16.吹き飛ばす!
別サイトでの執筆と合わせていろいろ大変。
楽しいからいいけどな!
「…ハ!」
ザシュ
俺は数にしてもう500を超える魔獣を殺した。もう数は殆ど残っておらず、見た限り残り10体だろうか。
「シッ!」
鎖の先端の分銅に【貫通】の特性を付加させ、投擲する。2体の魔獣の体を貫き、【貫通】を解除して影を傘状に広げ抜けないようにする。
鎖を思い切り引っ張って、魔獣を引き寄せる。飛んで来た魔獣を【振動】を付加させてる鎌で胴体を切り捨てる。
「「ガアアアアアアーーーーーー!!!」」
背後から近づいて来た二体の魔獣。【切断】を付加させた鎖を巻きつけ千切りにする。
ドオオオオオオーーーーーーン!!!
六方向から飛んでくる黒いレーザー。俺は鎖を自分を中心に円錐状に展開。影を使って【鉄壁】の特性を付加させ防御する。
ドゴオオオオオオーーーーーーーーン!!!
音ほど俺の張った防御膜の中には影響は無い。それを確認した後、すぐに特性を変化。【貫通】を【伸縮】にする。鎖を伸ばし、魔獣を巻きつけ、空中へ飛ばす。さらに特性を変化。【伸縮】から【形状変化】へ。武器の形状を変える。が、
「…やはり難しいか」
【形状変化】は武器の形状を変えることにより、武器その物のステータスを変える。この効果はかなり強力で同時にかなり具体的な想像が必要になる。
「行くか。鎌・影」
言霊により想像を確立させ、形状を作る。鎖鎌は大鎌へとその形を変える。
「ハッ!」
空高く飛び、落ちてくる魔獣をすれ違いざまに切り捨てる。血が飛び、内蔵が飛び出し、咆哮が響く。
俺は血の海の中心に着地し周りを確認する。輝雪がいたら「本当に死神みたい」とか言いそうだな。
『流石だな』
「コクか」
『だが、紅に何故、頭を任せた?お前なら倒せるだろ?』
「紅の実力を見ておきたいんだ」
『こんな魔獣相手に苦戦する奴だぞ?』
「たしかに、戦い方は雑。パズズに頼る力任せの技。戦闘経験は不良との喧嘩ぐらい。あまり役立つ人材とは言えないな」
『だったら』
「だが」
俺はコクの言葉を遮り言葉を紡ぐ。あいつには、俺たちに無い“何か”がある。
「パズズとあそこまで心を通わせたのはあいつが初めてだ。過去の3人。パズズはその誰とも戦闘以外で関わりを持とうとしなかった。紅を除いてな」
俺の記憶の中にいるパズズはどこか機械めいていた。今のパズズは遥かに感情を感じさせる。生き生きしてるのがわかる。
「パズズがあそこまで変われたのは、紅のおかげだ」
あそこまで強い繋がりはなかなかできるものではない。
『…だが、その肝心の紅とパズズは何処に行った?』
「“下”だ」
『…は?』
本当に面白い事を考える。一歩間違えば死ぬというのに。提案したのはパズズだな。それを了承する紅も紅だが。
頭の方を見る。今も動き辺りを破壊している。だが、その“下”から出ている巨大な力。それを認識した瞬間、その力が解放される。
ブオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
「…ぐ」
『な、何だあ!?』
頭の下から大量の風が出る。それはつまり、あの超重量級の頭が“持ち上げられている”ということ。さらに、放出されている風の勢いは凄まじい。支えが無ければ立っているのさえ難しい。
「…行け。紅」
人の咆哮が聞こえる。
紅side
俺は現在地面の下にいる。俺にははっきり言って技術が無い。それはパズズも理解している。今の俺はパズズに依存しているような状態だ。だから、そのパズズの力をフルに使う作戦。誰もが思いつくようなシンプルな作戦。同時に、失敗すれば死ぬ作戦。だが、今の俺には最大の作戦。
俺たちの問題は支えが無いこと。支えが無いために、相手の硬い皮膚を破壊する前にこちらの体が飛ばされる。
だったら支えを使えばいい。だが、そこらのビルでは心許ない。
だから俺たちは、“大地を支えにする”。
「行くぜ」
『全力です』
「…突風の一撃!」
ズドオオオオーーーーーーン!!!
「…ぐ!?」
これは…予想…以上だ。
骨が軋む。足が地にめり込む。
俺は必死に手を伸ばす反対側の手も添える。
だが、数秒間の拮抗の後、俺は膝を曲げてしまう。
「まだ…だ…」
目論見は成功している。頭にもダメージは与えている。だがそれも微々たるものだ。
…情けねえ。
負けられねえ。多分、和也が俺に任せたのは実力を見るためだ。だったら、実力を見せなきゃいけねえ。
くそ!立て!立てよ紅紅!お前は何のために力を望んだ?何をやるために力を手に入れた?使えない力に意味は無え。…だったら、やるしかねえだろ!
「く……お…!」
集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ集中しろ!俺の全てを吐き出せ!この一発に全てを込めろ!
あまりの負荷に腕から血が吹き出る。体が唸りを上げる。
頭が真っ白になる。意識が遠ざかる。俺の命令を無視し体は行動を停止させていく。
「…………ん…あ」
沈み行く意識の中で、俺は一筋の光を見る。
その光の奥には三人の人影。俺はその三人を知らない。だが、明確な情報が頭に浮かぶ。
一人は欲を満たすため力を欲した者。
一人は正義のため力を欲した者。
一人は強くなるため力を欲した者。
この三人に繋がりは無い。ただ、全員望んだ力を得て、死んだ。
そして、その力は…パズズ。
『紅!』
声が聞こえた。
「っ!!」
意識が浮上する。…そうだ。まだ戦闘中だ!
「…らあ!」
さらに力を入れる。血が吹き出ようと関係無い。風の勢いが増し、ドスン、と衝撃ふぁ重くのしかかる。
「ぐお…お」
『紅!もういいです!後は和也たちがやってくます!もう休んで!』
パズズの制止が掛かるが無視し、風を放出し続ける。
『もうやめて!あなたが無理する理由なんて無いんです!』
たしかにそうだ。別に俺がここまでしてやる必要は無い。だけど、俺はやらなきゃならない。
「…俺は…お前に言ったんだ。…生き残る為なら何でもする。戦わない以外でな、て。だから…戦うのはやめない」
『そんなのどうでもいいです!あなたに死なれたら…』
「死なねえよ。…死ねない理由が…あるからな。いつまでも…うじうじ言ってんじゃ…無え。俺には力が無え。俺の力は…お前だ、パズズ。だから、俺に死なれたく無かったら、力を貸せ!」
今も、巨大な負荷が俺の体にのしかかる。だけど、俺は絶対にやめない。証明しなきゃならないからな。パズズの力は誰かを殺す力じゃ無い事を。
『…分かりました。力を…解放します』
パズズの封じ込めていた力が解放される。て、
「力、…封じ込めてたのか?」
『私の力がこの程度だと思ってましたか?』
何処までも人を馬鹿にするような言い方。こいつは全く、
「んなわけ、無えだろ!」
本当に、無茶苦茶だ。
ドクン
「っ!」
大量の力が俺の中に流れこんでくる。その力は体の中で渦巻き、暴れ、かき乱す。
「…うぉぉぉおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
力を全て吐き出すように叫ぶ。風の勢いは増す。辺りを壊し、吹き飛ばす。全てを巻き込み、力を頭にのみ集中させる。
そして、頭の巨体が浮かぶ。
「行っけえええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
大量の力が風となり、螺旋を描き、頭を空中へと打ち上げる。周囲は削れ、崩れ、折れ、それら全てを風は巻き込む。空へと昇る風は龍を彷彿させる。
頭はすでに目視するのも難しい所まで飛んでしまった。
「はあ、はあ、はあ。…やったぜ」
凄い疲れた。というか、パズズの力凄えな。
『何してるんですか!?早く逃げて下さい!』
「は?」
ああ、そう言えばこの作戦。頭を打ち上げたら、即刻離脱する手筈だったな。だが、重大な事に気付く。
「体………動かねえ」
『はあ!?』
立ってるのがやっとの満身創痍。喋るのも辛い。はっきり言って、逃げるとか無理。
『私の力じゃあなたは運べないし…どうして逃げる体力分残さないんですか!』
んなことする余裕なんかあるか!と、言いたいが、もうマジでキツい。だが、そこに
『…頭』
ヤバイ。落ちてきた。確実に死ぬぞこれ。
『ちょっと!?どうにかしなきゃ!?紅!大丈夫ですか!紅!』
大丈夫だけど疲労感半端ない。だけど、こんなとこで死ぬわけにが行かない。何か、何か、何か何か何か何か何か何か何か何か何か…
『コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーウ!!!』
あ、死んだわこれ。
耳をつんざく轟音と、全身に伝わる衝撃。瓦礫は飛び、頭は地面へと落下した。




