運命の審査 ~前半~
とうとうレイズにとっては四回目、八月の昇格審査当日になった。
この日は朝から冷たい雨が降っていた。だが、予定通り昇格審査は始まった。
「受験者はこの黄色いバンダナを左腕に巻くこと。
……よし、まいたか?そしたら、受験番号一から五番までのやつは、俺についてこい。」
レイズはバリィから受け取ったバンダナを左腕に巻くと、緊張した面持ちで順番を待った。
レイズの番号は一五番。まだ時間がある。
聞こえるのは、降り続く雨の音と、ドラゴンの咆哮。それ以外、何も聞こえない。
その静けさが 逆に緊張を高めいく。
「大丈夫…大丈夫…。落ち着いて、いつも通りに……!」
だが、そう思えば思うほど、鼓動が早くなり、苦しくなってくる。
レイズが一人パニックに陥っていると、後からものが飛んできて、レイズの頭に当たった。
振り返ると、アミノが他の生徒の間から顔を出して、何かを伝えようとしていた。
『お・ち・つ・け・!』
それを見ると、次第に緊張がほぐれていった。
レイズは返事の代わりに、右手の親指をたて、上に突き上げた。
「受験番号十から一五番、前へ。」
遂にレイズの順番が回ってきた。
「レイズーーっ!!頑張れーー!!」
アミノが大きな声で叫んだ。
レイズは軽く後ろを振り返ると、にっ、と笑った。
降り続いていた雨は、次第に激しくなっていき、風も吹いてきた。
だが、それでも審査は続けられた。
「受験番号一五、レイズ・アルキル
パートナードラゴン名、リック。前へ。」
名を呼ばれたレイズは、屋上にいるリド、バリィ、サクラの前に歩みでた。
「レイズ・アルキルのドラゴンを此処へ。」
リドがそう指示すると、ドラゴン用の巨大な入り口から、口輪と鎖のついた首輪をはめたリックが連れられて出てきた。
「それでは、これよりレイズ・アルキルの昇格審査を開始する。」
リドがそう告げると、リックは鎖を引かれ、前に歩み出てきた。
そこで、レイズはリックの様子がおかしいことに気付いた。
首をブンブンと振ったり、前肢で顔を引っ掻いたりしていた。
――もしかして…
「ちょっ、レイズ何してんだよ!!」
レイズは「リック、ちょっと頭下げてくれ。」と言って、手を伸ばした。そして、リックの口輪に手をかけて、そのまま取り外した。
リックは口輪が外れると、嬉しそうにレイズの顔に頬を擦り付けた。
「……レイズ・アルキル、もう進めても?」
「あ、はいっ!!」
レイズが慌てて前を向くと、リドが審査内容の説明をした。
「これから自身のドラゴンと共に、向こうの山まで、私がこれから示すものを探してきてもらう。
騎乗帯も自分で装着すること。山に行って、帰ってくるまでの制限時間は三十分。それまでに戻ってこれなかった場合、問答無用で失格と見なす。宜しいか?」
レイズは頷くと騎乗帯を受け取り、リックに装着した。
「レイズ・アルキルに探してきてもらうのは、この鍵だ。山には幾つかの鍵があり、その中で本物は一つだけ。……それでは、始め!!」
「よし、……リック、いくぞ、飛べ!!」
レイズがそう言うと、リックは大きな咆哮をあげ、力強く羽ばたいた。
リックは強風と雨をものともせず、ぐんぐんスピードと高度を上げていった。
「レイズ!リック君を信じて、頑張ってね!」
途中、ダークドラゴンに乗ったサクラが待ち受けており、いつもの笑顔で励ました。
「ああ!!ありがとな!!」
レイズはサクラに向かって拳を高々と突き上げた。
レイズとリックは暴風雨の中、力強く進んでいった。