二択
行くか、行かないか。
帰るか、帰らないか。
俺はあと1時間59分以内に決断しなければならない。
あぁ、俺ってこんなに優柔不断だったっけなぁ。
とりあえず、何もしなければ、俺は行く、帰らない、ことになる。
うん、そうだ。
もし何か行動すれば、俺は、行かない、帰る、ことになる。
俺はベッドに倒れこんでみた。が、何も変わらない。
あぁー、どうしよう。
俺はこういう時間が大嫌いだ。
そのクセ、こういう時間を過ごすことが多いのはなぜだ??
宏美の言葉を思い出す。
「マサは恐竜なのよ」
意味分からんねぇぞ?
「は?」
「恐竜って足を踏まれてから、しばらくしないと痛みが分からないでしょ。ほんとマサそっくり」
ちょっと待て。俺はそこまで鈍感ではないぞ?
「それはちょっと違うんじゃね?」
「違わないわよ。マサって物事を判断する時、ちゃんと考えてるようで考えてないのよ、自分のこと、これからのこと。いつも結果論だけで判断する。こうなったら、こうしよう、とか、こうじゃなかったら、こうしてみよう、とか、そういうこと全く考えないじゃない」
「そんなこと、いちいち考えてたら日が暮れちまうよ」
「そんなことない。私はいつも考えてるわよ」
そりゃぁお前は賢いからな。俺はお前みたいに計算高くないんだ。
「計算高くなれとかそういうこと言ってるんじゃないの。後悔するぐらいなら、もっとちゃんと考えてから行動しなさいってこと」
なんだこいつ。俺の心の声が聞こえるのか。女ってコワっ。
「わかったよ。ご忠告ありがとう」
「どういたしまして」
もしかすると、宏美の言っていたことは正しいのかもしれない。
ともすると・・・俺は恐竜!?
いや、そういうことじゃないよな。
恐竜みたいってことだ、うん。
時計を一瞥する。
2時23分。
しばらくすると俺は深い眠りに落ちていた。
夢の中で、俺は昔の友人、潤一と電話をしていた。
寝ぼけ眼で時計を見る。
4時44分。
あぁ、終わってしまった。
俺は行く、帰らない、という決断をした。
というよりも、そうせざるをえない状況になったからそうした。
あれ、これも宏美が言ってた結果論ってことなのか。
いや、違うよな。
これは必然なんだ。
いつの間にか床に落ちていた携帯を拾い上げる。
宏美から4回も着信があった。
俺はまた、恐竜と言われるのだろうか。