28.食い違い、勘違い
目撃者side
その時は胸騒ぎがした。ただただ胸騒ぎがしたんだ。今動かなきゃ、手遅れになるような。そんな気がしたんだ。
俺には親友がいた。幼馴染では無い。中学の頃に転校してきた。家が近くで親同士の息が合った事から、付き合いが始まった。
そいつは女子だった。でも、女子とは思えないくらい言葉が乱暴だった。でも、根は優しくて、結構脆い部分もあったんだ。
今度はあいつがいつも1人でいる男子に声を掛けた。というか引っ張ってきた。「湿っぽいのよあんたは!」だってよ。自分で引っ張ってきたくせに酷いな、て思った。
でも、あいつも苦笑はするが、そこまで気を悪くするようなことは無かった。話してみると、以外と毒舌だったが話しやすかった。
いつもその3人で連んでた。ずっとずっと一緒だって思ってた。俺が守るんだ、て思ってた。
だが、そんな風に思っても、長くは続かなかった。
何か悲劇が起きたわけじゃない。逆に、悲劇が起きなさすぎた。いつしか、「酷い目には早々会わない」と思うようになっていた。
だけど、違った。
毎朝同じ時間、同じ道を通り、一緒に通ってた。だけど、今朝はみんなバラバラに行った。特に理由は無い。
教室に着くと、親友第二がいた。だけど、親友第一のあいつがいない。
あいつは自分が悪いと思った事には、たとえ酷い目に合うことが目に見えていてもそれを正そうとする。だから、今回も少し遅れてるだけだと思った。
HRにあいつは来なかった。
一時間目にも来なかった。
胸騒ぎがする。
俺は居ても立っても居られず、教室を出て探した。親友第二のあいつも探した。
もし不良に襲われたなら見つかりにくい場所だ。校舎裏と目星をつけ、探す。
その時、鈍い音が聞こえたんだ。殴った時の音だ。
すぐに音がする方向へ走る。その方向には、体育用具倉庫とは名ばかりの物置があった。
危険だと思った。だけど、この先にあいつがいると思うと抑えきれなかった。
意を決し、俺は扉を開けて叫ぶ。
「何やってんだコラアアアーーーーーー!」
そこにいたのは、見た目が不良の男子だった。だが、俺は知っていた。同じクラスであると同時に、こいつの近くには美少女が2人もいるため、認知度は高い。
紅 紅
さらに、紅は腕の中に誰かを抱えていた。
女子だ。しかも見覚えがあった。というのも、親友第一のあいつだった。
額から血を流していた。苦しそうだった。
それを確認した瞬間、俺は体が沸騰しそうなぐらい熱くなった。怒りを感じた。もしかして美少女2人も無理矢理自分の近くに置いてるんじゃないか、とさえ思った。
紅が目を大きく見開いていた。きっとここなら見つからないとでも思ってたんだろう。
「テメエエエエーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
猛然と殴りかかる。兎に角あいつを助けなければ、兎に角紅をぶちのめさなければ。そう思った。
「ちょちょちょ、ちょっと待て!」
酷く狼狽した様子で言っていた。だが、ちょうど良かった。あいつが本気になる前に倒す!
殴る、蹴る。この繰り返し。あいつには当たらないよう気をつけて攻撃をする。だが、あいつは全て避ける。
「話を聞け!」
「黙れ!」
いつしか俺の頭は冷えていた。だが、攻撃の手は緩めない。相手に考える隙を、逃げる隙を与えない。そうすれば、あいつが来る。
「先生こっちだ!」
「わかった!」
来た!歓喜だった。俺の、俺たちの勝ちだと思った。
「お前ら何をやってる!」
「先生!こいつが女子生徒に暴行を!」
「はあ!?」
紅が驚いている。は?何を言ってんだ?
「紅~。絶対いつかやると思ってたぞ~」
「ちょっと待て!?俺は何も」
「確保おおおーーーーー!!!」
「理不尽だあああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
あいつは紅の腕の中から離れる。急いで保健室へと運ぶ。
怪我は大したこと無かったようだ。安心した。
紅は生徒指導室に閉じ込められている。いい気味だと思った。
これで、やっとかいつも通りの日常を過ごせると思った。全て、良かったんだと、思った。
紅side
「あんたらさっさとここから出しなさいよ!」
……あれだな。神様が俺に「助けてやれよBOY!」とか言ってるんだよな。神死ね。
「うっせえんだよ!」
「うっ!」
ごすっ、と鈍い音が鳴る。……関わるな関わるな関わるな…。
「おい、こいつどうする?」
「裸にして学校に吊るしとけば?」
「お、いいねえー」
関わるな…
「こいつ処女かねえ?」
関わ
「だったらどうする?」
「決まってんだろ」
関
「い、嫌!来ないで!」
「げへへ…」
か
「嫌ああああああーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
…ブチッ
「何をやってんだ!」
あーあ、やっちゃった。
「ああ?んだテメエ」
「うっさい黙れ下衆」
「…お前1年だろ。何をのぼせ上がってんだよガキが!」
「ガキはお前もだろ」
「だ、誰?ぐっ」
不良の1人が女子生徒を殴る。よし、殺るか。
「てめえ黙ってろよ!」
「うっ…」
「…なあ、一つだけ間違い直してやるよ」
「ああ?」
と、不良が反応した時には俺はもう懐に入っている。
「のぼせ上がってるのは、お前らだろ?」
一撃。
「かはっ!?」
『なっ!?』
周りの奴が驚く。だが、それが命取りだ。
手前の奴の顎を撃ち抜き後ろからきた奴はハイキックで倒す。残ってた奴のパンチを受け流し、顔面に一発いれて、最後1人は肘で鳩尾を打ってやった。
「さっさとどっかに行け!目障りだ!」
『ひ、ひぃ~!!』
奴らは裏口から逃げて行った。…結構元気だな。
「と、その前に」
女子生徒に駆け寄る。縛られていたので解いてやる。
「大丈夫か?」
「…う」
意識が朦朧としてるな…早く保健室に
「何やってんだコラアアアーーーーーー!」
…厄介な。
扉の方を見ると男子生徒がいる。何やってんだって、見りゃわか………
見た目不良生徒の腕の中に頭から出血してる女子生徒。
「テメエエエエーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
やっぱりだ!こいつ、勘違いしてやがる!
「ちょちょちょ、ちょっと待て!」
今は授業中の筈だ。だとしたら、ここに居るのはこの女子生徒を捜しにきたから。そして、そいつは十中八九、こいつの関係者!
俺は男子生徒の攻撃を避けながら、必死に弁明しようとする。
「話を聞け!」
「黙れ!」
ですよね!そうなるよな!くそ!どうすれば
「先生こっちだ!」
「わかった!」
…詰んだ。
「お前ら何をやってる!」
「先生!こいつが女子生徒に暴行を!」
「はあ!?」
頭でわかっていても、やってないことを言われるのは悔しいよね。
「紅~。お前は絶対いつかやると思ってたぞ~」
「ちょっと待て!俺は何も」
「確保おおおーーーーー!!!」
「理不尽だあああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
やっぱり関わらなきゃよかった!絶対この先生PTAに訴えてやる!教育委員会に訴えてやる!
こうして、俺は生徒指導室に閉じ込められた。




