星空の夜
衝撃的な出来事があった夕食の時間も終わり、夜が更けた。
星が煌めき、空気の澄んだ夜中、レイズはコッソリと部屋を抜け出した。
昼にリリカが言ったことを思い出したのだ。
『ドラゴンクイーンにリック君と仲良くなる方法を教えてもらえばいいんですよ!!』
「そんな簡単にいくか……?」
そう思いながらもレイズは養成所の渡り廊下を、足音をたてないように歩いていた。
するとその時、物凄い突風が吹き荒れ、頭上を巨大な黒い影が横切っていった。
「まさか…“ダークドラゴン”!?」
レイズは慌てて影を追って走り出した。
ダークドラゴンが降り立った場所は、養成所の敷地にある広い森の開けた空間だった。
そこには、やはりサクラが居て、ダークドラゴンの頬を優しく撫でていた。
レイズは近くで見るダークドラゴンの迫力に圧倒されていたが、勇気を振り絞りサクラに近づいた。
「あの、……ドラゴンクイーン、ですよね…?」
レイズが近づいた瞬間ダークドラゴンがうなり声をあげ、威嚇してきた。
サクラはそんなダークドラゴンを宥めて、いつもの笑顔で、
「あ!!夕方会った、ワイバーンの子だよね!!こんばんは!!」
と、言った。
「あ、ど、ども…こんばんは…。」
「どうしたの?こんな夜中に。」
サクラは落ち着かないダークドラゴンを宥めながら言った。
「あ、いや、その…目が覚めちゃって外に出たら、ダークドラゴンが飛んでいくのが見えて…。」
サクラにリックと仲良くなる方法を聞きに来た、とは何故か言えず、咄嗟に思い付いたことを言ってしまった。
しかし、サクラは嬉しそうに笑って、
「そうなの?珍しい!普通の人なら怖がって近づきもしないのに!!この子は“カオス”って言うの!」
と、ダークドラゴンの名前を教えてくれた。
レイズは何度もサクラに話し掛けようとしたが、どうしても言葉が出てこない。
――仲良くなる方法なんて……どうやって聞いたらいいんだよ…!
一人悩んでいるレイズを見て、サクラは心配そうに聞いてきた。
「だ、大丈夫?具合悪いの?」
「あ、いやダイジョブっす!!ちょっとダークドラゴンに感動して…」
そう、レイズがまた嘘をつくと、サクラはちょっと怒ったような顔になって言った。
「君が此処に来たのは、そんなことじゃない。
あのワイバーン君のことでしょ?」