17.デジャヴ
………?
生きてる?
空気は何処となく埃っぽい。血生臭さもある。ガラガラと何かが崩れる音もある。というか、何となくデジャヴ。
これで目を開けて周りを確認したところで声かかったら完全に状況一致だよなー。
そんなこと考えながら俺は目を開ける。
「…うわ」
ドシン!ドシャン!と音を撒き散らしながら触手を振り回す頭。違うところがあるとすれば、全体が地面に減り込む、いや沈んでいるところだろう。触手で体を持ち上げようとするが、重さに耐えきれず、地面が逆に凹んでるところが涙を誘う。
そこで、
「大丈夫?」
デジャヴ。
どうやら俺はこの人に助けられたらしい。
全体的な重量はそこまででは無いであろう漆黒の軽鎧。頭から足まで全身を守っているのに、動きにくさを感じさせない。鎧の印象もモン◯ンのギザ◯な感じで、防御より鋭さ、攻撃の印象だ。右手には漆黒の刀。左手には3本の短刀。
端的に言おう。黒騎士という言葉が一番しっくりくる
「あ、ああ。大丈夫だ。助けてくれてありがとう」
「仲間なんだから気にしない」
と、明るい声で言ってくれる。この声、女?
「ふう。にしても無茶やったわね紅くん」
……?
「何で俺の名前知ってんの?」
初対面だよな?知ってたとしても下の名前で呼ぶって。
「まさか…気付いてないの?」
気付く?何に?
俺の呆けた顔を見て、どこか怒ったような、諦めたような雰囲気を出して、黒騎士は頭を抱える。
「じゃあ、自己紹介といこうかしら。…木崎輝雪よ」
「はっはっは。まさか」
冗談だろ?
「紅、輝雪」
後ろから声がかかる。
「和也か」
「無事だったか」
「ああ。パズズとこの人のお陰でな。で、輝雪は何処だ?」
和也は可哀想なものを見る目で俺を見て、
「後ろの奴だ」
後ろの奴→黒騎士
「…マジ?」
「マジだ」
OH………。
「もう!だからこの姿は嫌なのよ!」
黒騎士はそう言うと、装備を解除していく。そこに現れたのは…正真正銘輝雪だった。
「…うわ」
いや、たしかに俺にも非がある。が、声は結構変わってて、見た目も鎧のせいでパッと見男か女かわからない。これで輝雪とわかれと言う方がキツい。
「もう。我が儘言わないでよ輝雪」
「そうは言うけどね。クロ?殆どの人はせいぜい軽鎧に頭装備無しよ?そうじゃ無くても取り外しぐらい可能なのに、私たちのは何処か外した瞬間装備解除ってどういう事よ?」
「…仕様よ」
「んな仕様いらないわよ!」
みんな、ここが戦場だって忘れてないか気になる。
「まあいい。紅、よくやったな。これで目標の10分は稼げた。…来るぞ」
「またかよ…」
最近、こんなことばっかな気がする。詳しい説明ぐらいして欲しいもんだ。
その時だった。そこら一帯に轟音が響き渡る。数秒後には閃光が走る。余りの眩しさに思わず目を瞑る。
何だ今の。雷に似てたけど。
「相変わらず登場が派手だな」
「耳~、目~」
「大丈夫か?輝雪」
和也は影に【防音】を付加させ、音が消えた後、【増加】を付加させ、影を濃密にし光を遮断した…らしい。
輝雪はモロにくらった。契約解除してたので防げなかったらしい。
俺はパズズが風を操ってくれて、上手く音を散らしてくれた。光も咄嗟に目を瞑り防いだ。
「てか、今の何だ!?」
「助っ人だよ」
助っ人?俺はすぐに雷(?)が落ちた方向を見る。逆光でよく見えないが、人影を確認する。
「…あいつは?」
「白木刀夜。この地区でのNo.2だ」
2!?二番目に強いってことか!?
その時、人影が動いた。手を空にかざしている。
「…精製」
ドドドッ!と、激しい勢いで空から銃器のような物が降る。
「…召喚」
次は手を地面につけ、呟く。今度は地面から黄金に輝く大量の兵士。その数は壮大なものだった。辺り一帯を光で包む。
「…装着」
黄金の兵士は手近な銃器を取り、構え、銃口を頭に向ける。
「…一斉射撃」
閃光、衝撃、轟音、全てが人体の感覚を遠ざける。
「ぐぉぉぉ」
「容赦無いわねー、相変わらず」
「…時期終わる」
軽く麻痺ってきたんだが…衝撃だけで麻痺ってどんだけだ。
「ブオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
怒ったあ!?頭が怒った声だよねこれ!?
「大丈夫なのか!?」
「「平気平気」」
木崎双子…そこでハモるか。
そんなこと気にしてるうちに頭は触手を振り上げ刀夜へと振る。だが、刀夜はそれをものともせず、精製した武器のうちの一つ、バズーカを取り出し、容赦無く引き金を引く。
ドオオオオオン!という爆音とともに、触手は先端部分が無くなっていた。
「どんな威力だよ…」
はっきり言って、規格外。パズズの力を全解放してもあれには勝てる気がしない。
そして、数分で頭の皮膚は剥がれ、肉が出る。
「…解除」
…?何で出した銃器や兵を消すんだ?
「あ、やば」
「離れるぞ」
「は?」
木崎双子は一目散に逃げる。どういうこと?
だが、理由は次に瞬間わかった。
「…精製」
刀夜が作り出したのは、頭(ジェネラルから見たら小さい銃。だが、人間が持つにしては、とてもとても巨大な銃だった。
「………what?」
『現実逃避してる場合ですか!』
…は!そうだった。とにかく逃げねば!俺はすぐさま足に風を纏わせ走ろうと…………………あ。
「動けない」
『…今まで、短い付き合いでした』
諦め早!?そんなやばいのあれ!?俺が四苦八苦してる間にも銃口にが光の粒子のようなのが集まり、そして
「…発射」
この世全てに響き渡るような轟音。この世全てを包み込むような光。地は震え、物は蒸発し、粒子すら残さず消えていく。当然、皮膚を破られた頭が耐えきれる一撃では無く、
「ぐはっ!?」
俺も吹き飛ばられいろいろぶつかる。
なんか、こんなんばっかだな、俺。
頭の消滅を確認した俺は静かに意識を手放した。




