69.紅にまつわるいろいろ
「……多い」
前回、罰ゲームらしい罰ゲームでは無く、若干ほっとしたのだが、流石に四人分は大変だった。
「紅か?」
その時、声がかかる。
「ああ、和也か。早いな、こんな時間に」
現在は4時半だ。
和也は普段、6時ほどに起きる。
「ん、そうか?まあ、いろいろと報告が、な」
「報告?」
「いろいろだ」
まあ、最近いろいろあったからな。
「主にお前の事だがな」
「は?」
俺?
…何で?
「…おい。まさか自分がただの一般人だとでも思ってるのか」
「ただの一般的な魔狩りだと思ってるが」
違うのか?
「…はぁ。お前はもう少し自分の立場をよく知るべきだ」
「と言われてもな。…俺、なんかやったか?」
「誰にも心を開かなかったパズズとの契約。更には全部とは言わないものの、一部の力を使うだけの器がある。さらにお前の妹はマキナ・チャーチに狙われ、去り際にはお前の事を時の迷子などとよくわからん名称で読んでいた。マキナ・チャーチの報告など、わからない事だらけで逆に少ないからな、“いろいろ”の殆どがお前の事なのはある意味普通だ」
「すいませんでした」
なんか謝ってしまった。
反射的に謝ってしまった。
謝らなければいけないと思った。
「まあ、そういう事だ。…と、これを渡すのを忘れていたな」
「ん?」
手渡されたのはキャッシュカードと預金通帳。
「お前のだ」
「は?」
親からの仕送りもあるから、口座はあるが、二個も作った覚えは無い。
「魔狩りの報酬というものだ。魔狩りも慈善事業じゃない。きちんとした商売なんだよ。裏の、誰からも感謝される事も無い仕事だがな」
「で、金か」
「そういう事だ。まあ、その金をどう使うかは自由だが、考えろよ。学生の身分でいろいろ買うと怪しまれるし、金は使い過ぎると身を滅ぼす」
「おー」
とりあえずわくわくしながら通帳に振り込まれてる金額を確認。
まあ、人は誰しも金が入ると分かればそりゃあ、嬉しくもあるだろう。
だが、限度というのは必要だ。
「………」
パタン、と通帳を閉じ、一言。
「…見なかった事にするか」
学生が手にするには大き過ぎる金が、そこにはあった。
「…和也たとはどうしてんだ?」
「振り込まれてるのを確認して後は未来のために貯金…と言えば聞こえはいいが、実際はお前と同じで大き過ぎる金に困ってそのままだ」
「…そうか」
あ、じゃあ刀夜や冷華さんらへんはどうなんだろ。後で聞いてみっか。
「で、だ。紅、お願いがあるんだが」
「ん?どうした急に」
「ああ。良ければなんだが、俺の分のお弁当も作ってもらえるか?」
「………」
しばらく、アパート内での俺のあだ名が“お母さん”になるのは、また別のお話。




