40.結局どうやったのか不明
さて。
「帰るか」
「そうね」
「この惨状を見てどうも思わないのかしら!?」
クロ。あまり喋るなよ。
「いやー、だってさー」
「そうよねー。だって」
『何で運動部が宙吊りになってるの?』
ここは運動部が気兼ね無く運動できる体育館。その遥か高みの天井には、人がその高さから落ちたら絶対死ぬような天井には、
部活中の筈の運動部が吊るされていた。
・・・
・・
・
「やーやー君たちは九陰組じゃないか」
「天下の九陰組は何の用で?」
「問題は解決しましたよ?」
「いや、現在進行形で問題が発生してると思うのだが」
このウザい三人組は、輝雪の情報だと青水先輩に選ばれた三人らしい。で、この状況を作り上げた張本人たち。
「ふっ、悪を成敗したまでさ」
「称えてもいい」
「正義は勝つのだよ」
…そうか。この世から正義は滅びたのか。
「というより和也は?」
「そうね。お兄ちゃんがいてもおかしくないはず」
ーー読んだかー。
どこからか声が反響して聞こえる。
「紅くん。上」
「上?」
天井に何…が………は?
「何をやってんだ!?」
「ああ、紅に輝雪か。ちょうど良い。手伝ってくれ」
いやいや、その前に和也よ。この三人もそうだが、どうやって天井まで行ったんだよ!?
「むっ!キサマ!何をやっている!」
「こいつらを落ろそうとしてるだけだが?」
字が違う気がする。
「何故だ!そいつらは悪だぞ!?」
「ちょっと待ってよ!この高さ、下手しなくても死ぬわよ!悪だ悪だ言ってるけど、どういう理由なのよ!」
最もな疑問だ。
そして知ることになる。こいつらの頭の残念さを。
「知れたこと!奴ら、我々にタメ口をきいたのだ!」
『はあ!?』
それだけ!?たったそれだけ!?
「あんたら!その程度であの高さに吊り下げるの!?頭おかしいわよ!」
「何を言う。当然の報いだろう」
「そうだそうだ!」
「和也ー。準備いいぞー」
「OKだ」
こいつらを相手にすると疲れそうだ。輝雪に任せよう。俺は和也の方を手伝うか。
「あんたら人殺しになりたいの!?」
「?キサマらの言いたい事がわからんな」
「頭は大丈夫か?」
「行ったぞー」
「オーライ…よっと!」
和也が落とし、俺がキャッチする。とりあえず一人。て、うわ。眠ってる。いや、眠らされてる、か。道理で叫んだりしないわけだ。
残る吊るされてる奴は5人か。少ないな。
「そもそも、他の人はどうしたのよ!」
「む?刑の執行に邪魔だから無理矢理帰したぞ」
「ギャーギャー喚くから強制送還だ」
「行くぞ。そらっ」
「おっとっと…よっ」
2人目。
というか、強制送還って。どうせただの暴力だろうに。
「そんな事が許されると思ってんの!?」
『当たり前だろう?』
「紅、行くぞ」
「OKOK。…キャッチ」
3人目。
というか、青水先輩はなぜこんなバカ3人を風紀委員に推薦したのだろう。
「あんたらバカじゃないの!?」
「青水先輩が言っていた。力こそ正義、と」
「我々は力が認められ、正義、風紀委員となった」
「つまり!我々の存在そのものが正義!イコールで、我々の行いも全て正義なのだ!」
「3、2、1、そら」
「ナイス」
4人目。
というかこいつら狂ってるな。青水先輩は見る目0だな。
「…へー。じゃあ、私があんたらボコボコにしたら、私が正義であんたらが悪なのよね?」
「無論だ。だが、万に一つもキサマのような娘が我々に勝てることなど…」
「御託はいいからさっさと来なさいよ雑魚が!」
「落とすなよ」
「落としてるのはお前だろっと」
5人目。次でラスト。
というか、輝雪がキレたか。
「倒れろ狂人!」
「くっ!キサマ!只者では無いな!」
「だが、我々の三角共鳴の前に敵は無い!」
「穴だらけよ雑魚が!」
「ふっ、我々はまだ本気を出してはいない!我が右腕、殺腕の前には全ての命が無に等しい!」
「そうだ!疾風脚について来れる者はこの世に存在しない!」
「いかにも!見通す目が見切れぬモノなど無い!」
「黙っとけ腐れ中二病があああああーーーーーーーー!!!」
「ラスト」
「りょーかい」
6人目。これで終わりか。
にしても中二病。中学の時にも何人かいたな。あそこまでクズじゃ無かったけど。一人一人が生き生きしてて、自分までなろうとは思わんけど、見てる分には楽しかったな。
にしても、正義、か。小学生の頃は“俺がこの町の人を守るんだ!”って息巻いてたな。今は、偽善者か。
と、考えてる間にも決着はついた。
「はっ、女子一人にも勝てないの?あんたらの正義はそんなもんなのね」
「…バカな。我の殺腕で死なない?」
「ただのパンチだったけどね。というか、死なないってどういうこと?殺す気だったの?」
「ぐっ、疾風脚に追いつかれた?」
「そこまで速く無かったし。人並みだったし。そもそも体力が持続して無かったから」
「見通す目で動きが読めないだと?」
「そもそも後ろに回り込んだ時点で私を見失ったわよね?」
…どうやら全員が狂っていて、尚且つ残念な頭の持ち主のようだ。
…めんどい。さっさと終わらせよう。
「おい、てめーら」
「…何のようだ」
ポチッとな。
『ふっ、悪を成敗したまでさ』
『称えてもいい』
『正義は勝つのだよ』
『というより和也は?』
『そうね。お兄ちゃんがいてもおかしくないはず』
『ーー読んだかー』
『紅くん。上』
『上?』
『何をやってんだ!?』
『ああ、紅に輝雪か。ちょうど良い。手伝ってくれ』
『むっ!キサマ!何をやっている!』
『こいつらを落ろそうとしてるだけだが?』
『何故だ!そいつらは悪だぞ!?』
『ちょっと待ってよ!この高さ、下手しなくても死ぬわよ!悪だ悪だ言ってるけど、どういう理由なのよ!』
『知れたこと!奴ら、我々にタメ口をきいたのだ!』
『はあ!?』
『あんたら!その程度であの高さに吊り下げるの!?頭おかしいわよ!』
『何を言う。当然の報いだろう』
『そうだそうだ!』
『あんたら人殺しになりたいの!?』
『?キサマらの言いたい事がわからんな』
『頭は大丈夫か?』
『そもそも、他の人はどうしたのよ!』
『む?刑の執行に邪魔だから無理矢理帰したぞ』
『ギャーギャー喚くから強制送還だ』
『そんな事が許されると思ってんの!?』
『当たり前だろう?』
『あんたらバカじゃないの!?』
『青水先輩が言っていた。力こそ正義、と』
『我々は力が認められ、正義、風紀委員となった』
『つまり!我々の存在そのものが正義!イコールで、我々の行いも全て正義なのだ!』
このぐらいか。
『…………………………』
「これと現状写真をセットして城之内先生に提出するから」
話を聞く気にもなれないのでさっさと職員室へ足を向ける。
『何時の間にいいいいーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?』
「よっと」
敵の弱味はいついかなる時でも必ず握っておく。妹の教えだった。
そんな状況で和也だけがマイペースにも、天井から落ちて着地するというかなり高度な技をやっていたのだった。




