68.激闘!七並べ
さてさて、皆さん。七並べというのを知っているでしょうか。
地域家庭によって、微妙なルールの違いはあると思う。
まず、四つの7のカードを中心に、順番に並べていく、というのが絶対外せない核だ。
で、何故七並べの話をしているか、気になった人もいるだろう。
まあ、言ってしまえば、気分転換というものだ。
「おー、おかえり。早かったね…て、ずぶ濡れじゃないか!?どうしたの紅!?」
「あー、まあ、いろいろ」
「話は後でするから、さあ着替えましょう」
後は着替えて事情説明。
「…そうだったんだ」
「ああ。雨の中、元気な奴らだ」
ついでに、陽桜烈については伏せた。
まあ、これはあまり晶や焔には聞かせたくないからな。
自己満足だとわかっていても、自分でけりを付けたい。
だが、幼馴染はそれだけで何かを察してしまったようだ。
「うん、そうだね。じゃあ何か気分転換しようか」
「じゃあ、トランプでもする?」
という流れで、
「私も」
「どっから出てきた!?」
九陰先輩も参加してきた。
で、
「じゃ、一抜けがビリに何でも要求出来るって事で」
どうしてこうなった。
・・・
・・
・
参加者四名
ルール説明
・基本的にはそのまま七並べのルールを使う
・ジョーカーは一枚で、それを自分の持っていないカードの場所に出した場合、持っている人が出しジョーカーを手札に加える。
・パスは三回まで。
・最後にジョーカーが残るか、パスを四回以上使った人の負け。
・一位は四位に何でも一つ命令できる。
・順番は俺、輝雪、九陰、晶だ。
以上だ。
では始めよう。
手札
♡3♡4♡6♡9♡J♡K♤4♢9♢10♢J♧5♧6♧8
…ふむ。
まず、♧5♧6をキープだな。二枚キープするのはジョーカー対策だ。
♧8もキープしておこう。
…くくく、♧は全て俺の手中にあるのだ。せいぜい苦しむがいい。
…キャラがおかしくなったな。
その上で俺が最初に出すのは…。
「これだ」
♡6。
♡3♡4があるから早めに♡5を出してもらいたい。
次は輝雪だ。
「……これね」
♤6。
まだまだ序盤だ。どんどん流していこう。
「……ん」
九陰先輩は♡8のようだ。
続いて晶は
「これだね」
♢6か。
一巡目
♤6♤7
♡6♡7♡8
♧7
♢6♢7
…これ、なかなかドキドキするぞ。罰ゲームもかかってる。
ビリだけは回避せねば!
「俺だな」
俺が出したのは♡9。
出せるものはどんどん出さなければ。パス一つでも地名的になりかねない!
「…ねえ皆」
ん?輝雪が。
「ジョーカー持ってるのは誰かな?」
「「「!!!」」」
ここで、仕掛けてくるだと!?
はっきり言えば、ジョーカーの所在はどうでもいいのだ。
“輝雪が言った事が”問題なのだ。
輝雪は演技の名人。無表情を務めていても、必ず暴露る。
この場合、手札の一枚が暴露た事が精神的に動揺させる。
これが問題だ。
勝負を焦れば、必ず負ける。
「……そう。なら私はこれ」
そう言って輝雪は♡5を出した。
「………私は」
次は九陰先輩の番だった…が、九陰先輩は何かに迷っている。
…動く、二巡目にして、場が動く。
「…これ」
九陰先輩が出したのは…ジョーカーだった。
「「っ!」」
俺と晶が息を飲む。
初っ端から動いた。
場所は、♢8。
「私よ」
そう言ったのは輝雪で、ジョーカーを手札に、場に♢8を出した。
「私の番終わり」
あ、アグレッシブだ。
気を抜いてたのか、晶が慌てて手札を見て、
「こ、これ!」
と出したのは♤8。
だが、失敗だな晶。そんな慌てて出したら後々大変になるぞ?
負けから一歩遠のき、ほくそ笑むのだった。
二巡目
♤6♤7♤8
♡6♡7♡8♡9
♢5♢6♢7♢8
♧7
「俺か」
そう言って、三巡目がスタートする。
「これだな」
俺が出したのは♢9だ。
幸いな事に、♢8のおかげで俺は♢9♢10♢Jというストックが出来た。余裕が出来たら♢Jをキープするのもいいかもしれない。
九陰様様だな。
「じゃ、あ、私は…」
ここで、一番注意すべき相手、輝雪が来る。
…どう動く。
「ここ♪」
なん…だと。
「て、テメエ」
「視線が動きすぎよ、紅くん」
視線だと!?
輝雪が出したのは♧8。
いや、♧8は俺が持っている。正確に言うなら…♧8の場所に、ジョーカー。
「くっ」
まさか♧6ではなく、♧8を狙ってくるとは予想外だ。しかも、これは俺に何の得も無い。せいぜいジョーカーが手札に来るだけだった。
俺は♧8を場に出し、変わりにジョーカーを手札に加えるのであった。
「…」
「…」
その瞬間だった。
輝雪と九陰先輩の視線が一瞬交差する。その意味するものはただ一つ。
…奴ら、同盟組やがった!
ドS過ぎるだろこいつら!
「じゃあ、パス」
そんな思考をよそに、九陰先輩はパス一回目を行うのだった。
これも、作戦か?
「じゃあ僕は」
晶が出すのは♧9。
晶は…ひとまず警戒しなくてもいいだろ。
三巡目
♤6♤7♤8
♡6♡7♡8♡9
♧7♧8♧9
♢5♢6♢7♢8♢9
四巡目だ。
俺がやることはただ一つ。時間稼ぎだ。
現在出せるのは♢10♢J。
打が、足りない。
だから俺は、これを切る!
「ここだ」
ジョーカーを♡5に。
これで、新たに♡4♡3が出せる。
勝てる、これなら勝てる!
「じゃ、私は」
そう言って輝雪は♤9だ。
「私はこれ」
九陰先輩は♧10を…。
ん?たしかあそこは、ジョーカーで俺が♧8を出し、晶が♧9を出したんだよな。
都合良く、九陰先輩の出すのを確保出来た?
…考えすぎだな。
「じゃあ、僕はこれ」
そして晶は♤10を出す。
四巡目
♤6♤7♤8♤9♤10
♡5♡6♡7♡8♡9
♧7♧8♧9♧10
♢5♢6♢7♢8♢9
ここからはしばらく流れるように進んで行く。
五巡目
俺→♢10
輝雪→♧J
九陰→♢4
晶→♧Q
六巡目
俺→♡4
輝雪→♤J
九陰→♢Jジョーカー→俺にジョーカー
晶→♤Q
七巡目
俺→♡3
輝雪→♤K
九陰→♢Q
晶→♧K
現在
♤6♤7♤8♤9♤10♤J♤Q♤K
♡3♡4♡5♡6♡7♡8♡9
♧7♧8♧9♧10♧J♧Q♧K
♢4♢5♢6♢7♢8♢9♢10♢J♢Q♢K
……やべえ。
現在俺の手札は
♤4♡J♡K♧5♧6ジョーカー
だ。
…どうする。まだジョーカーは早い…か?
「ちっ」
しょうがなく、♧6を場に出す。
「♪〜」
輝雪は♢3を出す。
「ん。パス」
九陰先輩はパス二回目だ。大丈夫か?
「じゃあ、はいこれ」
晶は♢2を出す。
八巡目にそのまま行く。
だが、
…どうする?
ジョーカーか?
それとも♧5か?
「っ」
ジョーカーの力は強い。まだ残すと決めて♧5を出す。
「え〜い♪」
輝雪は余裕で♢A。
「…ほ」
ほっとした様子の九陰先輩。
…しまった。
九陰先輩が出したのは…♧4だった。
ここでジョーカー出せば上手く行けば九陰先輩をパス四回でゲームオーバーに出来たかもしんねえのに!
「はい」
そんな葛藤を他所に、晶は♡2を出す。
八巡目
♤6♤7♤8♤9♤10♤J♤Q♤K
♡2♡3♡4♡5♡6♡7♡8♡9
♧4♧5♧6♧7♧8♧9♧10♧J♧Q♧K
♢A♢2♢3♢4♢5♢6♢7♢8♢9♢10♢J♢Q
さあ、いよいよ最終局面だ。
手札は
♤4♡J♡Kジョーカー
さあ、どう動く。
まず俺がジョーカーを♤5の場所に出す。
「あ、これ私」
輝雪が持っていたようだ。交換する。
「じゃ、私ね」
すかさず輝雪がまたジョーカーを出す。そこは…
「♤4」
俺の持つ手札だ。
「ん」
そこに九陰先輩が♡10を…うん?
「あれ?」
すかさず自分の手札確認。
♡J♡Kジョーカー
…や、やばい。
♡Jは俺が持ってるため置けない。
他は、…運が良ければ、ジョーカーは戻って来ない…かも。
そんな事やってる暇に晶が動く。
「これね」
晶が出したのは♧3。
「っ」
俺はもうジョーカーを出すしかない。場所は…勘を頼りに♤3。
「私〜♪」
「っ!!」
やばい。やばいやばいやばい。
「じゃ、ジョーカーね」
置いたのは…♡J。
やっぱり俺の手札知ってるううううううう!?
「ん」
♡Qは封じられた。
「はい」
晶は♧2を出す。
いっかい、整理しよう。
現在
♤3♤4♤5♤6♤7♤8♤9♤10♤J♤Q♤K
♡A♡2♡3♡4♡5♡6♡7♡8♡9♡10♡J♡Q
♧2♧3♧4♧5♧6♧7♧8♧9♧10♧J♧Q♧K
♢2♢3♢4♢5♢6♢7♢8♢8♢10♢J♢Q♢K
残りは
♤2♤A♡K♧A♢K♢Aジョーカー
計七枚。
俺のは
♡Kジョーカー
輝雪は一枚九陰先輩は三枚晶は一枚。
ルール、ジョーカーを最後に持ってたら負けというものから、つまり俺はここでジョーカーを出し、輝雪及び晶の手札を当てなければ、負けだ。
…どれだ。
…かくなる上は!
「♢K。誰が持ってる」
輝雪の真似。
多分、誰も動かないだろう。
だがいい。俺の目的は輝雪もやってた視線読みだ。
だが、ここで予想外の出来事が起こる。
「はーい!」
「はい」
輝雪と九陰先輩が動く。
しまった!予想済みだったか!
だが、晶という可能性も無くもない。
だが、
確信がある。
予感だでしかないが。
「輝雪、嘘つくな」
一瞬、ほんの一瞬だが、
“輝雪の体が揺れた”。
「…何を言ってるのよ」
言う反応も遅い。
つまり、これは輝雪が“嘘をついている”。
つまり、輝雪は♢Kを持っていない。
と、考えるのは素人だ。
輝雪は演技の達人。なら、“嘘をついている演技すら輝雪は出来る”!
つまり、答えは、
「♢Kだあああああああ!」
「ん。私」
九陰先輩が♢Kを見せる。
俺の負けが決定した。
・・・
・・
・
この後、輝雪が出して一抜け、九陰先輩がジョーカーで俺の手札の♡Kをジョーカーと交換させ、晶が出して二抜け。
枚数は九陰先輩の方が多いが、ルールによりジョーカーを持つ俺の負け。
順位は、
一位・輝雪
二位・晶
三位・九陰
ビリ・俺
となった。
…俺を慰めるために始めたのに、俺が罰ゲームってどうなんだろう。
「で、何を命令する気だ輝雪」
「じゃあじゃあ、たまにでいいから私の弁当も作ってよ」
「は?そんなんでいいの?」
少し拍子抜けだ。
「いいのいいの。九陰先輩も作ってもらうようになったんでしょ?私もたまには私や、お兄ちゃん以外の作る弁当食べたいしね」
「友達に貰えばいいだろ」
そっちの方が簡単だ。
だが、どこで地雷を踏んだのか、輝雪は暗い顔をして、言った。
「友達だからって信用できる程、私いい人じゃないの」
「……あー」
まあ、こいつの過去を聞けば、まあ、わかる気がする。
「…わかった。作ってやるよ」
「ほんと!?ありがと!」
「紅も大変」
「四人分かー。大変だね。頑張れ紅!」
そうか、俺もついに四人分も弁当を作るのか…。
「…俺、そこらの主婦より弁当作ってねえか?」
四人分。いわゆる四人家族。
まあ、それこそ親が共働きならの話だし、そうじゃないなら結局のとこ三人分だ。
子どもも小学校中学校は給食かもしれないし、そういうのを考慮しても、俺って結構な量作ってる気がする。
「「「気のせい」」」
そっかー。気のせいかー。
………て、
「んなわけ、あるかああああああああああああ!!!」
書くの…凄え疲れた。
気付いたら日を跨いでるし…。




