運命の審査 ~後半~
レイズとリックが飛び去っていくと、屋上にいたリドとバリィは驚きの表情を隠せないでいた。
「は、ははっ…!アイツ、とうとうやりやがった!!」
バリィは自分の事のように喜んだ。
「だが、まだわからんぞ。レイズがきちんと時間内に戻ってくるかどうか…。」
雨風はいよいよ凄まじくなり、眼を開けていられないほどだった。
「リック!!大丈夫か!?」
レイズがそう聞くと、リックは返事をするように吼えた。
少しいくと、目的の山が見えてきた。
レイズは着陸しやすいポイントを探し、ゆっくりと下降していった。
「よし、あと二十分…。リック、急いで探そう!!」
レイズとリックは二手にわかれて、目的の鍵を探した。
五分ほど探していると、北側の斜面でリックが吼えた。
「どうしたリック!見つかったか?」
レイズが行ってみると、リックが口に小さな鍵をくわえていた。正真正銘、リドが見せたものと同じ鍵だった。
「偉いぞリック!!よし!帰ろう!!」
鍵を見つけ、二人が喜んで帰ろうとした、その時、
「―――――」
何かのおとがした。
レイズが音がした方向を見てみると、そこには、信じられない光景があった。
木々がなぎ倒され、巨大な岩と、泥の濁流と共にこちらに迫ってきている。
「土砂崩れだ!!」
レイズは必死にリックの背にまたがろうとした。が、この雨によって跳ねた泥で足が滑り、上手くまたがれない。
「くっそ………!!」
レイズはそう呟くや否や、リックの騎乗帯の金具をはずし、叫んだ。
「リック!!お前だけでも安全なところに逃げろ!!」
リックは突然の命令と、レイズの気迫に押され立ちすくんでしまった。
濁流はもう、すぐそこまで来ている。
「リック!!行け!!」
レイズがもう一度、そう叫ぶと、リックはようやく前翼を羽ばたかせ、舞い上がった。
それを確認したレイズが、濁流の来ない、脇道へ逃げようとした、その時――
龍のような濁流がレイズを飲み込んだ。
屋上では、リド、バリィ、サクラの三人が、心配そうに真っ暗な空を見つめていた。
「どうしたんだレイズ…。あと五分しかねぇぞ…。」
「リック君のスピードなら、少しくらい遅れても時間内には間に合うはずなんだけど………。」
三人が不安そうに、レイズとリックの帰りを待っていると、微かな羽音が聞こえた。
ハッとして三人が空を見上げると、雨の向こうに、ふらふらと飛んでくるリックの姿を見つけた。
「来た!!」
「残り二分!!っしゃぁ!!ギリギリセーフ!!」
バリィとサクラが喜んで跳び跳ねているなか、リドだけは、
「……レイズは何処だ?」
「え?」
三人が見守るなか、リックが屋上に降り立った、と言うより、墜落したといった方が表現が正しいのかもしれない。
リックは泥だらけの体で、屋上に滑り込んだ。
「……!?レイズ!!」
一番に気付いたのはバリィだった。
ぐったりと泥だらけで横たわっているリックの背には、血だらけのレイズの姿があった。
呼び掛けても反応がない。
「おい!救急班、急いで医務室に運べ!!早く!!」
リドがそう叫ぶと、傍らに控えていた救急班が、急いでレイズをリックの背から降ろし、医務室へ連れていった。
リックが不安そうに鳴いた。
「大丈夫…大丈夫よ。レイズはきっと大丈夫…!」
サクラがそう言うと、リックは安心したように眼を瞑った。
サクラは両手を胸の前で合わせた。
「レイズ………ッ!!」