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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
ゴールデンウィークでの日常
53/248

52.実は何もしていない

「…何なんだよ、あれ」


とりあえず近場の建物に避難した俺たち。だが、俺はどうにも状況を掴めずにいた。


「何が?」


「いや、あの騎士的な何かだよ」


『ああ、そういえば言ってませんでしたね』


「そうなの?」


『そりゃねえぜパズズ』


「ちょっと!ちゃんと情報ぐらい教えなさいよね!」


…どうやら俺の知らない事はまだまだ沢山あるようだ。


「…ちょうど良い。今は(ジェネラル)もいないし、今のうちに必要な事は教えとく。他に伝えてない事があったら後々って事にして」


『すいません。本来は私がやっておくべき事なのですが』


『気にすんなって。先輩としていいとこ見せたいだけだろうしな』


白夜(ビャクヤ)、黙って」


『えぇ~。少しぐら』


「黙れ」


『うぃっす』


弱いな!?

それにしても、いいとこ見せたいって、案外可愛いとこあんのな。


「………」


何が気に入らないのか、(アオ)はずっと睨んでるが。


「じゃあ、基本中の基本。魔獣の種類について」


「魔獣に種類なんてあるのか?」


「ある。三種類」


「一つはあの騎士ですね?」


「そう。もう一つは(コウ)が知ってる」


「ああ、あの狼的なやつか」


「そんなのがいたんですか?」


「ああ。ビーム吐いたりしたな」


「いきなりの急展開!?」


「まあ、そこについても話す」


そう言って場を仕切り直す九陰(クイン)先輩。

…あれ?もう一種類は?


「まず一つ目は“獣型”。紅が初めて戦った魔獣」


「ふむふむ」


「特徴としては

・個々のステータスが高い。

・何かしら特殊能力持ち。

・単独での行動が多い。

・頭は個を保ちながらも滅茶苦茶の形のものが多い。

という感じ」


「特殊能力って?」


と、蒼。


「さっき紅が言ってたビームとか」


『まあ、そもそものステータスが高いからな獣型は。だから対して強い能力は持たねえし、ビームはそこまで厄介な能力でもねえ。…それでも充分強いんだがな。慣れれば雑魚だが、最初のうちは結構大変なんだぜ?』


へぇ。あれ強いんだ。…あれ?


「あれ、そんなに強かったか?」


結構簡単だった気が。


『当然じゃないですか。私の力ですよ?』


「違うよ!お兄ちゃんの力だよ!」


『と、言っておりますが?逃げ腰紅くん』


「………」


あの時の俺。

パズズを発見してエルボスへ→魔獣から逃げる。(パズズのフォローが無ければ死亡)→恐怖のち逃走→その後戻るが足が動かないという惨事。(パズズのフォローが無ければ死亡)→契約して魔獣撃破。(パズズより指示を仰ぐ。


「うがああああああああ!!!」


「お兄ちゃん!?」


何にも役立ってねえ!?


「更に言うなら、あなたが契約したと報告のあった日の魔獣は強さで言うなら結構あった。あなたが一瞬でも魔獣から逃げれたりしたのは、パズズがあらかじめ弱らせてたおかげ」


「ごふっ」


「もうやめて!お兄ちゃんのライフはもう0よ!」


情けねえ。マジで情けねえ。

あぁ、そういえば二回目の戦闘で結構コテンパンにされてたっけ。


「…進まないから無理矢理話戻す。次は“人型”」


「今の騎士っぽいあれだよね。ほら、お兄ちゃん!」


「お、おう」


『聞いとかないとまた足を引っ張るぜー』


「さあ来い!」


聞く姿勢はバッチリだ!


「特徴としては

・個々のステータスは高くないが代わりにムラも無い。

・集団行動が多い。

・知能がある。

・頭は人の形をしていて、そこまで大きくない。

という感じ」


「なるほど」


「つまり、さっき私たちを囲んだあれは“集団行動”と“知能”の部分によるものだね」


「その通り」


飲み込みが早過ぎる妹についていけない兄という現実に泣きそうだ。


「特殊能力は無いしステータスも低いけど、質より量で攻めてくる。ムラも無いからある意味厄介。頭は単体でも強いし、他の兵も従えてくる。厄介というのだったら一番かも」


なるほどなー。しかも知能持ち。厄介だな。


「で、…まあ、今は関係無いけど最後の一つが“変異型”」


『変異?』


俺と蒼の声が重なる。


「特徴としては

・雑魚。

・ただ雑魚。

・ひたすらに雑魚。

・頭が死んだ時必ず誰かが犠牲になる。

という感じ」


『意味がわからない!?』


雑魚って何!?


「見た目はジェル状でスライムのイメージ。力入れて踏めば一撃で消滅する雑魚。だけど頭を倒すと何故か回避不能の攻撃がランダムで誰かを襲い」


「死ぬのか!?」


「ぇえ!?」


不可避の攻撃で死ぬ。チート過ぎる!


「ううん。数日の間罰ゲームとしか言えない辱めを受ける」


「何じゃそりゃああああああああああ!!?」


「何だ。死なないのか」


勢いでオーバーリアクションしちまったが、どっちにしても訳がわからん。


「まあ、後々。とにかく今回は人型の魔獣。注意すべきは囲まれること。以上でいい?」


「わかった」


「うん。大丈夫」


とりあえず魔獣については大丈夫だな。…多分。


「じゃあ次。“力”について」


「“力”…」


「“神の力”とか言われてる。というのも、私たちの契約猫が最初の契約のさい神の名を言うから。紅の時もあったでしょう?」


「ああ。ボレアース、ノトス、ゼピュロス、エウロスだったな」


「たしかそれって神話でアネモイっていう風の神たちのことで、その中の主要な四柱の神様だよね。それぞれ東西南北の風を司ってるんだよね」


そういえば、ボレアースは北風、ノトスは南風、ゼピュロスは西風、エウロスは東風を司るとか言ってたっけ。


「パズズは特殊で本来一柱までしか得られない神様の名を四柱持っている。単純に言って力は通常の四倍と言える」


「そ、そんな強えのか?」


なんか和也たちの方が凄過ぎて比較出来ねえ。


『しょうがないです。普段は力を1/4に抑えてますから』


「おいこらちょっと待て」


信じるどうのとか聞いた気がするんだが。


『未熟なあなたに全力を注いだら大変な事になりますよ。一度やってみます?どうなるか保証しませんが』


「いや、でも前の頭戦で力を解放するとか言ってたじゃん」


『一時的にですし、あれでも1/2です。死にたいなら1/1でやってあげますが?』


「全力でお断りだ」


なんて話してるうちに、こほん、と咳払いが入る。

九陰先輩だ。どうやら話に熱中し過ぎてたようだ。


「続ける。中には他よりも力が弱い無名神もいる。クロとコクの“影”がそう」


「あれで…」


前に和也の戦闘を見た。

“強いらしい”獣型の魔獣の群れを単体で撃破していた。あれで、無名神。


「白夜の属性は“闇”。神は伊邪那美。かなり上位の神。かなり強い方」


どこが自慢気に無い胸を張って言う九陰先輩。


「あのー、本題は?」


「本題?」


今ので終わりじゃ無いの?


『あなたは馬鹿ですか?』


…最近、妹の登場で俺の馬鹿さ加減が露呈してる気が。


「うん。本題」


『属性の特徴と特性について、だな』


「特徴と特性?」


「そう。特徴は属性そのものに備わってるもので、特性は属性に対するイメージ」


「簡潔にお願いします」


「つまりねお兄ちゃん。特徴は属性による効果なんだよ。“炎”ならものを“燃やす”、みたいな、“当たり前”が特徴なの」


妹の方がちゃんと理解してる現状に泣きそうだ。


『特性は属性へのイメージです。例えば和也と輝雪の影なら特性は【複製(コピー)】と言えるでしょう。本物(オリジナル)には及ばずとも、複数の特性を使える。多分、影は“真似るもの”というイメージから来てるのでしょう』


そういえばパズズが和也の戦いを見たとき、切断やら振動を付加させて~とか言ってたな。


「うーん…何となくわかったけど、だったら九陰先輩の、というか白夜のは何だよ。属性は闇だっけ?」


『おう。特徴としては光を遮る、とかだな。目潰しとかに有効だ。あと特性は【特化】だ』


「【特化】?」


「そう【特化】。私は闇に対して“濃くなるもの”というイメージがある。だから私の指定したものを“濃くする”。腕力なら腕力が強くなる。視力なら物凄い遠くまで見通せる。原則としては一つの物体に一特化。対象が自分以外の生き物には掛けにくい」


つまり、先ほどの高速移動は速力、もしくは脚力を【特化】したということだな。

…あれ?


「じゃあ俺は?」


『それはあなたしか知りえませんよ、紅』


「つってもなー」


今まで風を言われた通りに操った記憶しか無い。


『じゃあ聞くぜ。お前は“風”と聞いて何を思った?』


「それがわかったら苦労しねえ」


『…そうだな』


「肝心な時に白夜は役立たない」


『おいこら!テメエのせいで俺の評価下がりまくりじゃねえか!責任取れ!』


「言っとけ」


さて、俺の、ていうかパズズの風の特性は何だ?

と、考えようとしたところだった。

ズズンッ、と揺れが襲う。


「何だ!?」


「…気付かれた」


「もう!?」


「多分、かなり大量の魔獣がここを崩壊させようと動いて」


そこで言葉は終わる。

九陰先輩の背後に、魔獣が現れたからだ。

「チッ!」


魔獣はすでに剣を振り下ろしていた。

九陰先輩は流石の反射神経で防御する。


「っ!」


反射的に体が動く。

九陰先輩の横を抜け、拳を突き出す。


突風(ガスト)一撃(・インパクト)!」


風が俺の拳から解き放たれ、その巨人の鉄槌のような衝撃は魔獣の鎧をひしゃげさせるのに十分だった。そのまま魔獣は勢いよく飛んでいく。

ドゴンッ!という音が響き渡り、ぶつかった壁も破壊した。

その時、鎧は完全に壊れ、魔獣は最後に存在していた証拠を残すように血を吹き出し、息絶えた。


「お兄ちゃん!どうするの!?」


「このまま下に行っても…」


…下はダメ。建物も崩れる。

だったら、もう一つしか手は無い。

両脇に女二人を抱える。


『ま、必然的にこうなりますよね』


『テメエ!丁重に扱えよ!』


猫二匹から声がかかり、九陰先輩も何となく予想してたのか特に反応は無い。


「え?お兄ちゃん?まさか?」


ただ、唯一ついさっきまで一般人だった蒼は、少なからず動揺する。


「大丈夫だ蒼。…お前も行けるだろ?生身で」


「そのぐらい評価してくれるのはありがたいけどどんなに人間離れキャラとして定着しつつあるからってこれでも私は普通の人間だからきゃああああああああああああああああ!?!?」


(まく)し立てる蒼を無視して俺は先ほど壊れた壁から外へと飛んだ。

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