24.白木 刀夜①
突然だった。本当にとだった。
舞さんの部屋で話してたらズドォォオオンと、重々しい音が玄関前のホールから聞こえる。
「な、なんだあ!?」
「あらあらー。どうやら刀夜くんが帰ってきたようですー」
「あのー。刀夜さんって、帰ってくるたびに爆音出すんですか?」
「いえいえー。見ればわかりますよー」
いつもでは無いのに、出せば刀夜とわかる。どういうことだ?
・・・
・・
・
「…チッ!」
「死ね!」
これはどういう状況だ?
刀夜が逃げて、先程知り合った氷雨 紫が戦ってる。
「…どういうこと?」
「刀夜くんはですねー」
うわっ!いきなり現れたよ舞さん!?
晶と焔も驚いたようだ。
「冷華さんから好意を寄せられてるんですがー、妹の紫さんがそれをよく思ってなくー、よく喧嘩するんですよー。刀夜さんが大抵流す感じで終わらせるんですがー」
「先程の爆音は?」
「それはー」
ズドォォオオオンと音がなる。目の前で起きていたのは、
「蹴り?」
「はいー」
紫が蹴りを放ち、刀夜が避け、壁に当たる。
これが音の発生源だった。
「おかしいだろ!?」
物理的に。
「大丈夫ですよー。頑丈ですからー」
『そういう問題!?』
これは3人とも驚く。
「あれ?でも、僕たちが最初に見たのは刀夜さんと冷華さんが争ってる?」
「あ、そういえば」
あっちは何故、あんな展開に?
「あれはー、照れ隠しですー」
『ええ!?』
あれが!?
「というか、止めなくていいんですか!?」
「大丈夫ですよー。そろそろ終わりますからー」
『え?』
3人揃って疑問の声が揃ったとき、
「キャアアアアアアーーーーーーーーーーーーーー!!!」
刀夜は紫を投げ飛ばし、決着は付いたのだった。
・・・
・・
・
「…いい加減にしろ」
「嫌だ!お姉ちゃんは私が守るの!」
「…全く。…俺からは近づいて無いというのに」
なんか、いろいろ大変そうだな。
「あのー」
「…お前は…誰だ?」
焔が声をかけたところで刀夜はこちらに気付く。が、どうやら知らないようだ。
「は、初めまして。こちらに引っ越して来た火渡 焔です」
「氷野 晶です」
「…紅 紅」
俺の名前は知ってそうだが、一応。俺だけ言わないのもおかしいし。
「…そうか。…白木 刀夜だ。…っと!」
名前を言ったところでボールペンが下から刀夜目掛けて飛ぶ。まだ諦めて無いのか。
「りゃっ!」
紫はシャーペンの芯を投げる。おいおい、流石に無理だろ。
と、思ったのもつかの間、刀夜はそれを避けて、芯は壁にぶつかる。
「…刺さった?」
「刺さってます…」
「…なんで?」
あの~、凄技連発されてリアクションが追っつかないんですが…。
「それじゃー、止めて来ますねー」
舞さんが前へ出る。え?大丈夫なの?
「それまでー」
ピタッと動きを止める紫と刀夜。
舞さん、あなた何処まで凄いんですか…。
・・・
・・
・
「本当にごめんなさい」
「…もういい」
このやり取りが開始されれかれこれ10分。冷華さんが刀夜に謝っていた。
「でも…」
「…俺はもう行く」
「あ…」
刀夜は行ってしまった。
「あのー、いいんですか?」
「…うん。もともとこっちが悪いんだし」
「お姉ちゃんは悪くないよ!」
「悪いのはお前だもんな」
「う…」
というか、姉が謝ってる間、お前はずっと睨んでたろうが。
「うーん。どうする?紅、焔。一旦間を開けた方がいいと思うけど」
たしかになー。
「ううん。晶、ここは勢いだよ!」
『それはどうだろう』
「紅まで!?二人とも酷い!?」
でも、このまま引き下がるのもちょっとな。
「でしたらー、シュークリームを渡してきたらどうですかー?」
「ああ、いいですね」
「そうだな。それで行くか」
「判断早いよ!」
「置いてくぞー」
「わわわ!物理的な意味で置いてかれてる!?ちょっと待ってよー!」
ということで、シュークリームを渡して終わる事になった。
………無事に終わればいいなー。




