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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
領土戦での日常
191/248

190.最後の戦い

 映像を見てる時は皆が何も喋らなかった。

 ただ黙って見続け、思考する。

 映像も終わり、部屋には沈黙が流れる。

 不可解。

 誰もが状況を飲み込めなかった。


「……これは、真実ですね?」


 その時、蒼がポツリと言った。


「……ああ。そうだ」


「じゃあその目は」


「俺の中でいろいろあってな。それでだ。ついでにこの首飾りもな」


「……そうですか」


 またも重苦しい空気が流れる。

 誰もがこの状況を理解しようとするが、一向に状況は動かない。

 だが、一人だけ耐えきれない者がいた。


「あー、もう! なにこの重苦しい空気!!」


 焔だった。


「とにかく紅! 私たちがさっき攻撃した理由わかってるの!」


「お、俺ぇ!?」


 いきなり話振られた!?


「……い、いや。わからん」


「また無茶したからだよ!!」


「無茶ってお前……」


「また暴れて! どうせ一人で突っ走ったんでしょ! どうしていつもいつもそんな事をするの!?」


「し、しなきゃいけない状況だからだよ!」


「それでこうなったんでしょ!? この映像見て、どれだけ私たちが心配したと思ってるの!? どれだけ私たちが……悲しいんで…………う、ぅく」


「ほ、焔?」


「う、うわああああああああああああああん!!!」


 突然泣き始めた。

 俺は何が何だかわからなかった。

 蒼は焔の背中を摩り、落ち着かせている。

 晶はそれを見て、交代するように喋る。


「紅。正直に言って」


「……何だ」


「月島 雪音は……死んだの?」


「っ!! なんで……知って」


 こいつらはあの場にいなかったはずだ。

 なのに、なぜ。


「映像を見た時、どこにも月島さんがいなかったからね。本当は捕まった可能性も考えたけど……その様子じゃ死んだみたいだね」


「………………ああ」


 まさか映像一つでここまで悟られてしまうとは。


「ねえ紅。まだ戦うの?」


 その声には、やめて欲しい、という意味が含まれていたと思う。

 元々は普通の学生だ。ここで降りても、誰も文句は言うまい。

 だけど……。

 俺は胸元の首飾りを強く握りしめ、答えた。


「まだやることがあるんだ。それが終わるまでは、俺はやめられない」


「それは本当に君がやるべきこと?」


「……俺の、か」


 正直、これは誰かが、という条件は無い。でも、誰かはやらなきゃいけないことだ。

 だったら後は、意志の問題だ。


「俺は俺の意志でこの戦いにいる。途中で投げ飛ばすわけにはいかない」


「紅。怖くはないの?」


「……怖いさ。誰だって死ぬのは怖い。……でも、月島は俺を庇って死んだ。俺がここに生きているのは、月島がいたからだ」


「……月島さんが。……そうか」


「ああ、まあな。だから、怖いし、辛いし、やめたいけど、俺はあいつのやり残した事をやりたい。例えそれが自己満足だと言われようとも」


(へえ。それが君の答えなのかい?)


『っ!!』


 突如として介入する声。

 未知の声だ。

 到底人のものとは思えない声だ。

 だが、俺は知らないはずなのに、知っていた。


「マキナ! テメエどこにいやがる!」


「マキナだと!?」


 記憶で見た。

 最後の記憶だ。

 俺にとっての分岐点。


(はは、久しぶり紅 紅)


「……テレビか。あと久しぶりじゃねえ」


(正解。そのテレビはエルボス製なんだよ)


 これか。

 薄々思ってたけど、やっぱあいつらのか。


(それでちょっと君の答えが聞きたくなってね。数々の試練を超えて強くなった君の答えをね)


 ……試練ってなんだろうか。そんなものを受けた覚えはない。


(人生は試練の連続さ)


「テメエに俺の人生を勝手に評価されたくねえなあ」


(そうかい? まあいいや。ああ、そうだ。時の回廊から見事抜け出した紅 紅にはなにかご褒美あげなきゃね。何がいい?)


 時の回廊ってまた新しいの出てきたな。だいたい意味はわかるけど。

 俺の高校入学から今に至るまでの期間の事だろう。

 そしてゴールは、俺の鬼化。

 俺は過去、何千何万と鬼化によるBADENDを繰り返した。それが今回、ついに抜けた。

 それの褒美か。


「まるでお前がゲームマスターみたいな言い方だな。マキナ」


(僕は御都合主義の神様さ。今回の出来事も、全部僕の暇つぶしさ)


 殺意が湧いた。

 こいつは今まで俺が過ごした期間を、ただの暇つぶしだと言った。

 殺したい。

 壊したい。

 奴という存在全てを消し去りたい。


 __違う。


「……じゃあ褒美とやらをもらっとこうか」


(……? いいよ。何がいい)


「俺の質問に答えろ」


(……ふーん。いいよ)


「あの世界からお前を消したらどうなる」


(……ふ、ふふ。ははははは! 僕を倒す気かい!? 面白いねー。はぁ、はぁ……ああ、質問に答えなきゃねー。答えは“YES”だ)


「そうか」


 それさえ聞ければ十分だ。


「じゃあな」


 俺はそのテレビを蹴り飛ばした。

 それを蒼が上へと跳ね上げた。

 トドメに晶が棍でテレビをぶち抜いた。


『よし』


『じゃねーよ!』


 その後めちゃくちゃ激怒された。


 *


(あっはっは! やっぱ最高だね彼!)


「私は輝雪ちゃん」


「マキナ! あいつは僕たちの獲物だよ!」


「獲物だよ!」


「九陰とやっとか決着が付けれる」


「危うく死にかけましたね……。白木 刀夜と氷雨 冷華、そして紅 紅は私の獲物です」


「欲張りですねーウェザー。私は木崎の双子でしょうか」


「……東雲 舞。次こそは必ず」


(皆もそれなりに戦いたい相手はいるんだね。とりあえず双子は復帰おめでとう。ウェザーもよく生きてたね)


「ありがとー」


「ありがとー」


「あれは油断しただけです」


「戦闘で油断するなんてバカのすること」


「ぐっ……ダーク」


「ふん」


「はい論破、ですね〜」


(あはは。これから一戦殺りあおうって言うのに余裕があって助かるよ)


「フレイムの仇は」


「絶対取るよ!」


(よろしい。じゃあ、最後の戦いだ)


 -第十一章・領土戦での日常〈完〉-

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