20.氷雨 冷華②
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現在、俺たちは冷華さんの部屋にお邪魔してる。緊張しっぱなしだった焔も落ち着き、俺と晶も、あの微笑みですっかり毒気を抜かれてしまった。
今は冷華さんと自己紹介を始めるところだった。
「えーと、じゃあ私から。火渡 焔です。紅と晶とは幼馴染で、好きなことは紅にぶら下がることです!」
「おいこら」
焔を小突く。こいつ、毎度毎度恥ずかしいんだからやめてくんねーかな。
「僕は氷野 晶。棍使えます。あと僕は男です」
「………」
冷華さんの目が大きく開く。やはり驚いたようだ。目に見えて落ち込む晶。
「最後は俺か。紅 紅だ。趣味は料理」
普通にこれで終わる。だが、これだけでも十分に反応があった。
「そう。あなたが…」
自分たちには無かった反応に焔と晶はこちらを見る。俺はそれを無視する。
「次は私ね。私はヒサ」
その時だった。
バタン!と音が響く。俺の本能が危険を察知しそこから素早く離れる。
ザクッという音が耳に届く。俺が先程居た場所を包丁が貫いていた。
『……………………』
一同唖然。扉の方を見ると一人の少女が立っていた。
冷華さんと同じ色の瞳に髪。瞳は軽くだがつり上がり、髪はセミショートヘア。いかにも活発そうな少女だった。
「……………れろ」
「……は?」
少女は何かを言っているが、声が小さ過ぎて何を言ってるかわからん。しばらくの沈黙のあと、少女はまるで親の仇を見るような目でこちらを睨みつけ
「お姉ちゃんから離れろおおおおおーーーーーーーーー!!!!」
服の袖からハサミとコンパスを出し、持つとこちらに特攻してくる!?
「危ねえ!?」
少女はコンパスの針をこちらに突き出し、目を狙う。俺がそれを避けると、今度はハサミで喉元を狙う。俺は顔を後ろへと動かし、間一髪で避ける。
…こいつ、俺を殺す気だ!
「くそ!俺が何をしたってんだよ!」
「お姉ちゃんに近づいた!」
「だからどうした!」
「どうせエロい事考えてたんでしょ!お姉ちゃんに近づく男はみんなそう!」
「考えるかあああああーーーーーーーーーーーーー!!!」
「嘘!?あんた!お姉ちゃんに魅力が無いって言うの!?万死に値する!」
理不尽過ぎる!?
「紫!いい加減にしなさい!」
紫て言うのか。
「わかった!今すぐ殺すね!」
発言がアウト過ぎる!?
さらに、紫と言う少女は、宣言した瞬間にスカートから何か落ち、それをこっちに蹴る。これは…!
「シャーペン!?」
見事にこちらに芯が刺さるように蹴り飛ばしやがった。こいつ、何てコントロールだ!
さらに追い打ちをかけるように、指に定規を挟み、どこぞの六爪流みたいに構え、攻撃を仕掛ける。蹴りも容赦無い。
「くそ!スカートのくせに普通に蹴ってきやがって!」
「下はスパッツだから気にしない!」
そういう問題なのか!?
「男はいつもお姉ちゃんを狙う!だから男は死ね!」
こいつ、極度のシスコンにして男嫌いか!なんて厄介な!
「だったら、俺以外にも男はいるだろ!」
氷野 晶。正真正銘の男だ。
「は?何処にいるのよ?つまんない嘘言ってるんじゃないわよ!」
…………………………。
「こんな可愛い“女の子二人”を自慢して連れ歩くようなハーレム野郎に、絶対お姉ちゃんはやらないんだから!」
こいつ、自分の墓穴に気付いて無え。
「あんたはこの“美少女二人”とイチャイチャしてればいいのよ!だからお姉ちゃんには近づく…」
その時だった。
ズガンッ、という音がした瞬間、紫の指に挟んでた定規は全部折れていた。その現象に紫は言う途中のセリフを止め、警戒する。
だが、残念ながらあいつが怒った時点で負けだ。
「だ・れ・が、女の子、だって?」
ビクッと体を震わし、紫は背後の晶を見る。
晶の言葉はとても静かだった。同時に、何の感情も感じ取る事ができない。一言一言が、まるで氷の刃のように、冷たさと恐怖を覚えさせる。
「え……あの…」
完全にビビってるな。俺でさえ逃げ出したい。
晶は何時の間にか装備してる棍を構えて言う。
「僕は………男だあああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
それが、晶の魂からの主張だった。
・・・
・・
・
「…………」ムスッ
「…………」ボロッ
晶の暴力が終わり、今は落ち着いていた。
「それじゃあ、改めて自己紹介。氷雨 冷華。好きなことは料理かな。よろしく」
そう言って微笑む冷華さん。うん。たしかにモテるだろうな。
「ほら、紫も」
「…氷雨 紫。好きな人はお姉ちゃん。嫌いなのはお姉ちゃんをたぶらかす男。得意なことは拷問」
これはこれは…俺の日常にヒビをいれるステータスの持ち主だこと。
問題は極度なシスコン。そして暴走癖。しかも、本気で殺しにくるところから見て、姉のためなら何でもやるだろうな。
「あ、そうだ!これどうぞ。私のお母さんが作ってくれたんです」
と言って、焔がシュークリームを渡す。すると、
「わー!シュークリームだ!ありがとー!」
一気に無邪気な子どもに大変身の紫。口元にクリームをつけながら食べる。
「わざわざありがとう。ほら、紫もお礼言いなさい。あと謝罪もね」
「う、うん。えと、シュークリームありがとう。あと、さっきはごめんね」
「いいえ。気にしてませんよ。今はね。昔から間違われることは多くて。慣れればいいんですけど、やっぱり抑えられなくて。こちらこそ、先ほどはすみませんでした」
「俺も別にいいよ。昔からトラックに引かれたり、鉄骨落ちて来たりなんか日常茶飯事だったし。でも、今後は勘弁してくれ」
「………晶さんはわかるけど、紅さんはどういう人生送ってるのさ」
どういうって言われてもな。俺自身が不幸に合ってるわけじゃないし、自分から首突っ込んでるだけだしな。
「他の人たちの所には行った?」
「いや、これからですけど」
敬語なれないな。
「そう。刀夜はまだ帰ってこないと思うから、先にクインちゃんの所に言った方がいいかも」
「クイン?」
「うん。一葉高校2年、風紀委員長。…気をつけてね」
何に気をつければいいのやら。
「ありがとうございます。それじゃ、お邪魔しました」
「ううん。こちらこそ、迷惑かけてごめんなさい」
「いえ。それでは」
「バイバイ紫ちゃん」
「バイバーイ!」
そして、俺たちは部屋を後にした。




