8/72
008 ニューヨークで甚平を着る男
鬼崎喜三郎という男が70歳を超えても尚、現役のメジャーリーガーとして試合に出場できるのは日々の練習が要因となっていた。丁度、この時期にはアメリカのドキュメンタリー番組のディレクターが鬼崎を取材しているところで、鬼崎が70歳を超えても現役を続けられる理由をインタビュー形式で聞いているところだ。
アメリカの首都ニューヨークのマンションの最上階に部屋を借りている鬼崎だったが、部屋の中身は以外にも和風で統一されていた。アメリカに渡米した選手はどうしても異国の文化に体が慣れてしまってアメリカンな内装にしがちだが、鬼崎は家の中では靴を脱ぐし、帰ったら即着替えて甚平を着る程の男だった。