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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
領土戦での日常
182/248

181.二人の紅②

「さっきから攻撃の真似してんじゃねえ!」


「こっちのセリフだ!」


 拳に拳、蹴りに蹴り、技に技、同じ威力の攻撃が同じタイミングで放たれ二人の位置の中間で交差し続ける。


「拉致があかねえ!」


「そうだな」


 勝つ方法を模索する。

 どうすれば俺を倒せる?

 自分と全く同じ同一存在。

 どうすれば勝てる。


「じゃあ、ちょっと威力上げるか」


 黒い俺は、口の端をニィっと上げて、言った。


「何言ってんだ! 突風(ガスト)一撃(・インパクト)!」


突風(ガスト)一撃(・インパクト)


 今までと全く同じだった。何一つ変わらない。

 同じ風を纏った、同じ威力の拳__


「がっ!?」


「どうした? その程度か」


 ではなかった。

 拳が交差したとき、俺の方が吹き飛ばされた。

 どうなってんだ。


「どうなってんだ。そんな顔してるぜ」


「………………」


「言っとくが、はいはいテンプレテンプレでお前に教えるような真似はしねえぞ。俺はお前なんだから、お前は俺なんだから、お前も考えりゃあわかるって。……だがまあ」


「っ!」


「考える暇なんぞ与ねえけどなあ!」


 嵐。

 まるで嵐だ。

 風を纏った手足は、攻撃の度に吹き荒れ、俺の行動を制限する。


「どうした! そんな調子じゃあ、この“知ってるのと知らないのと”の差は埋められねえぞ!」


「うっせえ! 今考えてんだよ!」


「避けるのに必死なくせによく言うぜ!」


 たしかに俺は避けるのに必死だ。

 だが、ただやられているわけじゃあない。

 というより、この状況はある意味好都合とも言える。

 “均衡が崩れた”。

 悪い意味に聞こえるが、そうでもない。

 強い者と弱い者に別れ、そして、弱い者には弱い者なりの戦い方がある!


「くらえ!」


「ぐっ……」


 俺は黒い俺の攻撃をくらい、怯む。


「こいつで、終わりだ!」


 そこに、トドメと言わんばかりに攻撃を放ってきた。

 そこで、俺は


「終わんのは、テメエだ!」


 カウンターの一撃を放つ。

 相手の攻撃を流し、逆に隙にしてやる。

 そこに、突風(ガスト)一撃(インパクト)を……

 黒い俺はニヤリ、とその口を歪める。

 強烈な悪寒。


「っ!!!」


「っらあ!」


 完全に体制を崩したと思っていたが、黒い俺はそれを風で無理矢理修正し、逆に一撃入れくる。判断が遅れ、すぐに距離を取らなかったらやられていた。

 同時に驚愕する。

 俺も風で無理矢理修正するのは出来るが、あれは予めやることを想定していなきゃいけない。だが、戦闘中にそういう事を常に考える事も難しい。

 つまり、相手はこっちの手を予測した上で、カウンターにカウンターで返そうとした。

 完全に手が読まれている。


「驚いてんだろ。何で俺がお前の行動が読めたか」


「………………」


「それも自分で考えろ……って、言ってもいいがそれじゃあつまらねえな。特別だぜ? 俺はお前でお前は俺だ。“俺は俺の考えが分かるんだから、お前の考えもわかって当然だろ”?」


「……!」


 つまりそれは、俺より全ステータスが上で、その上俺の考えも筒抜け。“弱い者には弱い者なりの戦い方も予測される”。

 手札が全て、封じられた?


「負のイメージをしてるな?」


「っ!」


 黒い俺に俺の右腕が掴まれた、瞬間だった。

 まるで吸収されるかのように、俺の右腕が黒い俺の中に入って行く。

 ……いや。

 右腕だけじゃない。

 右腕“から”だ!


「う……ぉぉおおおおお!」


 全力で後ろに飛ぶ。

 吸収は止まったようだ。


「……何だ、今の」


「“元に戻っただけさ”」


「元に? どこが元にだ。テメエが勝手に言ってるだけだろ」


「………………」


 黒い俺の顔から、余裕が消える。

 別に、厳しくなったわけではない。ただ、“真面目になった”、とか、そんな感じだった。

 遊びの気配が消えた。


「……イラつくぜ。自分にここまで否定されるっつーのは、意外と頭にくんな」


「はぁ? 何言ってんだお前」


「何か言ってんのはお前だ」


 雰囲気が、空気が変わった。


「お前は何も分かっちゃいない。お前は何も理解しちゃいない。お前は何も考えちゃいない。そして、お前は何も認めようとしない!!」


「何のことだ……」


 認めない?

 何をだ。


「ヒントなんかもうとっくに出尽くしてんだよ!! 世界はこんなにお前に優しいのに、なぜ同じ俺にはこんな役回りなんだ!!」


「世界が俺に優しい? 今までそんなこと一度も思わなかったよ」


「ぬるま湯の人生で良かったな。もういい。めんどくせえ。もっともっとこの俺の“怒り、憎しみ、絶望、殺意”をぶつけて殺そうかと思ったけど……」


 途端に、俺の目の前から黒い俺が消える。

 そして、気付いた時には俺の体は宙に舞っていた。


「……あ?」


「もう死ねや」


 空間全体が地面だと言わんばかりに縦横無尽に空中を駆け巡り、俺を空中で何度も攻撃してくる。

 各部位の骨が折れ、俺の体がボロボロになっていく。


「トドメだ。台風(サイクロン)一撃(・ブロウ)


 手を組み、大量の風が渦巻くのを確認したところで、それを振り落とされる。

 ズドン、と奥の方まで通るような重い衝撃が体を貫く。


「がっ……!」


 直後に地面へと墜落する。

 体へのダメージが大きく、手足が動かない。


「……ぅ……あ」


「何だ。まだ息があるのか」


 頭を踏み付けられる。


「無様だなー。本当に“俺”かよ」


「俺は、俺だ……」


 踏み付ける力が増す。


「もう喋んな。これで終わりだ」


 体が取り込まれて行く。

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