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古希の星  作者: 千路文也
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066  人間は万物の尺度


「ホームランなどワシは狙って打たんぞ」


「そんな訳ないでしょう。だったらどうやってホームラン打つのですか?」


「真芯に当たれば飛ぶんじゃ。当たれば」


 メジャーリーグでは若者が積極的にアドバイスを求めてくるので、日本球界でプレーするよりも遥かに若手選手とのコミュニケーションが円滑に行われていると彼等は錯覚していた。実を言えば鬼崎喜三郎はプレイスタイルは人それぞれ違うと思っているので、自分のアドバイスなど最終的には無視しても構わない姿勢なのだ。彼等がその真実に気が付くかどうかは不明ではあるが。気づかせるのも鬼崎の仕事なのかもしれない。


「それはあなたの場合でしょう。私は貴方みたいなレジェンドではありませんので、ホームランを狙って打たないと飛びません」


「ヒットの延長線がホームランという自覚を持っていないのか?」


「はいそうですね。それはない思います」


「お話しにならんの。そんな考え方じゃワシみたいに古希を迎えても野球は出来んぞ」


「私は40歳前後で引退して余生を楽しみたいです。貴方とは根本的に考え方が違うので」


「ああそうじゃな。絶対の真理などこの世にはない。意見が食い違うのも当たり前じゃ」


「しかしだからと言って……」


「討論を終えてはならぬ」


 お互いの意見を確かめるためにも、何かしらは言葉に出して伝える必要がある。メジャーリーグのみならず、あらゆる組織にも言える共通点だ。たとえ相手の意見が間違っていとしても、一度は胸に受け止める必要があるのだ。


「私にも漸く貴方という人が分かってきました」


「随分遅かったの。我々が出会ってからそれなりの日数は経ったのに」


「そうですね。ですが、まだまだ学ぶべき事はたくさんあるでしょう」


「ああ。お互いにの」


 人生、すなわち勉学なり。




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