8.隣の住人
第二章スタートです!
これからも頑張ります!
どうしてこうなった?
なぜ隣に住んでるのが木崎なんだ?
俺は、こんなに巻き込まれる奴だったか?
「紅くん?」
「……ああ」
やはり木崎だ。木崎以外にあり得ねえ。でもあり得てほしい。
「えーと、今から説明、する?」
「………」
説明とはきっと昨日の出来事に関する事だろうな。だが今は…
…疲れた。
・・・
・・
・
「うーん♪紅、美味しいよ!」
「なかなかですね」
「舞さんの方が美味いだろ」
「でもなかなかの腕よ」
「助かる」
今日は部屋備え付けのキッチン(部屋の広さに関してはもうつっこまない事にした)で俺が料理を作った。これでも前々から一人暮らし必須スキル料理を練習してきたのだ。それなりに腕には覚えがある。
だが、それでもやっぱり他の人と食べるのはどこか特別だと思う。それが例え、“ほぼ初対面に近いような奴”でもな。
「というか、なぜ木崎と見知らぬ男がいる」
「ええ!?紅知らないの!?」
「まあまあ、紅はこういった事情に疎いですから」
…おい。
「そうね。それじゃ改めまして自己紹介するわね。私は木崎輝雪。よろしくね♪」
「木崎和也だ」
「こう見えて、双子の兄妹でーす♪」
ほほう、双子とな。だが、別段おかしいところ何て無さそうだが…。
「木崎くんはね、女子の間で今最も話題のイケメンさんなのだ!」
「男子からは女子の注目を浴びてるという事で敵視されて、そういった事に興味の無い人からは同情と憐れみを買っている不遇な男子なんだよ」
「…はぁー」
「そりゃまた」
「へぇー。紅は案外冷静だね」
「お前だってそうだろ。俺はただ単に似たような状況になったことがあるからだ」
「え?そうなの?」
おい、焔。
「忘れたとは言われねえ。焔、テメエが所構わず背中に乗っかってくるからモテない男の恨みを買って中学時代マジで闇討ちとかあったからな」
全部返り討ちにしたけどな。
「う…ごめん」
「まあ、焔もそういう所は気を付けた方がいいね」
「テメエもだ晶」
「…は?」
「別に気を付ける事の程でも無いが、お前も気安く手を繋いできたり、風邪を引いた時、看病するためにわざわざ休んだり。そのせいで女子生徒たちの間で変な噂立ったりして大変な思いしたんだぞ。前者は兎も角、後者はやり過ぎだ」
そして一時期女子生徒の間で流行った同人誌。幸か不幸か一度にして1ページだけ見たことがある。一瞬にして鳥肌立ち、寒気が襲ってきたさ。
内容?もう思い出したくもねえ。
「あはは♪あったねーそんな事も♪」
「…ごめん」
「…お前も、苦労してるんだな」
「…ああ」
この瞬間、俺と木崎兄、いや和也の間で何かが通じ合った。
「お前とは上手くやっていけそうだ」
「こちらこそ、だな」
俺たちは互いに手を強く握り合った。俺たちの間に確かな友情が生まれた。
「…私のこと、忘れてない?」
「「「「……あ」」」」
「ひっどーい!兎は寂しいと死んじゃうんだぞ!」
「お前が、兎?…はっ」
「お兄ちゃんマジで酷い!?」
「ユッキーは兎よりドーベルマンだね♪」
「ケルベロスだろ」
「お兄ちゃんはさっきから何!?そして火渡さんユッキーて何!?」
「日々の鬱憤を晴らしてるだけだ」
「輝雪の“雪”から取ってユッキーだよ~♪」
「お、それいいな。よろしくな、ユッキー」
「よろしくお願いしますねユッキー」
「ええーい!味方は居ないのか!」
「「「「………」」」」
「どうして気まずそうに目を反らすのよー!」
いや、だってなー?
俺は全員に目配せをする。…うん。皆の意思は同じのようだ。では、せーの!
「「「「その場の空気」」」」
「こんな空気読むなああああーーーーーーーーーーーーー!!!!」
・・・
・・
・
「ぜー、ぜー、」
「えーと、すまん、木崎。和也と焔とお前の絡みが予想以上に面白くて」
「すみません」
まあ、悪ノリしたこっちにも非があるよな。たとえ実行犯二人が満足気の顔でやりきったオーラ出してても、それにノッた俺たちも悪い。ここは素直に謝っておこう。
「…輝雪」
「「へ?」」
「輝雪。そう読んで。これから長い付き合いになりそうだし。ね、紅くん晶くん」
「…わかったよ。輝雪」
「輝雪、よろしくお願いしますね」
さて、これで何とかこの場は持った、な?
「何やってんだ?焔」
何かすっげー期待に満ちた目で輝雪を見ているが…?
「ああ、よろしくね、“火渡"さん♪」
ああ、そういうことか。
「も、もお~、焔でいいよ~」
「ええ、わかったわ“火渡”さん」
「えとー、焔って」
「よろしくね、“火渡”さん」
「……ごめんなさい。許してください。なので焔って読んで下さいユッキー」
「ええそうね。“火渡”さん」
すげー。全く変えようとしねえ。そして焔が段々、泣きそうになっていく。
「な、なあ。そろそろやめねえか?」
「却下よ」
「じゃあ、“ユッキー”ていうあだ名をやめればいいのか?」
「………!」
焔がまたも期待に満ちた目に。頼む、これで!
「彼女が今更呼び方を変えようと、私のトラウマを引きずり出した事に変わりは無いのよ」
「「「…は?」」」
おいおい、ちょっと待て。ユッキーに一体どんな秘密があるんだよ。
「…昔、ユッキーと言われていた女の子がいたわ。その子はね、成績優秀、運動能力抜群、家柄も良く、謙虚な心も持ち人当たりも良かった。先生からもかなり信頼されていて、その学校の生徒に限っては全員友達とも言える関係だったわ」
どこの超人だよ!ていうか、生徒全員と友達って、もう人の限界を超えてるだろ!?
「でもね、そんな彼女にも秘密があった」
「秘密…つまりそれが輝雪のトラウマ何だな?」
「ええ。彼女はね、とても」
ゴクリ。
思わず唾を飲み込む。ユッキーとやらに一体どんな秘密が?
俺は耳に意識を集中させる。
「すっごい、ドSだったのよ」
「「「………は?」」」
うん、ごめん。もっと凄いの想像してたからちょっとリアクションが…。
だけど輝雪だって歴戦の戦士だ。一体何をやったらトラウマになるんだ?だが、そんな疑問も次の言葉で解消される。
「出会い頭のパンチは日常茶飯事。途中からはドロップキック、投げナイフと変わったわね。投げナイフはあくまで手足とか致命傷にならないとこ狙ってたけど。
湖に沈められたりプールや海で水中に引きずり込まれた事もあったわ。
冬にかまくら作ってその中に入ったらいきなり崩され生き埋めにされたことも。
天井に吊るされたりトラップでのタライもあった「「「待て待て待てえええーーーーーーーーー!!!」」」何よ?」
「誰だよその悪魔!怖えよ!」
「一体何がその子をそこまで動かせるのか」
「ゆっ、ううん。ごめんね輝雪」
「わかってくれればいいのよ」
「うん!これからは絶対ユッキーて言わないようにするね!」
「是非そうして頂戴」
「じゃ、これから私たちは友達だね!よろしく輝雪!」
「よろしくね“火渡”さん」
「…」
うん。彼女はまだ許してないようだ。
「じゃ、そろそろ出るか」
「はーい♪じゃあね♪」
「おう」
「それでは」
「…バイバイ」
焔のテンションが低いのは…まあ、しょうがないだろ。
だが、和也と輝雪の訪問は話だけでは終わらなかった。
「あ、そうだ。紅、ちょっと来てくれないか?」
「俺?」
「大事な用だ」
…ああ、なるほど。そういう事か。
「え?何々。何を話すの?」
「紅だけ、という事は僕たちには聞かせれない話何ですか?」
「そうなの。ゴメンね」
「いえ、大丈夫です」
「む~」
「焔、落ち着けって。そんじゃ、行ってくる」
「うん。行ってらっしゃい」
さて、行くか。“あの世界”の事について聞きに。
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