本当の気持ち
「え…、な、なんでわかるんスか…!?」
レイズが驚いてそう聞くと、サクラはにひっと笑って言った。
「だって、夕方あんなに小屋の前で悩んでた子が、カオスが見えたってゆう、たったそれだけで此処に来るとは思えないもん。」
レイズはサクラの言ったことが、あまりにも的を得ていたので、ポカン、とサクラを見詰めてしまった。
サクラはそんなレイズの様子を見て、言った。
「あのワイバーン君が、どうしてあんなに威嚇するか、知ってる?」
「え、…い、いや全然…。」
サクラは、やっぱり、と言うような顔をして、再びレイズに聞いた。
「君…もしかして、ドラゴンになにかトラウマでもあるの?」
それを聞いた瞬間、レイズの顔が強張った。
「言える範囲で…教えてくれないかな。」
サクラはそんなレイズの表情を見て、恐る恐る尋ねた。
レイズは消え入りそうな声で、ポツリポツリ話始めた。
「俺の親父が……、俺の、目の前で、ドラゴンに喰われたんだ…。俺が此処に入る一週間くらい前…。リックと同じ、ワイバーンだった。ほんとは此処に入るのも嫌だったけど……、親父と、約束してたから…。でも、やっぱりリック、ってゆうかワイバーンを見ると…怖くて……!」
最後の方は殆ど声がかすれ、聞き取りにくかったが、サクラは黙って聞いてくれた。そして、レイズが話終わると、
「ありがとう。これでやっと分かった。あたしに付いてきて。」
そう言って、レイズの手を引き、獣舎の方へ歩いていった。
サクラは獣舎に入り、リックの小屋の前に来ると、小屋の扉にてをかけた。
「お、おい!何すんだよ!!」
サクラはレイズの忠告を無視して、ガラッと思い切り小屋の扉を開けた。
中には、前翼を広げ、鋭い牙を剥き出しにして威嚇しているリックの姿があった。
「なんでこの子が今、こんなに怒ってるのか、分かる?」
サクラは、いつもの笑顔ではなく、真剣な表情でレイズに聞いた。
「え、お、俺らが急に入ってきたから…?」
「う~ん、惜しい。」
レイズは自分の思っていたことと違かったので、黙り混んでしまった。
そんなレイズの様子を見たサクラは、一つ質問をした。
「じゃあ…、君が夜寝てた時、いきなりあの食堂で君の前に座ってた子が入ってきたら…どう思う?」
「俺が…寝てたらアミノが…?
そりゃあ、寝てたんだから……、あっ!」
レイズが何かに気付いたように声を上げると、サクラはにこっと笑って、
「じゃあもう一つ。君が大好きな子がいるとするよ。君はその子のことが大好きなんだけど…その子に話し掛ける度に嫌そうな顔をされたら?」
「……まさか、リックは…」
サクラはリックの前に立って言った。
「今この子が威嚇しているのは、睡眠を邪魔されて怒ったから。誰だって寝てるところを邪魔されていい気分の人は居ないよね。
で、普段君を見るたび襲い掛かってくるのは、君のそのドラゴンに対する恐怖を感じ取っているから。
この子は君のことが嫌いなんじゃない。むしろ――」
レイズはサクラの次の一言に目を見張った。
「むしろ君のことが、大好きなんだよ。」
「ッ……!」
レイズはよろよろとリックに近付いていって、リックの足元に膝をついた。
「ごめ…っ、リック…ごめんな……!」
大粒の涙がレイズの頬を伝って落ちていく。
すると、リックがゆっくりと大きな温かい舌で、レイズの頬を舐めた。
レイズはそんなリックを優しく抱き締めると、我慢できずに大きな声で泣いた。
リックもレイズのことを、大きな前翼で包んだ。
空には、まだ満天の星が煌めいていた。