゃ通らないの。自分の為に長いモノに巻かれて生きていくのが大人なのよ?いい加減、大人になりなさい」
俺を嘲笑うようにして言ってくるミランダを見て、俺の世界にヒビが入ったような感覚に襲われる。
廻りを見ると俺達を囲むようにやってくる先頭にはギルド長とシーナさんが怨敵を見るような顔をして俺を睨みつけている。
俺は逃げるように生活魔法の火の炎の翼を生み出すと温度を人肌にした状態でシーナさんがいるところと反対側に展開してなぎ払う。なぎ払う事で出来た道を俺は走り抜け、風魔法を利用して城壁の上に到着した時、初めて、ルナ達が反応を示す。
「私がいた世界で・・・」
「結界の中で・・・」
虚ろな視線を向ける2人が俺に向かって絞り出すように魂からの言葉を紡ぐ。
「徹の・・・」
「トオル君の・・・」
『手など握らなければ良かった』
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!
ピキッ
俺はこんな結果を認めない、こいつらと笑い合い、クラウドで馬鹿やっていけるように俺は進むと決めたのにこの結果は何があろうとも受け入れれない。
ピシッピキッ
「誰だ!俺にこんなイタズラじゃ済まない事をしかけてるクソ野郎は!!」
ピキピキッパリン
さっきから鳴ってた音が完全に割れる音になり世界がガラスのように割れると先程までいた白い世界でテリアが俺を焦った顔をして揺すっていた。
「トール、しっかりしてっ!」
力一杯揺するものだから首がガックンガックンさせられる。
精神的に疲労でヘロヘロになってる俺は慌てて、テリアの肩を掴んで止める。
「すまん、もう目を覚ました。俺はどれくらい呆けてた?」
「え?1分も経ってないけど何を話しかけても無反応だから焦ったわっ」
1分?どうやらかなり濃密な幻覚を見せられたようだ。
廻りを見渡しながら俺は言う。
「もういいだろ?出てこいよ」
大声を張り上げる訳でもなく隣にいる人に話しかけるように言う俺を見て、え?コイツ大丈夫?といった目で俺を見てくる。失礼なやつだよ。
「ごめんなさい。今、目の前に現れます」
霞むように人影が見え始めるとどんどんはっきりしてくる。そこに現れたのはフレイの記憶で見たエルフで銀髪の髪をポニーテールにしているのに地面に着きそうな豊かな髪をしており、何も豊かなのは髪だけではなく、胸も豊かであった。ミザリーに迫る大きさだと俺のスカウターが教えてくれていた。
よく姿を見ると布を結ぶだけで作られているような神殿の巫女のような服を着てかろうじて聖女ぽい格好している。結んで作られているような格好なだけに至るところから肌が見えて俺は興奮の為か鼻が出てしまう。
俺は何事もなかったように鼻を拭くと向き直り、近寄ってくるエルフに声をかける。
「言い訳は聞かせて貰えるのか?」
「言い訳はしようがありません。ですが、意図だけは聞いてください。あの幻覚を見せたのは貴方の拠り所を煽って自分を保って諦めないか見る為です。貴方は見事に乗り切った。あの状況であったら廻りの住民を皆殺しにしたり、心が壊れててもおかしくはなかったはずです。そこまでいかなくても心が折れて全てを投げ出しているのが普通だったのですが・・・本来ならこちらが一から十を説明する立場と分かってお聞きしたいのですが良いでしょうか?」
別に疑問に答えるぐらい構わないと俺は答えた。
「貴方が幻覚だと気付かれたと思われる、ルナさん達の言葉を聞いて貴方は心が折れなかったのですか?」
そんな事が聞きたかったのかとちょっと拍子抜けした俺は肩を竦めながらその質問を答えてあげる。
「簡単な話さ、俺はあいつ等に手を差し伸べた事を誰に何を、いや、本人にすら否定されようが後悔しないって決めているんだ。それによ・・・まあ、そういうことだ」
俺が濁した部分をテリアが首を傾げたがエルフの女性は羨ましそうな笑顔をこちらに向けているところ、どうやら伏せたのに何を伏せたかばれているようだ。
「そうですか、ルナさん達は幸せ者ですね。良い人と出会ったようです。すいません、話の腰を折ってしまいました。あの幻覚は貴方がここにいるに相応しい人物か見る為にさせて頂きました。勿論、合格です。こちらの想定以上なので花丸上げます」
近寄ってくるエルフの女性の姿にやや前屈みになっている(理由は察してやってください)俺に近づくと頭を抱き締めてくれる。
モロだよ?顔があの大きなオッパイに包まれる。しかもほとんど要所しか覆われてない服であって服じゃない格好だからほとんどダイレクト!
フィーバータイムに俺は興奮してしまい、我慢できずに顔をこすりつけてしまう。エルフの女性はキャっと言って慌てて離れていくのを見て自分の失策に気付いた。おとなしくしてたらもう少し至福の時間を得れたのにと・・・
少し驚いた顔をしたがクスクスと可愛い笑顔をみせてくれる。
「貴方はとてもヤンチャなんですね。男の子だからそれぐらいのほうが好ましいですが程々が大事ですよ?」
女の子はデリケートなんですからね?っとメッっとされて俺は恥ずかしさから頭を掻いた。
「そうそう、私の自己紹介がまだでした。私はミーステリラ。ミラと呼んでください」
男心を掴む会心の笑顔を見せつけて言った。
「では、初代勇者、和也の元へと案内します」
真面目な顔をすると俺とテリアの手を取ると俺達は再び光に包まれて渦に飲み込まれた。
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