78.紅速(コウソク)
「パズズ…俺、この戦いが終わったらケーキ作るんだ」
『いきなり死亡フラグ立てないでください!?』
「いや、露骨な死亡フラグって逆に生存フラグになるじゃん?」
『それで死んだら元も子もないって、前!前!』
「うわっとおおお!!」
烈の攻撃が鼻先を掠める。
「くくく、貴様の攻撃が我に届く事は一生無い…」
『さっきからフラグ建てて何がしたいんですか!?』
「露骨なフラグは回避できるぎゃああああああああああ!!!」
『ええええええええええ!?』
圧縮された水の弾丸が俺の腹部を貫く。
「っ〜〜!テメエ!」
『急にシリアスにならないでくださいます!?』
大剣の連撃を拳で弾く。が、手が…というより体全体が先ほどの津波のせいで上手く機能せず、思うように力を出せず、徐々に押されていく。
「上手く力が入らねえ…」
『エクス・ギアの場所もまだわからないのに…』
というか伏線も何も無いのにどこからヒントを出せば…。
…いや、待て。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「さっきから、うるせえよ!」
俺は最後の気力を振り絞り、自分を中心に風、いや小規模な台風を起こす。台風の目にいる俺はなんとも無いが、向かってくる烈は風に巻き込まれ上空へと巻き上げられる。
「パズズ!最後のチャンスだ!体力結構やばい!」
『わ、わかりました!』
「力を解放しろ!」
今の俺では扱いきれない、しかも今の体で使うのは自殺行為に近いが、一瞬持てばいい。それだけで、全てが済む…はずだ。
両足に風を出来る限り集める。
やがて、台風が止む。
「…行くぞ!」
落ちてくる烈の顔面を掴み集めた風を“全て”推進力に変え、全力で走る。
足に集めた風が爆発するかの如く吹き荒れ、地を割り、周りの建物さえも倒壊していく。
「行っけえええええ!」
「ギャルオ!?」
俺の手はしっかりと奴の顔面を掴んでいる。
俺が海の中で流れに逆らえなかったように、周りの景色が繋がって見えるくらいのスピードで生じている空気抵抗になす術もなく、烈も動けずにいた。
そして、烈から溢れていた“闇”さえも、置き去りにしていく。
「ここだ!!」
闇を全て置き去りにしたところで、今度は空中へと飛ぶ。そしてすぐに風の推進力を使い地面へと楽観する。
ドガアアアン、という破壊音と共に、地面が吹き飛ぶが、土煙は風ですぐに払拭され視界がクリアになる。
すぐに烈の体を見る。
「…見つけた!」
烈の使うポントスは海の神。決して闇ではない。
だからこそ、“闇が溢れるのはエクス・ギア本体のはずだ”。
原因である、エクス・ギア。
なら、闇の溢れている場所を探す必要があった。だが、断続的に溢れる闇の中から元を探すのは苦労する。
だからこそ、闇を引き剥がし、もう一度溢れさせた。
目論見通り、そこにはエクス・ギアがあった。
「ガアアアアアアアア!!」
烈の最後の抵抗。
だが、もう遅い!
エクス・ギアに向けて、放つ。
「突風の一撃!!」
空気を震わす衝撃が、エクス・ギアを粉砕した。




