71.計画通り
「ふんふ〜ん♪」
「嬉しそうだね、紅」
「あったりまえだ!あの蒼が、夢にまで見た兄離れ。最高じゃないか!」
時刻は昼。
焔、晶と共に昼食を食べているところ、朝の葉乃矢のメールを思い出し、晴れやかな気分でいた。
…頭の上でパズズが冷ややかな視線を浴びせているが。
「にしても蒼ちゃんがね〜」
「…ああ、そうだな」
…そういえば、この前の魔狩りでお嫁にいけないどうのとか言ってたよな。…その割にどうにも早く葉乃矢に乗り換えたなー。
「…なんか嫌な予感がする」
「え?」
「いや、俺が言うのもなんだが、切り替えが早過ぎる。何も起こらなきゃいいが…」
「…か、考え過ぎだよ!」
「紅、あまり嫌な事は考えない方がいいよ」
「まあ、そうだが」
その時、髪が引っ張られた。
「ニャー」
「んあ?パズズか」
うーむ。どうも俺に話したい事があるようだ。
…しょうがない。
「わり。ちょっと席外す」
「ん?いいよー」
「行ってらっしゃい」
そうして、人のいない場所へと移動した。
・・・
・・
・
「最低なクズ野郎ですねあなたは」
涙が出そうだ。
「あなたは蒼さんが嫌いなんですか?この前の魔狩りでなんかいろいろ恰好いいこと言ってましたけど、随分と切り替えが早いですね。あれですか?蒼さんに言ったのは口から出まかせだったんですか?」
「い、いや。だが、ずっと兄にべったりだった妹がさ、ついに兄離れで自立すんだぞ?いい事じゃないか」
「本当にそう思ってるんですか?」
「どういう意味だ」
「じゃあ、何で葉乃矢さんの護衛役を引き受けたんですか?」
「………」
「矛盾してますよ。妹を押し付けたいなら放っとけばいい」
「い、いや。ほら、葉乃矢は俺の日常に入ってて、それなりに意思を尊重というか…」
「妹が関わっただけで簡単に守る対象に入れるなんて、随分調子に乗ってますね」
返す言葉も無い。
「ふぅ。こんな男のために命かけるなんて何か嫌ですね」
「おーい。それはちょっと酷すぎないか?」
「自分の態度を見つめ直してから言ってください。全く…」
…まあ、正論っちゃあ正論なんだが。
だが、俺だって最近立て込んでるんだから、冗談でもいいから解放されたいと思ってもいいじゃないか。
「あなたはもう少し、妹さんを大切にしたらどうですか」
「はぁ?どういう意味だよ」
これに関しては本当にわからん。
「もう少し頭使ったらどうですか?」
「ん?んー…」
ダメだ。全然わからん。
「はぁ…。あのですね。力付くで葉乃矢さんを攫おうという人が、まさか連れ回してはい終わり、なんてなります?」
「…っ!」
「普通、もっと先まで行くでしょうね。処女も卒業するんじゃ無いですか?」
そこまで言われて、頭の中で何かが切れた。
「葉乃矢を死守だ!蒼にはまだ早過ぎる!!」
せめて結婚できる歳になってからだ!
…蒼は中三なので来年なればクリアする条件だが、気にしてはいけない。
「蒼!俺は絶対に認めないぞ!!」
「…あっちはあっちでブラコンですが、こっちも大概ですね」
パズズのセリフは耳に届かず、ただ一人使命感に燃えていた。
まあ、俺のことだが。
蒼side
「ふふっ」
「どうしたの蒼?」
「ああ、音音ちゃん。今度の休みがすっごく楽しみなだけー」
「?今度の休みに何かあるのかい?」
「ちょっとしたゲームかな」
「へぇ、そうなんだ。でも、ちょっとした、と言う割には随分と楽しそうじゃないか」
「うん!お兄ちゃんと、お兄ちゃん似の人と遊べる日だからね!」
「ああ、うんうん。あんたのブラコン度は知ってる。お兄ちゃん似…たしか葉乃矢さん、だっけ?」
「そうだよ!」
「随分やる気入ってるじゃないか」
「まねー♪」
さーて、と。こっちもいろいろ準備しなきゃ。
楽しませてね、お兄ちゃん、葉乃矢さん、そして、みんな。




