196.次の戦場で
「ウェザー。少しいいですか」
「どうしたライ」
「戦争っていつやるんですかね」
「……あー」
たしかにそうだ。
マキナ様はこう言った事に対し、綿密な計画を立てることを嫌う。
行き当たりばったり。まさに“暇潰し”でしかない。
「マキナ様なら“相手が仕掛けてきたら強制収集するよ”と言っていたわ」
「ダークか。相変わらず無計画なお人……いや、神様か」
「いいじゃない。私たちはマキナ様に救われた。例え捨て駒であろうと残酷な運命が待っていようと、マキナ様を楽しませれるなら」
「まあマキナ様はあなたを苦手としてらっしゃいますがねー」
「なっ……!」
「おいライ」
これは事実だったりする。
ダークは良くも悪くも堅物だ。故に適当なマキナ様とはどこか合わない。
本人は気付いていなかったが。
話題を変えた方がいいな。ちょうど聞きたい事もあった。
「だが、いいのかダーク。戦いになればお前は妹と」
「構わないわ」
反応は早かった。
「……データによれば、お前は元々妹と仲が良かったんじゃないのか?」
「私はそんな綺麗な人間じゃない。私が九陰に優しかったのは、私より“劣ってた”からよ。私より劣ってたから私は優しく出来た。望まれた存在じゃ無いから優しく出来た。だって、自分より下の存在を優しくすれば、世間の目って結構優しくなるんだもの」
「くくっ……」
「何かしらライ」
「いえいえ。何にも」
ライの反応が腑に落ちないが、ダークの気持ちが理解出来ないわけではない。
まあ、私自身そんな状況になったことは無いため、あくまで“そうなんだろうな”程度でしかわからないが。
「さて、お喋りはお終い。今回は大戦よ。一人に百人付けて魔獣も野に放ちエルボスを壊されたら困る魔狩りをこちらに引き込んで戦うつもりよ」
「随分と豪華だな。だが、少しやり過ぎでは?」
「何を言ってるんですかウェザー。オーバーキルこそ戦闘の華でしょう。皮を剥がし肉を断ち骨を砕き血の華を宙に咲かせましょう」
「どこまでが嘘だ?」
「さあ、どこまでが嘘でしょう」
百パーセント本音だな。
こいつは平然と嘘をつくくせに、気分が昂ぶると本音がぽろっと出る。困ったものだ。
「……少々酷なものだ。これはあいつらに、“殺させることを前提”とさせた戦いだろう?」
「そうですねえ。学生の身で人殺しの業を背負うとは悲しいですねえ」
「本気でそう思うのか」
「さあ、どうでしょう?」
こっちは嘘か。
わかりやすいものだ。
「さて、ここでダラダラと時間を潰すのは得策では無い。どっちにしてもこっちは殺すのだ。関係無い」
「切り替えの早いものね」
「こうでなくてはマキナ様の元でやってられないよ」
「それもそうですね。なら、次の戦場で」
「ええ。次の戦場で」
「ああ。次の戦場で」




