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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
普通だった日常
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4.自分だけの◯◯

目前には巨大な狼。腕の中には怪我をした少女。街全体の風景は変わり、異世界に来たんじゃないか?とも思える状況。

あれ?これ詰んだ?

いやまだだ。こういうのには大抵専門家がいる。そいつが来るまで逃げれば俺の勝ち。考えろ紅紅!お前の頭は何のためにある!ここはとにかく…


「逃げの一手!」


さあ!あの夕日に向かって全力疾走だ!血の色だけどな!

…て、おおい!


「グォオオオーーーーーーーーー!!!」


「早!?」


て、普通に考えればそうだ。相手は狼の姿してるんだぜ?最高速度70kmで20分は走れる狩人(ハンター)だぜ?さしずめ、逃げてる俺はシカかヤギか。

そう考えてる内にもどんどん迫って来るーーーーーー!!!


「おわああーーーーーーーーーー!」


バシィイイーーーーーーン!!


「グルア!?」


な、何だ!?何が起きた!?狼が追いかけて来て、必死に逃げて、あと少しで追いつかれる所で何かが狼を吹き飛ばした!?ああ!いろいろ起きてわかんねえ!


「早く…走って」


「え?」


腕の中の少女が狼に手を向けていた。

まさか、この女の子がやったのか?


「今の私に…あなたを守る程の力…は、残って…無い。今のうちに早く」


「…えーい!どうにでもなれ!」


とにかく狭い所だ。あの巨体なら入ってこれまい!


・・・

・・


現在俺たちはマンションのような場所に身を隠していた。


「はあ、はあ、ここまで来たらもう大丈夫だろ」


随分と遠くまで走ってきたな。前々からこの体質のせいでいろんな事を目撃するたびに首突っ込んでは解決してたからな。俺ができる事を増やすためにも体鍛えてたんだ。このぐらいの移動は楽だな。100m10秒の俊足舐めんなよ!


「しばらくはここで、て、おい。あまり動くな」


「ダメ、なの」


「何がだ?」


「あなたが巻き込まれたのは私のせい」


「は?」


「あいつは私を狙ってる。そして、追跡もできる」


「…マジかよ」


「貴方には迷惑をかけられない。だから、ここまでありがとう。貴方は逃げて」


「逃げて、て。お前はどうすんだよ」


「…迎え討つ」


「やめとけよ。そんな体じゃ普通…」


そこで気付いた。どういう事だ?こいつの体、“治ってる”。

でもどうしてだ!?あの怪我は数分で回復するようなもんじゃ無かったぞ!?


「“普通”、ね。なら大丈夫」


女の子は含み笑いでこちらを見る。


「私は、“普通じゃ無い”、から」


「…え?」


その瞬間。立て続けにいろんな事が起こった。

まず、マンションが崩れた。


「んな!?」


「クッ!」


だが、女の子の体を中心に風が吹き荒れる。てか待て。この感覚はさっき狼を吹き飛ばした時と同じ?じゃあやっぱり、さっきの狼はこの女の子が?て、そんな事を考えてる場合じゃねえ!


「おわああああーーーーー!?!?」


とにかく上を見ろ!落下してくる物を全て見据えて避けるんだ!大丈夫、俺ならできる!


「て、できるかーーーーーーーーー!!!」


うん、無理。というか隙間が殆ど無い。


「こっち!」


「お、おお!」


俺が脳内でふざけてる間に女の子はすでに出口付近。うおおーーー!走れ!限界を超えろ!その瞬間、俺は風に…


「のあああーーーーーーー!?!?」


なれなかった!くそ鉄骨め!俺の加速が今までに無いくらい上がってたのに邪魔しやがって!


「危ない!」


「また!?」


鉄骨やらコンクリートの壁やらいろいろ落ちてきやがった。間に合わねえ!


「はあ!」


その時、女の子は手を動かした。

だけど、俺が外に出るのは叶わなそうだ。もうすぐ目の前までマンションの残骸が降って……


ドガシャアアアーーーーーーーーーン!!!


………あれ?死んでない?

よく見ると俺の周りで風が吹いていた。

…あの女の子のおかげか。

とにかく俺は立ち上がり周りを見渡すと


「早く逃げて!」


「は?」


ドガアアアーーーーーーーーーン!!!

状況説明しよう。“黒いビーム”が俺の近くに着弾した。俺か?まあ、何だ?吹き飛ばされたよ。見事に。


「ん……クソ…が」


痛え。そして怖え。目の前には俺を守ってくれてる女の子と対峙する狼。だが、俺の目には守ってくれてる女の子でさえもあの狼と戦えてるというだけで化物に見えた。


「……!」


逃げた。ただ逃げた。そこらの一一般人と変わらない反応を俺は行った。しょうがないだろ?俺は多少運動能力に優れてるだけだ。

俺はとにかく走った。もう女の子と狼との戦闘すら見れない所まで。


「はあ、はあ」


疲れた。しょうがない。俺があそこにいても足引っ張るだけ。いない方がいいに決まって……

俺は誰に言い訳してるんだ?…俺自身?何でだ?…罪悪感?でも女の子に逃げろって。…俺はただ、あの戦いにこれ以上関与して普通に戻れなくなるのを恐れただけだ。でも!俺は普通に戻りたい。こんな戦いなんてさっさと忘れて、普通の生活に……

“普通”て何だ?それは個人の価値観だろう?俺が今まで何気なく暮らした日常が俺にとっての“普通”。だが、あの女の子はきっと、この戦いながらの日常がきっと“普通”なんだ。

あの子は今までも、これからもきっと戦うんだ。


「……戻らねえと」


でなきゃ、俺は後悔する。いつもいろんな事に首突っ込んでんだ!今更引っ込んでいられるか!

さあ、タイトルの◯◯の中に入るのはなんでしょう?答え合わせは次の話の前書きで!

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