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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
領土戦での日常
177/248

176.最初で最後

「核を探る?」


「ええ。パズズの話だと陽桜 烈はエクス・ギアを壊すことで鬼化から戻ったらしいわね。でも、紅くんにはそれがない。でも、同じ鬼化なら紅くんのどこかにも、エクス・ギアと同じ、鬼化するための“何か”を生み出している部分があるはず」


「だ、だがどうやって」


「そこで、“影と氷”の出番ってわけよ」


 ・・・

 ・・

 ・


「……紅!」


 刀夜が叫ぶ。

 確かに、紅は刀夜を見た。

 刀夜は銃を構え、狙いを付け、引き金を引いた。

 紅は腕を突き出し、同じように弾こうとし……そして、その目をいっぱいに見開く。

 “氷”。

 紅の半身は、氷漬けにされた。


「グルア!?」


「輝雪!」


「あいよお兄ちゃん!」


 紅の体からはおぞましいほどの力が溢れ出ている。それ故に、詳細を知るには直接触れるしかない。

 だが、風の鎧のせいで俺には触れる術がない。ならどうする?

 答えはそのまま影だ。俺が今まで使い続け、修練し続けた影なら、それこそ手足のように扱える!

 二人の影を束ねて、伸ばす。


「シャドウナーブ!」


 姿形どころか個を持たない影に風は効かない。

 俺たちの影と紅の影を繋げ、探る。

 __すぐに方をつける!


「サーチ!」


 言葉に出しイメージを固定化させていく。

 それは渦のようだった。

 いろいろな負が詰まっている渦。

 怒り、憎しみ、悲しみ、殺意、絶望、虚無感……。

 束ねられ、絡まり、きつく結び付き、決して解けない、散らない負の渦。

 それらが黒い力となり、奔流となって流れる。流れ、溢れ、放たれる。

 根元を見つけろ。流れの元を辿れ。

 黒い力を綱とし、道標として進む。その深奥へと。


 __守れなかった。


 不意に、声が聞こえる。

 ……紅?


 __また守れなかった。

 __何千回も何万回も繰り返した。

 __守られて、死なせた。

 __俺は守る側だったのに。

 __月島の死が決定している。

 __そんなふざけたことがあってたまるか。

 __こんな世界、壊れて当然だ。

 __壊す、壊す、壊す。


 黒い感情が溢れる。

 ……これが紅の本心?

 ……違う。

 まだ浅い。

 深く、もっと深くまで。

 だが、黒い力はそれ以上の進行を拒むように、邪魔をするように、押し返そうとする。


「……ぐっ」


 まだだ。まだだ紅。

 まだ俺は、お前の本心を見ていない!

 俺の意思と黒い力の押し合いは拮抗する……いや、俺の方が押されているか。


「ぐ……ぁぁ」


 ダメなのか?

 俺の力では、この黒い力を押し返せないのか?

 俺の力では、意思では……。


「お兄ちゃん!」


 俺の意思と黒い力にもう一つ、新たな力が加わる。


「……輝雪」


「二人なら出来るよ!」


「……ああ!」


 俺と輝雪の意思で黒い力を押しのけ、その深奥まで進む。


 __殺す。


 違う。


 __許さない。マキナだけは許さない。


 違う。

 お前は、そんな強い奴じゃない!

 狭い世界に限定して守りやすい世界だけを守ってきてると錯覚して長い間外と触れ合わないようにしてきた、臆病者だ!


 __怖い。

 __外が怖い。

 __いつもいつも、どうしてこんな目に会わなきゃいけないんだ。

 __見たくない。聞きたくない。信じたくない。


 ……あった。

 紅の根元。


「グ……ルァァアアアアアアアアアアアア!!!」


「っ!」


「きゃっ!」


 我慢ならないといったように、氷ごと拘束を砕き、俺と輝雪を吹き飛ばす。

 だが、お前の根元はもうわかった。


 ・

 ・・

 ・・・


「方法はわかった。だが、そこまで上手くいったとして」


「上手くいかせるの」


「……上手くいかせて、その後はどうするんだ」


「決まってるでしょ。その場所を全力で攻撃するのよ」


「だが、紅も弱点を晒すような真似はしないだろう。それに、風の鎧だ。俺たちの影も、攻撃するにはイメージで個を持たせなければならない。風の対象だ」


「だから、この状況まで一切手を出さず、傍観して、すぐにでも動ける人材に動いてもらうのよ。ね、パズズ」


「……え!? わ、私ですか!?」


「ええ。今まであの風を使い続けたあなたと、もう一人に動いてもらうわ。大丈夫。多少強引にいっても、紅には月島がついてるわ」


 ・・・

 ・・

 ・


 超回復能力を持った紅にだからこそ出来る暴力。

 最初で最後、今ここで!


「ここ……です!」


 パズズが紅を後ろから抱きつき、風を阻害する。

 風が乱れ、今、この瞬間だけは風の鎧が脱がされる。

 俺は喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。


「肩甲骨だ!!!」


 遥か遠くから、漆黒の弾丸を思わせる黒い点が高速で移動する。


限界突破(リミットアウト)!」


 九陰先輩。

 最後の鍵だ。


『いっけえええええええええええええええええ!!!』


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 九陰先輩が短刀を肩甲骨へと突き付けた。

 瞬間、どす黒いオーラが周囲一体を飲み込んだ。

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