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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
領土戦での日常
179/248

178.紅の世界④

 背中が、肩甲骨の間辺りがずっと疼く。

 何かを責めるように、疼く。


「世界を……壊す? お前、何を言って」


「させない!」


 由姫が叫ぶ。

 俺は混乱するばかりだ。

 二人の由姫。

 世界の破壊。

 そして、俺の隣にいる由姫はそれを理解している。

 ……理解していないのは、俺だけなのか?


「気付いてるでしょ由姫ちゃん。このままじゃ“外”が壊れる」


「ここは、ここだけなら壊れない。ずっと続く。皆が幸せな世界がここでなら実現出来るの!」


 “外”?

 皆が幸せな世界?

 何なんだ。いったい、何を話してるんだ。


「そんなのは虚像よ。わかってるでしょ? あなただって本当は」


「うるさい! 私は私! ここにいる私が本当の私!」


「外の皆がどうなってもいいって言うの?」


「それは……」


「……ああ! 俺もわかるように説明しろ!!」


 我慢の限界だった。

 俺も関係してるってのはわかる。だが、当の本人である俺にわからなろいう状況には非常にストレスが溜まる。


「外だの何だの! いったいどういうことだ!? そしてお前は誰なんだよ!!」


「紅……」


「……私は月島 雪音。外であなた共に行動していた」


「月島……雪音……?」


 瞬間、まるで槍にでも貫かれたような激痛が背中に走る。


「ぐ……つぅぅ……」


「紅! いいの! 何も思い出さなくても!」


 思い出す。

 そう、俺は何かを忘れている。

 何かを……。

 でも、何も思い出せずに痛みは引いて行く。


「はぁ、はぁ……」


「紅、大丈夫?」


 由姫が心配して声をかける。だが、今の俺にそれに対し何かをリアクションを取ることは出来なかった。

 胸の奥にある、忘れているかもしれないという疑惑が、確信に変わりつつあったからだ。


「……俺は、忘れているのか?」


「忘れてない! 何も」


「ええ。全てを」


「あなたは黙ってて!」


「陽桜 由姫。あなたはいいの? 外には蒼ちゃんだっているのよ」


「っ……」


 蒼。

 外にいる蒼とは、どういうことだ?

 こちらにいる蒼とは違うのか?

 そもそもこの裏路地を見たり、烈を思い出したり、日常でも数時間起きに肩甲骨の辺りが疼く。


「……由姫。教えてくれ。俺のこと。この世界のこと」


「……いや」


「由姫」


「いや!」


 由姫の目には、涙が溜まっていた。


「ゆ、由姫?」


「だって、だってやっと紅と一緒になれたのに! 四年前、小学六年生の夏に死んで、そしてやっとか結ばれたのに! 例え幻想でも、この幸せを失いたくない!」


「………………」


 四年前。

 死んだ。

 じゃあ、目の前にいる由姫いったい何なん……。

 違う。

 俺は何も知らないし、理解できちゃいないけど、俺が今やる事は疑問を持つ事じゃ無い。


「由姫。俺とお前はずっと一緒だ」


「………………」


「俺は、何もわかってない。自分の選択を後悔するかもしれないし、殆ど直感で動いてるような人間だ。だけど、自分の思いには気付いてるつもりだから、これだけは言える。俺とお前は、例え直接会えなくても、ずっと一緒だ」


「……紅」


「頼む……由姫」


「……っ」


 由姫は月島 雪音を見て__というか睨んで言い放つ。


「紅を酷い目に合わせたら許さない」


「約束する……のは出来ないかも。でも、紅の思いを違えないようにする」


 そして、由姫はまるで風景から切り取られたかのように消えた。

 その現象に驚かないと言えば嘘になるが、そこまでの衝撃は受けなかった。

 不思議とそれを直感し、耐えられた。


「……この世界はおかしい、かもな」


「適当に言ってる?」


「そりゃな」


 疑問なんて感じなかった。

 忘れていた気はしたが、結局は見て見ぬ振りだ。

 おかしいと思っていた、なんて言えないな。


「なあ。“ここ”はどこなんだ?」


「外の世界が“本当の世界、元の世界”てのはわかったの?」


「ん〜、そこも適当だな。悪い意味のな」


「……はぁ」


 月島 雪音はこちらに近付き、背後に回る。


「お、おい?」


「待って。“今戻す”」


 肩甲骨あたりを触られる。

 途端に、体の奥の方から懐かしい何かが浮上してくる感じがした。


「これって……」


「来るよ」


「っ!」


 大量の映像が頭の中で一気に再生される。

 音も匂いも風景も、記憶として残っていたものが全て溢れ出し、体の内側で膨れ上がる。

 ……気持ち悪い。

 というか吐きそうだ……。


「うっぷ……」


「はーい耐えて耐えて」


 溢れ出した記憶は徐々にはまるべき場所にはまっていき、ショートしかけていた思考も少しずつ回復していく。

 ……思い出した。


「ルナ……じゃ被るから月島か」


「う……はぁ。そうだよ月島だよ」


 全部を思い出した。

 今回のルートだけじゃない。昔に体験した全部のルート、全てを思い出した。

 それでいて、心は静かだ。


「じゃあ、全てを話すわね。今の状況。そして、この世界のこと」

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