194.テレビ
「それでは、あのテレビより分かったことをお伝えします。……が」
………………。
「冷華さんと刀夜さんのみってどういうことでしょう」
「……舞さんは交渉を粘り、他は特訓中で帰っていない」
「私は紫もいるし、アパートに残らなきゃいけないから。基本日帰りで、時に携帯で連絡取ったりして終わらせてるし」
きっとお兄ちゃんたちは干からびてゾンビのように帰ってくることだろう。
何とも微妙な発表会となった。
「まあ、二人だけにでもさっさと教えちゃおう。後でメール送ればいいしね」
「それもそうですね。と言っても、大した事は分からなかったんですがね」
マキナに関する情報は入らなかった。
マキナを取り巻く情報が、何と無く、ふわーっと分かっただけだ。
「……それでもいい。……教えてくれ」
「はい。では、あのテレビをバラして見たところ、部品が所々見たことの無い物でしたが、基本的にはこちらにもある部品でした。材質もこちらの物と変わりがありません」
「……なに?」
「他にも技術面も、こちらにあるものと酷似してる部分もあり、全体的に日本の製品と変わりがありません。進化版、とでも言うのでしょうか」
「私たちが分かった事はせいぜいこのぐらいなんだけど、この情報だけでもいろいろと推測を立てる事が出来たわ。その中でも一番あり得そうな推測を言うわ」
変わらない部品。
似通った技術。
未知、どころかとても身近なものだった。
「この推測はマキナがとにかく御都合主義の名の下にいることを前提とした推測です」
これは飛躍し過ぎた思考だ。
でも、これが一番あり得る、と思った。
「多分マキナがいたのはパラレルワールド、別の地球です」
「いきなりぶっ飛んでるだけど」
「いや、まあ。幾ら何でも、て思うけど、これが一番現実的何ですよ」
「……そう言われれば、納得せざる終えない」
ちゃんと受け入れてくれるひとで良かった。私なら、自分で出した結論でも無いのなら一笑してるところです。……自分で出した結論ですが。
「じゃあ続けますね。この事より、マキナは何かの目的で作られた文字通りの機会仕掛けの神です。神様ですからいろいろと超越してる筈です。少なくとも、枠に収まった力ではマキナとは戦えないでしょう」
「……枠に収まった力。……具体的にはどういうものを言うんだ? ……対抗手段はあるのか?」
「うんとね、マキナに関するものは全てパラレルワールドの地球のものだと考えているの。エクス・ギアだけじゃなく、猫たちやエルボス、魔獣もね。これらは全て、マキナと同じ星の元に作られたと思うわ」
「……猫たちもか」
「うん。だから多分、刀夜さんたちじゃ倒せない。ノーマルな存在だから」
泥棒猫が説明するが、私は少し笑ってしまう。
刀夜さんたちがノーマル。笑えない冗談だ。逆に笑えてしまう。
そして、ポイントなのが
「……俺たちじゃ無理?」
「うん。だから……倒せるのは多分紅だけ」
お兄ちゃんだけということだ。
「紅くんだけ? どういうこと?」
「お兄ちゃんは幾つかイレギュラーを抱えているんです。時の迷子という立場、月島 雪音の不死性、鬼化からの解放、そして現在特訓中の氣です」
「……たしかに、抱えているな」
「イレギュラー」
「その通り。お兄ちゃんはイレギュラーです。さらに、鬼化は何かしらお兄ちゃんとパズズの力を変化させたと思っても大丈夫なはずです」
「……何故だ?」
『オッドアイだから!!』
「そ、そう」
「……お、おう」
おっと。つい力が入ってしまった。
「まあ、以上がテレビから推測出来事です」
「役に立つかな?」
「……まあ、たったあれだけからよくもまあ、ここまで推測出来るな」
「凄い」
「推測ですのでどこまで合ってるかわかりませんけどね」
「……それでも、だ」
そう言ってもらえるとこっちも頑張った甲斐があるというものだ。
「……助かる。……後は、俺たちの仕事だ」
「任せて」
『頼みました!』
私と泥棒猫は力強く、そう返すのだった。




