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唐突的レボリューション

作者: 唐突にごんぎつね

時系列も何もない唯のお遊びのようなお話の続きです、ちなみに

プロットなんかはありません。

 「そんなわけで……」

 現代社会における深窓の令嬢、そうそれを体現したかのような少女が今静かな憂いを近代風景を醸し出す街灯が爛々と輝いている景色の中で一人顔をのぞかせている、少女は一滴を涙を血も汗も努力も寄せ付ける事のない、あるのは季節特有の凍てつくほどの冷徹な寒さを伴った地面に落としながら世界に嘆く。

 彼女の嘆きは、世界に届くのか……届いてほしい……なぜなら彼女の様な純粋可憐な想いを持った人間が何かを訴えれば…きっと世界の叶う事のない願いを願望としたまま胸に秘め息を潜めていく子供一人の命が……一人の命が、一人でも救われていく、はずだから…。

 「て又ごまかしてるんじゃないよッ!!!」

 照りに照っている徹底的に輝冬の陽射しの中、年頃の様なそうでない様な二人は立っていた。

 一人は、ブスッとしたいかにも私のご機嫌シャープじゃありません表情をした女の子

 もう一人は、毅然憮然と七三分けに分けられた髪の毛をクルッと片手でクルクルさせながらニヒルに多少患っているような微笑みをどこかに向けている正直言ってなんだか不気味な男の子

 あ、失敬、失礼しました…てなわけで

 「いやいや、今更丁重丁寧にお口お上品に片手添えても聴こえてますよカロウ様ッ!!! 何さりげなく自分の事それほど良く言ってないからって僕ディスってるんですか…そんな配慮の仕方なら要りませんよ…」

 さてはて、そう、僕だ。

 誰が何といおうとシカウマ美味馬、僕である、馬刺しって美味しいよね、食べてみたい。

 あぁすまない、先ほどのも現在進行形のも全てカロウ様の語りだ、なにやら近頃独り言が多くてね、ムニャムニャムニャムニャほざいてやがる、まぁ可愛いけど、外付けHDDの容量足りなくなってきてるけども。

 で、語りに僕はなぜかなぜかしら毎日毎時間毎分毎秒常にツッコミを入れているわけの日々な訳だ。

 え? 日々とはいうが、お前らはあの事務所脱走事件(ネーミングセンスがない僕らはあの日の事をこう記名して呼称している、…とはいってもカロウ様はもはや忘却の彼方にあるようだけど)を乗り越えてどうしていたのかって? 説明すると片道5分くらいはかかるが、しょーじき片道5分程未満の説明なんて概要なんてあらすじなんて、この世において、まとめとも言えるかどうか怪しいくらいで、価値があるとも思えないので、具体的には片道5分くらいなので言わない、(…ホントの事言うなら、あの後カロウ様がコンビニを目指している途中で足をくじいてしまい、その後病院に行ってみるとそもそも骨折していることがわかり、ずっと入院していてようやく退院してきた丁度その日だなんて物語性の無いこと説明できない)

 「なぁなぁキロウ、何? どこを見ておるのじゃ? 上の空ばかりみておらぬで、現実じゃ正面見るのじゃ、そうしてこの私に供物を運んでくるのじゃ、要約するとそろそろお腹が空いたってなわけで…」

 僕が苦笑いを顔面に貼り付けながら静かに夏の陽射しを盛大に浴びモノローグしていると、隣から思いっきりスタートダッシュで邪魔をしてきたどこぞの女がまたしてもハザードしてくる、しらねーよ……。

 全く…なぜ僕のカロウ様に対する態度がこれほどまでに劣悪かつ劣化しているかというと、入院していた所為で、当たり前だが我ら経済的状況において非常に危険の淵に立たされているからである、いやまぁ具体的に説明する事無く分かると思うのだけれど、入院すれば入院費がかかる、ここで僕もツッコミも入れたいのだけど、自分自身に言いたいのだけど、保険が効かないのか? と…申請をしていないし、保険料の支払いという永久的恒久的安定的社会保障を出来るだけの甲斐性が我らにはない…のです。

 リアルすぎる事ばかり考えていても一向に僕の体を下から上まで灼熱の業火で焼き切る太陽光と足元をホットプレート空間に閉じ込められているくらいの温度で焦がすアスファルトの熱気は冷めやらないので、気分転換にそろそろハザード女に掛けてみようと思い、僕は目の前に広がっている何色か知らない他人が住んでいる家の壁面から右へ首を傾け、ハザード女別名カロウ様の方を向く。

 「いやいや……そのですねあのですねカロウ様…? 今の僕達のお財布状況御存知ですか? 知らないなら教えてあげたいですが教える事も不憫なのでやめておきますけど…敢えて柔軟性を含ませ優しく教えてみれば、マーリンショックが起こったころのマーリンブラザーズに巻き舌で嘲笑されるくらいの経済状況ですよ…全くいやはや枯れも乾きも出来ないくらいの問題だよ畜生…」

 僕が塩分をたっぷりと満たしたフェイスでうんざりした気持ちを周囲に纏わしながら早口でカロウ様に捲くし立てる、と言いたい所だけど捲くし立てることはせず一つ一つゆっくり言いたい事を並べていった。

 にしても… ジーワジーワ 蝉の鳴き声が様々な思いを孕んだ夏のアスファルトに反響し、テラテラと前述の何色か知らない他人の家の壁面に太陽が反射する、今日の気温は最高気温更新らしい、先ほどどこかの他人が住んでいる家に流れていたラジオの音声が漏れ聴こえラジオMCが言っていた、情報メディアはいつも聞きたくない情報ばかりをいち早く教えてくれる気がする、鬱陶しい、今も塩分たっぷりな液体が一滴、僕の足元から地に落下していく。

 実に気怠いなぁ身体中に染み付いた塩分を振り払おうとフルフルさせながら僕は自身の応えに対するカロウ様の応えを待つ、カロウ様は珍しく本当にアイムハングリーな状態のようで僕のお返事を理解するのに時間がかかっているみたいで…というかさっきから1歩も動いていない気がする大丈夫かな。

 心とは裏腹に、わざとらしくシンパイダーソングを隣で15秒程ハミング、おっと蝉達がフラリと途中下車してきた、なにやらオーケストラの開幕…。

 近所迷惑で苦情がペタ件来そうなくらいのハーモニーで異常気象によるストレスを解消していると、隣からようやくボイスが聞こえてきた、結構参ってる声音。

 「キロウォ…私はご飯を食べることが出来ないのか? 三食あるうちの一食も? おまんま食い上げなのか? おまんまお手上げなのか? いつまで私は手を虚空に上げていればいいのじゃ? 永久にっていわれると少々私も飢餓に苦しんじゃうってわけで…」

 カロウ様は、イカにもタコにも辛そうに世の世知辛さ全てを具現化したように全身を駆使して僕にお腹の虫の阿鼻叫喚さを訴訟してくる。

 カロウ様のそんな姿に僕はなんだか胸がドキンちゃんな域に達しそうだったけれどそんな場合ではない事は身にヒシヒシと感じているので今は胸をばいばいマンな域に達しておく。

 またしても、夏の暑さ、顔面に塩分を満たしながら僕は予め今後に対する自分の中での議論によるプロセスを終えていた事項を想起し直し、ベクトルに向け実行フェイズに移そうとカロウ様の方へ向き、今後の二人にとっての最善へと導くレボリューションプロジェクト第一項を告げんとばかりに…。

 僕は、僕らの後ろ、一軒のコンビニエンスストアの方に身体を回転し右手人差し指1本を―刺す。

 「カロウ様、ご覧ください、この近代芸術を模した建物を、まさにアートでしょう? 革命でしょう」

 自分でも訳の分からないことだけはわかりきっているわかり過ぎている戯言を嘘毎嘘毎嘯き、なにやら意味があるかのように含ませ大げさに左手の薬指までもコンビニに手刀を振る勢いで差しながら、僕はカロウ様を無理やりコンビニの方に意識を向けようとする。

 カロウ様は、こういう時は素直な良い人である、まぁ(単純な馬であり鹿である)とも言えるが、この際争いごとは大海へ流しておこう、大海流しちゃダメかな、僕ら蛙だもんなぁ。

 さてはて今や更年期に突入したおばあちゃん程にスローペースなカロウ様がこちらを向くまでの間、えーと30秒程の猶予が僕には残されている、とはいうもの、これからの事を僕は考えていたけれど、それは言葉通り考えていただけの話で、机上だけの話で妄や空で描かれただけの論議で、議決で。

 はてまて実行に移すのには、いささか不安要素が在りすぎて困る、まず何が困るって? このまま順調に行ってしまうのが困る、だってその先迄は考えていないのだから。

 でもいつでも予定はしていても予期していないことは起きてしまうのが世の常なのだから、何も考えてなくたって何も考えていないなりにラインが引かれるだろうか、自信はないけれど。

 炎天下今世紀最大最高の業火に眩暈を起こしそうになっていれば、ようやくカロウ様がこちらを向いた、所要時間、およそ2分、それもうちょっと早くした方が涼しくありませんか?

 「キロウ…さっきからどうしたのじゃ? ちょこまかと、なにやらコンビニとかいう横文字が聞こえてきたのじゃが、もしやそのコンビニ、為る物は、鳴る成る者は、今わしの目の前に沈しておる、その近代的芸術作品の様な物の事か? 奇怪な建物じゃなぁ、わざわざ『24時間営業』と誇張しおって、見栄を張るのも大概にせぇ人が一日稼働できるわけがあるまい鋼の心臓でも持っているのなら別じゃが」

 ミーン ミーン ツクツクホーシツクツクホーシ

 蝉のカルテット(四重奏)が斉唱を開始すると同時に僕の方へ口を開いたカロウ様の声は喧しい虫けらの雑音には負けておらず、なんとか聞こえていた、これはボケかな? 可愛い。

 カロウ様の久々の天然記念物並のボケを聞けたことで癒しを手に入れた僕は、着々と脳に矢印が弾かれていき、次へと示すレールも敷かれゴールが見えた、さすがカロウ様だぜ…。

 僕は脳裏によぎりによぎった想いをカロウ様に口々に唱える。

 「そうですカロウ様、コンビニエンスストアとは、カロウ様の今まさに目の前に沈している近代的建物のような物の事です、一日様々な物を売買しており休まる事を知りませんよって何時に来てもお客の欲しい物が手に入ります、素晴らしい建物でしょう? 例えばカロウ様が、夜中、誰しもが枕をあらゆる思いで濡らすか濡らすまいかとしている真夜中に失礼ながらアイスを食べたいなと感じたとしましょう、アイスが食べたい…アイスが食べたい、この夏の暑さの所為で乾ききった口の中をヒンヤリとした北極の様な極寒の潤いで満たしたい…そんないささか夜中に感じるには不謹慎と言っても良い程の衝動を思い切り心に体感してしまったとしましょう、…アイスが食べたい、だけどけれどけれどもこんな夜中にもはや救いの松明を燃やしてくれるお店などない…この世に女神なんていないのだ…僕は玄関を開け思い切り外へ飛び出してしまった…女神なんてマリアなんて、アイスなんて…どこにも無いのだと阿鼻しながら、だけどけれどだけれどそんな絶望的心に、絶望的な程の闇を示唆しすぎた瞳に一筋の光が、一匙の焔が…映り込んだ、僕は光に誤魔化され有耶無耶になりそうになってしまった瞬きを数回繰り返して、煌々と燃え光る物を眼前に捉えた…そう、そこにはこんな横文字が厳かにそれでいて幻想的に綴られていたのです…【CONVENIENCE STORE】と。あぁ申し訳ございません、少々この暑さの所為か柄にもなく熱くなってしまいまして…あの後僕は、闇に支配され暗さが蔓延し淀んだ目つきを振り払いながら燃え盛る炎の中へと足を踏み出しました、最初はびっくりしました、なんせ音がドアが自動で開き、ドアが自動で開いたかと思えば、人の理解の範疇を超える未知の領域、どこかからか音が鳴ったのですから…思わずあの時は眉間に皺を寄せてしまいましたね、さすがの僕でもあのファーストコンタクトの衝撃には全身の武者震いが収まりませんでしたよ、その後、僕はフラフラと生まれたての仔馬の様な足取りで、奮えを揮えをなんとか両手で抑制しながら冷え切った箱の前へ行き徐にドアを開きヒンヤリとした極上の例の目的物を手に掴んで、同じ同種族が仮初の笑顔をテクスチャとして顔面に張り付けながらなにやら見たこともない機械を毛頭、目にすら止まることを許してはくれないスピードで振っている場所へと向かい、内ポケットから取り出したガマから安定した声音を常時保っている機械の様な同種族に告げられた数の分の硬貨を取り出し覚束無い動作で手渡しした、するとなんだか白い物の様な物に入れられた目的物を返され、困惑し全身をきょどらせていた僕に同種族が今世紀の煩わしさ全てを具現化したかのような鬱陶しそうな目線を投げつけて来たから、そそくさと震えのあまり飛び立てる程になっていた足を動かして思いつきの如く本当に跳躍したかと錯覚するくらいの速さでその場を立ち去りましたっけねぇ…は⁉ いやいや、すいません途中から語りへとシフトしてしまいました、いやはやカロウ様、僕が我を忘れてしまうくらいに素晴らしいと言う事ですよアッ八ハハハハ」

 わざとらしく、ハニカミながらカロウ様にコンビニの方へ手を振り身振りしている僕は、多分おそらくきっとかっと今眼前にあるコンビニの利用者からすれば、真っ先にポケットに差さっているπphoneに2進数では唯一無二の数字を三ケタ即座に並べたいところだろうなぁ。

 僕の気候の所為で余計奇行に錯視変化していった語りをカロウ様は熱い熱いと片手で扇ぎながら流し聞いている、風と共に通り過ぎていそうで、怖い。

 けれどカロウ様の方を良く見てみると目だけはビッグバンを起こす前の惑星の様な輝きを秘めていたから、裏腹に心中はワクワクで支配されているのだろうとわかり、満足。

 あら、カロウ様がキョドっている、目をキョロキョロと180度、ギネス載れそうですね。こういう時のカロウ様が胸に秘している感情は予感するに予測するに、言いたい言はあるけどどう表現していいかわからない、という感情だ、さてはてまてはて、最果ての感情ラインの先に或るカロウ様の想いはなんだろうか。

 僕はフルフルと全身を水浴びを終えた飼い犬みたいに振動させて順繰りにカロウ様へと言葉を投げ掛ける

 「いやいや、カロウ様、どうかしましたか? 気になりますか? カロウ様の目の前に在している罪深い今世紀の若者の奮い全てを満載しているかのような建物に……。」

 カロウ様は、僕の言葉にチョコンと喋る事すらままならない5歳児を錯覚させる頷きを見せる、見せてからカロウ様は、やられやくやく口火を燃やしだす、不完全燃焼で終わりませんように。

 「てなわけで、、なんというのか…その、アレじゃ、キロウ…わしの目の前に据わっているあの流麗淡麗キラキラな建物に足を一歩踏み入れてみたいのじゃが、パカパカ勝手に開くわでなにやら怖い…だからじゃなぁ、なしていうか、ウマシカなのじゃなわけで!!!」

 多少拙く始まったイントロからグングンとユーロビートを想い起させる言葉の数々に圧巻しながら、やはりやっぱりもれなく収束点で沈火してしまった事に多少ショックを感じてしまった、はぁもうちょっとだったのになぁ、リードするしかないかな。

 僕は一点カロウ様に瞳を結んでちょっとだけ言の葉に水を汲む。

 「いやいや、自動ドアが怖いのですね、カロウ様、大丈夫です、僕と二人三脚では入りましょう、黒い制服と帽子は青い端末に3ケタを打ち込めば飛んでくる世知辛い組織が来ても逆らえる自信はありませんが」

 さぁて、口に潜む血液色の細長い舌をちょっぴり外出させて唇を舐めながら、僕はカロウ様が汲んだ水を溢さないかどうかと奇が奇がになる、熱くて。

 「そ、そうじゃそうじゃ、ちと恥ずかしいのじゃが花も恥じらうという奴じゃ!! お化けは怖くないが、開けば次元を超えるポケットは怖いのじゃ、未来は恐ろしいのぅキロウ、…今も暑くて恐ろしいわけで」

 一つの一つの言葉を連結させてカロウ様は僕に伝い伝える、息を切らしているカロウ様、吐息がエロシズム…熱さが吹き飛びますね。

 僕はカロウ様の言葉を受け取っていよいよ火を点けん。

 火を点ける前に口に流れ込んだ塩水をつばと同じ要領で飲み込む、しょっぱい。

 しょっぱさが甘い、なんだか甘い、とてもとっても。

 この時間がいつまでも未来永劫続けばいいのに、唯唾を飲み込むだけの微睡の中で俯瞰すれば日常から剥離乖離しすぎている宙想に身を委ねる、宙に浮かぶ想いは、いつしか形成を失い蒸発していくこの季節にピッタリな夢想じゃないか。

 盲目に心に忍ばせている想いが消し飛ぶ寸前に一気に飛ばす―

 「いーやいや、カロウ様、わかりましたよそうですね怖いですよね、あんなドア、少し近づくだけですぐに開くなんて、どれだけ尻軽なんだと言いたくなりますよ…怖い怖い、婚姻結んだ直後に他の男と浮気してこっちの貯蓄半分掻っ攫っていくタイプだよ…ホント怖い…悍ましい」

 あれ、カロウ様がこちらを、なんだか猜疑してくるような目で見てきたあの目はこう訴えている、『え、そこなの? それをここで言う為にお前は長い精神統一をしていたの? もしかして馬で鹿なの?』と…凄い、目は口ほどになんとやらというが、まさしくそれだ…あ、でも熱っぽいカロウ様の視線、夏の所為でもはや高熱っぽくて頭がどうにかなりそう、可愛い…。

 ふと日光でやられた頭を押さえようと手を上に挙げると、日射が目に入ってきてキラキラと現実には到底あるはずのない物が見え、身体が転倒しそうになる、不安定にユラユラと体が勝手に揺れる、今日は本当に熱いなぁ、何度目だろう、何度確認しても寒いに変わらない所に自然の厳しさを感じるなぁ。

 「はやはや…カロウ様、そんな目で見ないでください、わかりましたわかりました、そそくささっさと意の一番にあのドアを一緒に潜りましょうか、多分まだ明朝シックスタイム程ですし、深夜の汗臭いむさ苦しい客共を覗けば、僕達が最初の客の様な物でしょーし、潜りましょーか」

 太陽に付随する如く襲ってくる死さえ見せてきそうな死外線、紫外線、を右手掌で包み隠し目から逸らしながら、僕はカロウ様にカロウ様自身が聞きたい返事を返す、初めからこうやっておけばいいのかな、う~んでも、初めから優等生だと色々面白くないしなぁ、メディア的に。

 先ほどの猜疑の目はどこへやらという具合に僕の返事を聴覚して間隔もなく揮然輝いた目をこちらに向けてきた、周囲がジーワジーワ言ってるのに…やけに暑苦しい視線のレーザービームですねぇ、最高。

 「キロウキロウ!!! 話が分かるのぉ!!! 2分前になにやら気色の気持ちの悪い長文がなぜか同じ方向から耳に届いてきた気がするのじゃが、わしの幻聴だった様じゃ!! さすが夏の暑さなわけで!!!」

 通常運転の一秒単位で突き刺さってくる言葉の刃を、なんとか木綿にしておいた精神で耐えながら、僕はカロウ様の興奮した声音に幸喜の歓声をあげそうになりつつも、そろそろ正気へと無理やり意識を戻す。

 僕は一つ、カロウ様の手を取る、カロウ様も一つ、僕の手を取る。

 俯瞰したいが為に視点だけを宙へ飛ばして妄想、これがもし夜で、月の光でも差していれば…どれだけ美しい光景だろうか――頬に張り付いた微笑が止まらない

 「すまんがキロウ…わしの手、もしかして匂いでも漂うか? もしそうなら不満は季節アクト夏に申してくれるか? 言い訳をするようで悪いのじゃが…わしの所為じゃないのじゃ…なぜわしがこれを貴様に申すかというとなにやら表情筋が引き攣りすぎているわけで…」

 妄想の彼方へと飛んでいる僕の顔をカロウ様が怪訝な目で見つめてくる、どうしたんだろう、聴こえない何も聞こえない、なんだか匂う気はするけど、聞こえはしない…。

 「きーろーう、キロウ、おーいキロウ、どうしたのじゃ、わしの手を両方頂戴してくれたのはいいのじゃが、展開が一切進んでおらぬ…時間が惜しいのぅ…じゃから、そろそろ足の方を動かしてくれないかなと遠まわしに頼んでみているわけで」

 はっ?! カロウ様がいきなり僕の名を呼びながら、一瞬右手を離して離された右手を僕の左手甲にぶつけてきた、アレ、今僕は何をしているんだ? 僕は誰だろう、誰でしょう、わかんないな~夏の所為かな、あ、でも一つ分かることは、カロウ様が早くコンビニに行けと圧力を掛けてきている事だ、さっさと行くか。

 唐突の衝撃で意識が戻った僕は、カロウ様に再度掴まれた右手を幾度か見返し瞠ってからなんとか状況を把握して、昭和のガダムン張りにぎこちない動作で足を二人、連動させて動かしていく。

 「ぱやぱや、カロウ様!!!!! 向かいますよーあの昭和民が夢見た黄金都市ジパングと錯覚できそうなくらいに光輝いている、若者のユートピアへと!!! …なんか文脈おっかしーな…時代ジェネレーションが拮抗してる…どちらにしろ年寄は蚊帳の外かぁ…高齢化社会なのに、矛盾だねー」

 右へ左へ足を、見る分には4つずつ交互に動かして行く、何度も言うが、団地に一軒鎮座されているコンビニの前でこんなことをしている男女二人はさぞかし奇々怪々魑魅魍魎、怪しい怪しすぎる事だろう、街頭インタビューでもやっていたら、優先的にマイクで突撃されそうなレベルだろう、だから真実ならコンビニさっさといらん比喩唱えなくていいから入った方がいいのかもしれない、面白くないから、しないけど。

 全ての事には過程がある、過程があるからこそ成功がある物だ。

 順番順序をきちんと定め進めていくからこそ反対の出ない議決が出来る物だ。

 …多分、最近の世の中公に成っているこれらの物大体がアバウトな気がしているから、実はそうでもないのかもしれない。

 テクテクテクテク、黙考黙考、4つの脚は速度を同じにしてムーブメント。

 あと16歩程で、目的地に辿り着く、楽しみだ、カロウ様、どんな反応するかなぁ。

 「キロウ、そろそろか? わしの瞳に映る空間を把握して分析した結果によれば、あと30秒くらいで目的地に着く気がするのじゃ!! 合ってるのか? 合ってるのじゃな? 何かな何かな!! どんな場所かなっ! 正直言って心が躍ってる訳で!!!」

 息遣いを荒くしながらカロウ様は僕と同じスピードで同じ歩幅で歩みをシンクロさせる。

 口頭にも出している様にカロウ様は本当に無い胸を張ってしまうくらいに今の状況を楽しんでいる風貌を僕に魅せてくれる、塩分満載の水を全身から天真爛漫に弾き飛ばしながら。

 「あーやあや、カロウ様、そうーですね、あぁーいや、もう手を伸ばせば届きますね、ていうか着いちゃいました、あぁ着いちゃいました、どっちがドア開きます? あ、僕ですね、金属の取っ手みたいなの熱そうですもんね、冷えピタくらい貼ってあげればいいのに…可哀想な取っ手…」

 僕は握っていたカロウ様との右手のユニゾンを刹那解放させて、コンビニのゲートへと向かわせる。

 コンビニのゲートへと触れそうになった右手は、笑えるほどに数秒程で目的を失い虚空を彷徨う

 ―「あやや? あ、そういえば、自動ドアでしたね…紛らわしいな…単なる装飾かぁ」

 ふと思えば、僕が手を離した瞬間にカロウ様の目を見たら、あれ此奴は何をしておるのじゃ? みたいな主張をしていたなと思い返す、気付いていたのなら発言権行使しましょーよカロウ様、可愛いから許す!

 自身の抜けている間抜けな部分に嘆きの息すら呆れて排出されない、瞳に水は排出出来そうだけど。

 プランプランと目的を失った手は宙に弄ばれ力もなくだらしなく垂れ、寂しさを纏いそうになる、それを庇うように僕は三度カロウ様の右手との接続を求めたけれど、繋ごうとした瞬間、またしてもその手は宙に投げ出された。

 「キロウ、キロウ!!! あと1歩、あと1歩じゃぞ!! 残すところあと3秒程じゃああ、いくぞ? いくぞ? お前が行かずともわしは向かうのじゃ!!! ようやく、本編の始まりなわけで!!」

 虚しく再び投げ出された右手を見つめている僕を傍目に、左手さえ強引に引き離し突き進むカロウ様。

 腐乱した視線でカロウ様の脚に着眼点を当て充てていけば1歩又1歩粗雑に動かされる左右のテンポは厳かに確かにもはや開放されているコンビニ自動ドアへ踏み出す、

 ――いや、踏み出した

 いやいやカロウ様…そらそりゃないですよ、ここまで一緒に仲良く運動会の親子さながらなステップを駆けてきといて、ゴールインは一人で、とか有り得ませんよ…。

 「いやいやぁ!!! カロウ様ぁ待ってくださいよ、もぉ無いですってありえますぇっんて薄情すぎますよ!! 薄すぎですよぉ~~」


 …ここでバッサリと颯爽と心地よい涼風を纏いながら、とはいっても電子機器で操作されている社畜良風なんだが、私が区切らせてもらうんだが、とはいうもの、まぁたまたまバイトしている所に顔なじみの男女二人が騒がしく出動してきたから、柄ではないが興味もないが焦点でも当ててやろうと思っただけなんだが

 ―蝉のオーケストラが依然鳴り止まない炎天下アスファルト、二人の男女は、歴史に名を刻む偉大な名曲のイントロの様に多少遅すぎるテンポでようやくやくやく開幕へと至る、…男の方はもうあと1歩足りていないようだが。

 「キロウぉー遅いぞーーおおぉおなんじゃこれは、機械? 機械? わぁわぁ薬やらお菓子やらたくさん置いておるぞぉ~~わしはこんな風景初めてなわけで!!」

 女の方は、とうに感情のリミッターを外し思い想いのままに自由奔放

 男の方は、いまだに薄鈍い足を右へ左へ、あぁ至った。

 「い…やぁいやぁ…カロウ様ぁ…早すぎますって、え、僕が遅すぎる? そういう説も聞いたことあります、ただしオカルト経路で、あ、カロウ様、勝手に商品とっちゃだめですって!! あああ、こら豚まん頼まないでくださいよ!!」

 踏破到達した瞬間から、息からがらに女へ珍しい叱責の念を落としていく、男の顔は本当に焦燥している、よほど硬貨の枚数が足りていないらしい。

 さて、開始の合図が唱えられた、いつのまにか、男女二人は気付いていない。

 まぁ当たり前だろう、所詮は所謂この世の底辺エキストラの呟きだ、だが底辺が社会を守っているのだ、拾うべきが当然である、その開始の合図は、多少若気の至りを含んだ声音でこう告げられた。

 『ラッシャッセー』

 もし聞こえていたなら、首を切られそうなくらいお茶らけた招待ボイス、いささか力の抜けすぎている、やる気がなさすぎる…なんだかムカつくので、店員S、この国において『アレ、お前何人目?』と聞かれそうなくらいありふれている名『佐藤』と名付けてやろう、遠まわしな嫌がらせである。

 おい、ちょっと待て、そんな事より七面倒だが問うてやろう、お前は誰だ? だって? …どんな物語にも謎やミステリーや仕掛けが必要な物だ、カレーだってそうだろう? 辛くないとカレーではない、唯のハヤシライスだ、私はハヤシライスの方が好きだがな。

 「いやいや…アンタここで何してるんですかクロウさん、アンタは屋敷で大叔母のお世話を過去も未来も担ってるはずでしょー……はぁ…てカロウ様、この蒸し暑い日に肉まんて、まぁいいですけど」

 おっとっと? どこぞの春すら青そうなチェリーボーイらしき男が話し掛けて来たぞ? 馴れ馴れしいな、私は今、汗臭いドカタ共が汗臭い武装を構えながら無駄にデカい手で掻っ攫っていった商品の補充をしている途中なんだが? はぁ、ヤレヤレ近頃の若者は敬いという言葉を知らない、店員がいるからこそ取り持つ物がいるからこそ社会は円滑に潤滑に廻り回るというモノなんだが。

 「はやいや…ここでバイトしていらしたんですねクロウさん把握しました…門限には大人しく帰ってくださいよ? 貴方までいなくなると、さすがにお二人が可哀そうだ」

 小うるさい若造だ、ちなみに先ほど顔なじみとは言ったが、顔が馴染んでいるだけであって特に仲が良いというわけではない、唯のまだここで話すとフラグが回収されてしまう程の馴染みなだけである。

 若造二人は、今もキョロキョロと私のテリトリーを徘徊している、もうこいつ等が侵入してきて時間にして半程が過ぎた、それほど珍品はないんだが…。

 と…仕入商品の一つが床に落ちてしまった、私は腰を屈めて商品に手を伸ばし拾う、ヤレヤレ、今日も定時来ませんかね…今日は『マヨイガール☆メルメル』再放送があるというのに…アレはこの世に生まれてよかったと思える作品だ、一言で言い表すならば、哲学…ッ!!

 私はもはや何度繰り返されたかわからない洗脳に陥った様な体に染みついている動きを動作させつつ、今宵の宴に想いを寄せる、寄せては揺れる…私の思い…哲学ッ!!! なんだが?

 「おい店員よ、しっかりきっかりこっかり聞きたいことがあるわけで」

 虚空に向かってピースサインを向けながら一本結びの髪型をシェイプさせていると、男女の女の方がふてぶてしい態度で意図も狙いもなさそうな語彙要素さえ皆無な言葉を投げてきた、あぁこの女アレだな、さっきの男に教えてもらっていた「いやいや、お客様は神様なんですよカロウ様、ですから尊大な態度でよろしいのではないでしょうか、僕見たいですし」とさりげなさそうで全くさりげられてない本音剥き出しの言葉を真正面から捉えておりますね、ははぁ確かに尊大だ、両手を腰に当てて【えっへん】と幼児が自分より遥かに体躯のある物に対して強がる典型的なポーズを私の眼前でとっている、ふむ、確かにキューティーな物である、あぁちなみに私はこの女とも面識がある、だけどもそれを今又モノローグるればたちまちフラグブレイクとなりますから、今は耽りません、一つ言える事があるんだが、それは、この女は一切合財、フラグ建築地点から全く変化を示していない、純粋かつ澱みが一切ない、それが私の心眼にはとても不気味に思えてくるのだが、今の所浸れるのはそれだけである。

 女の言葉に対し、私は気だるげに空いている方の手を一振りしただけだ、それは悪意か邪意かもしれないのに、寸分の猜疑もせず女はまるで『了解したのだな』と当たり前の様に受け取っている、手前勝手そうな女だ、私には到底理解ができなさそうなんだが。

 「おい店員よ、お前の服装をわしも見に纏いたいのじゃが、それはどうすればいいのじゃ?」

 女は一ひねり首を傾げ、鬱陶しそうに僅かばかり目線を女の方に向けた私に問うてくる。

 私は寸、考えた、どういう意味だ? と、それはそうだろう、一言『同じ服装をしたい』といっても多種多様な意味がある、例えば私が真っ先に知識領域からサーチし思い当たった言葉は、コスプレという今やこの国で知らない者を探す方が難しいと私が勝手に思っている四文字である、だけど3秒経てから、はて違うなと至った、なぜなら、唯私が着衣している着衣物を着るだけなら、先ほどから魅せている尊大な態度を保ったまま他に良い様があったはずである、どうすればいい? 等と疑問の糸を張り巡らす必要がない、なので、私は今この瞬間、初めてこの女にボールを投げ返した

 「はて女、客か、それはどういう意味だ? もしかするとそれは、女が私と同等になりたい、ということか?」

 仕入れた商品の数量が逐次合っているかどうか点検票と見比べ確認しながら私は適当に糸が通った物のなから一つを通して女に質問返し。

 「そうじゃ、そうかそうか言い直してやろうではないか、お前と同じ服装を身に宿したい、そうじゃなぁ、デジタルスティックに横文字を並べてみようではあるまいか、えーとじゃな…あれ、なんじゃったっけ」

 思い出そうと考えあげるように女は両手を頭の周りでクルクルクルクル

 傍目に、朝のサイクルが終わりを告げた私は、早々とバックヤードに向かう用事があったのでおよそおそらく憶測確束女が導きだしたい欲している答えを啓示してやる。

 「女、もしかしてアレか? バイト…をしたい、と言っているのか?」

 実を言えば、私は女が私の周囲を当て所なく彷徨い始めた時点で、何か意図があり何かを謀ろうとしている親にねだる直前の子供の様な面影を女に重ね合せていた、そうして、この女が最後に唱えてくる言葉も大体は予想がついていた、予想や予測、憶測は思いついた時点で既に確信にすぎない、なぜなら根拠があるからこそ考えることが出来るのだから。

 だが私はその言葉を女から聞きたくはなかった、なぜかって? 人が増えると人件費がかかるからである、しかもこれも予測、憶測、に過ぎないが、この女が私と同じ服を纏う事と同時にこの女の周りにさっきも依然も寄生している七三分けの男も私と同じ服を身に纏いたい、いや纏う事となる…そんな人件費はうちにない、あぁでも、そうか、佐藤を首にすればいいかぁ、じゃあいいや。

 諦観気味に私は諦視の目を女に向けて女の次の言葉を待った。

 「バイト!!! そうじゃ、バイトがしたいのじゃっ!! 革命の第一歩なわけで!!!!」

 最後の言葉以外、ほぼ私の推測通りの女の言葉に少々嘆息しつつ、静かにレジの奥、バックヤードに向かうがやっぱりバックヤード前、レジの佐藤の前で立ち止まって、さも決められていたかのように予め用意されていたような言葉を残酷にも世知辛く静唱してからバックヤードへと戻り、溜息を吐く。

 その溜息は、唯の今の現状に対する物か、それともこれから起こるであろう忙しく推測も予測も観測したくない未来に対する物か、どちらにせよ、もう溜める暇はなさそうなんだが。

 バックヤードのパイプ椅子に座りコンビニ制服を脱ぎ自身の立場を再認識しながら、私は先ほど佐藤に吐いた言葉をもう一度吐く

 「佐藤…お前、首な…」

 私は、店長だ。

 

 炎天下アスファルト最高気温更新の夏の朝、プルルルルルと七三分けの男がどこかに端末で質疑。

 「いーやいや、あーそですそです、今から向いますんで、あぁクロウさん? 完全に他人のふりでお願いします、カロウ様の方は多分、覚えていないと思うので、はい、それでは」

 男は自身が崇拝している深窓の令嬢を遠目に見ながら、携帯端末片手にニヒルな笑みを浮かばせ、生温かい目で一人語っているやはり深窓の令嬢に向かって静かに一言、又呟いた。

 「カロウ様…もう少しですよ、革命のお時間は」

 

 

 

ここまで読んでくれた方に申し訳ない程行き当たりばったりのお話を描かせて頂きました、足元に一匙、革命を

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