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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
6章 運命の三叉路、それぞれの道
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95話 入った先で見たモノは

 俺はテリアの質問に答える答えはなく黙ったまま、神殿跡に近づく。テリアも俺の気持ちを察したのか黙って着いてくるが、落ち着かないのか、俺の服の背中の所を掴んだままであった。


 中に入るとシリアスな空気の中、女神像のオッパイを両手の指で突く俺を見たテリアが跳び蹴りかましてくるが、なんとなく予想が付いてたので避けた。


「さっきまでのシリアスな空気の中っ、よくあんな事でき・・・」


 テリアの背後から重低音の効いた石が擦れる音がすると振り返って絶句していた。


「えっと、今のが扉開く方法な訳っ?」


 頷く俺を見て頭を抱える。俺は悪くない。


「でも、この方法に気付いたの、トールでしょっ?」


 ジト目で俺を見てくるテリアの視線から遠ざかるように俺は開いた扉に向かった。うん、俺は悪くないよね?


 何度か来た場所だから迷いもなく目的地に辿り着く。

 扉を開けると当然のようにインプがいた。インプを見てテリアが身構えるが俺が手で制して、一応、敵じゃないと伝える。


「一応って酷いな。でもまあ、味方でもないよね、君の言う通りかもね」

「こちらから攻撃しない限りは何もしてこないだけで充分さ」


 俺は肩を竦めて流す。

 俺とインプのやり取りを見て、襲ってくる相手じゃないと理解したようでとりあえず、身構えを解くテリア。


「で、今日はいつものおふざけじゃなくて真面目な話があるようだね?」

「あれはあれで心血注いでいるつもりなんだぜ?」


 無駄な事にしか見えないけどねっとインプに失礼な事を言われる。

 で、何の用なの?っとニヤニヤした笑みを浮かべて聞いてくる。俺が言い難い事を言いに来て遠回りしているのに気付いたインプは答えに行きついている。

 思わず、カラスに手を添えそうになったが、思い留まる。俺は初代勇者の事になるとどうも導火線が短くなる。

 俺は一呼吸吐くと、インプに向き合い切り出す事にする。


「初代勇者に会いたい、どうしたらいい?」

「何いってるんだい?500年前の人が生きてる訳ないだろう?」


 からかってるつもりか、そういう流れなのか分からないがそう言ってくる。


「確かに、お前からも死んだと聞いたし、オルデールの記憶からもそうだと思える。が、加護を受けてたアイツが生きてても俺はおかしくないと思っている。現に2代目勇者は今も当時のままの姿で生きてるしな」


 クスクスと笑いながら俺を見るインプに再び言葉を重ねる。


「お前の思惑なのか初代勇者のなのかは分からないが、そろそろ引っ張るのはやめてくれないか?今の俺はそれほど我慢強くない」


 今度は本当にカラスに手を添えてインプを睨む。

 インプは降参とばかり両手を挙げると詫びてくる。


「ごめん、ごめん。君が今まで一番切羽詰まってる感じがしたから、ついからかってしまったよ。いいのかい?初代勇者に会いに行くという意味は僕は知ってるけど、場合によったら、いや、命を落とす可能性のほうが高いと思うよ?これはからかったり、騙してたりじゃなく、本当の事さ」

「だとしてもだ、正直な話、命の危険よりアイツに会わなければならないほうがストレスだ」


 クフフっとインプは笑うと本当に君は面白いねっと呟く。


「分かったよ。初代勇者との契約の1つに初代勇者の誘いを受けし者を送る異空間を指定されてたから行きは送ってあげるけど帰りは僕は知らないよ?」


 連れ戻す方法は僕は本当に知らないんだっと俺に言ってくるインプに嘘はなさそうだ。

 どうしようか?っていう段階は既に終えている。この段階で悩むぐらいだったらルナ達と別行動する考えまで行ってない。


「構わない。帰りはアイツになんとかさせるか、自分で帰ってくる。だから、インプ。あのクソ野郎のいる場所へ送ってくれ」

「ちょっと待ってっ。アンタ、本当に分かってるのっ?異空間なのよっ?帰る方法も調べないで行くって正気の沙汰じゃないわっ!」


 俺の心配をしてくれるテリアにちょっと驚きつつも嬉しかった俺はテリアの頭を撫でながら、感謝を告げる。


「テリア、もう俺はね。あいつ等を泣かせてまで前に進むと決めたんだ。強くなる可能性を自分の命をベットするだけで手に入れるチャンスが得れるなら迷いはないよ」


 こんなセリフを美紅に聞かれたら今度は一晩じゃなく1日中説教されそうだと思い、苦笑する。

 テリアは俺の瞳をじっと見つめ、俺の覚悟を読み取ろうとしてるかのように俺の思いを真摯に受け止めようとしていた。


「もうっ!分かったわよっ!私も着いて行くっ。まあ、最初から最後まで一緒にするつもりだったけど、アンタの賭けに私も乗ってあげるわっ!」

「おい、帰れるかどうかも分からないんだぞ?おとなしく待ってればいいじゃないか!」

「アンタは言ったわっ!なんとかするってだから私の事もなんとかしなさいっ、トール!」


 テリアの思い切り良さと気持ちの良い丸投げぷりに呆れた、がしかし、俺は今の言葉に力を貰った思いだ。

 自分でも抑えきれない衝動に突き動かされ、爆笑して廻りにいるテリアとインプを驚かし、笑いが収まると俺はおもむろにテリアの頭を抱く。


「良し、着いてこい!俺がなんとかしてやる。しっかり俺の生き様を見極めろよ」


 俺から見えるテリアの耳は真っ赤になって俺から逃れようと必死もがくのが面白くてしばらく抱き締めていると、思いっきり腕を噛まれる。


「イタタ、噛む事はないだろう?俺がふざけ過ぎたのは悪かったが・・・」


 俺を見つめるテリアがフッーと唸るのを見て過ぎたでは済まなかったようだと今、理解した。テリアは野生に帰ってられる!

 必死にテリアに理性を取り戻させようと四苦八苦する俺を見て、インプが楽しそうに言ってくる。


「本当に君は面白いね。で、改めて確認するけど本当に行くのかい?」

「ああ、勿論だ。二言はないさ」

「フゥー、え、あ、勿論、私も変えないわっ!」


 今の流れでテリアが帰ってきてくれた。本当に助かる。


 インプはもう聞き返しもしないで振り返って、カラスとアオツキがあった場所辺りに手を翳すと聞きとれない言葉を紡ぐ。

 すると、空中に光の渦といった感じなものが生まれる。


「さあ、これを潜れば初代勇者がいる世界へいけるよ」

「ああ、助かる」


 そう言うと俺は光の渦へと近づこうとした時にインプに声をかけられる。


「僕さ、君が時々、ここに来てくれて結構楽しかったんだよ。だからちゃんと帰ってくるんだよ?そして、また遊びにきておくれよ」

「勿論だ。だが、俺は遊びにきてたつもりはないぞ?」


 インプにクスクスと笑われて、手を振って見送られる。


 そして、俺とテリアは光の渦に飛び込んだ。



 飛び込んだ先はルナやフレイの記憶の中に良く似た白い世界であった。


「異空間ってのデフォってこうでないと駄目なのか?」


 廻りを見渡すが1点を除いて何も見つけられない。


「おい、クソ和也!いるならさっさと出てこいよ!」


 俺が叫ぶが音が跳ね返ってこないところを見るとかなり広い空間のようだ。

 チィっと舌打ちするがまったく反応らしきものがない。


 俺の様子を見てたテリアが俺の袖を引っ張って言ってくる。


「あの~明らかにアレを見ろって意味であそこにあるんじゃないのっ?」


 俺が必死に無視して進めようとしてる現実を突きつけてくるテリアにジト目を向けて、首を振る。


「もう既に最初で出落ちしてるような展開に食い付くのは悔しくないか?」

「べ、別に、いいんじゃないっ?話が早い事はっ?」


 どうやらテリアには理解できないようだ。

 分かってない。もう、いかにもフラグですという匂いがプンプンしてるのに敢えて最初にそれを選ぶ事は俺にはできない。例え、巨乳のお姉さんがビキニで誘惑してても無視する・・・のは無理でもガン見だけで我慢できるといいな~。


 仕方がないので近づくとどうやら看板のようだ。書かれてる文字を嫌々読んでみると日本語でこう書かれていた。


 『うぇるかむ~とおる!まさにここは、ごーとぅーへぶん~』


 俺は自分の額に血管が浮いたのを理解した。ヤツの仕業とは勿論気付いている。


「ふざけんなよ!こっちはマジでやってきてるんだ、このクソ野郎が!!」


 俺は怒りに任せて看板を蹴り抜くと廻りの景色が一変する。

 目の前にある建物はすごく見覚えがある。廻りに並ぶ屋台はいつもこの建物から出るとルナが食べたいとせがまれるのを回避するのにいつも必死だった場所だ。

 そう、そこはクラウドの冒険ギルドであった。


 辺りを見渡すと人が群がるように集まっている場所がある事に気付き、誘われるように近づいて行くとその先にいる人物を見て愕然とする。


「なんで、こんな事になってるんだ・・・」


 俺がそこで見たモノは・・・磔にされ、血だらけになっているルナと美紅の姿であった。

 明日、明後日のうちにキャラ紹介更新しますのでお待ちください。

 感想などありましたらよろしくお願いします。

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