表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/248

197.軌跡

(楽しみだ)

(何度も繰り返した)

(同じ時を)

(何千、何万と)

(いつもと変わらぬ風景を眺めて来た)


 *


 思い出していた。

 今までの人生を。

 何気無い日々が幸せだった。

 何気無い日々を求めた。

 自分だけが被害者の気がしていた。


 *


(不思議な人間を見つけた)

(力も何も無い人間だった)

(だけど、少しだけ運命に好かれていた)

(僕はそんな人間に興味を持った)


 *


 自分が動けば世界が変わると思ってた。

 世界は変わった。

 だけど、それはそう見えただけだ。

 変わってなどいなかった。


 *


(今まで見たことのない人間だった)

(嫌々言いながら人を助けていた)

(そんなに嫌ならやめればいいのに)

(だけど彼はやめなかった)

(彼も満更ではなかった)

(その人間の成長が見たかった)


 *


 視野は広がった。

 世界が大きく見えた。

 特別に見えた。

 変われたと思った。

 進めると思った。

 しかし、世界は変わってなどいなかった。


 *


(舞台を整えた)

(登場人物を揃えた)

(物語を作った)

(だけどまだ足りない)

(ああ、そうだ)

(悲劇のヒロインを作ってあげよう)


 *


 力を手に入れた。

 仲間が出来た。

 環境が変わった。

 だけど、何か違う。

 俺の求めていたもの。

 それが何かがわからない。


 *


(物語は停滞していた)

(進展しない)

(だけど暇ではなかった)

(あの世界よりは面白い)

(作られるだけ作られて捨てられるような世界より)


 *


 そんな時、敵が現れた。

 明確な敵だ。

 倒すべき悪だ。

 そう思うと、何かが満たされた。

 これだ。

 これが、俺の求めていたものだ。


 *


(物語はついに動いた)

(ヒロインの死を乗り越えた主人公)

(相対するのは神)

(数々の戦いをくぐり抜けてきた先に待つラスボス)

(僕にこそ相応しい)


 *


 俺が望みは悲劇を生んだ。

 人一人守れない。

 俺はたくさんの人を傷付けた。

 俺の求めていたものとは何だったのか。

 心に闇が広がった。

 闇の中に光が差し込んだ。


 *


(ついに物語は佳境に入る)

(繰り返されたゲームもこれで終わり)

(後に待つのはエンディング)

(最後に残るのは神か、人か)

(僕か、君か)


 *


 大切な人に教わった。

 大切な心に教わった。

 大切な事に気付いた。

 大切な望みが分かった。

 大切な戦いが待っていた。


 *


(さあ、これで最後になることを願おう)

(盛大なフィナーレを用意しよう)


 *


 この戦いで最後にさせる。

 もう、繰り返させはしない。


 *


「最初で最後の決戦だ」

(最初で最後の決戦だ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ