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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
領土戦での日常
161/248

160.不完全な世界だから

「逃げるわよ!!」


「……わかった」


「了解」


 完全に嵌った!

 相手はあの双子だけじゃない! ワラワラと大量の雑魚もいる! これじゃあキリが無い!

 すぐさま踵を返し逃走を開始する。


「……殺せるか?」


「取り巻きはね。双子は難しいかも。白木さんでも時間がかかる。それに、幹部はあの双子だけじゃない。援軍を送られたら流石の白木さんも死ぬんじゃない? ……それに、マキナ・チャーチはこの世界に捨てられた者たちが集まってる。規模で言えば、魔狩りの本部よりも大きいわ」


「……そうなのか」


「もう少し詳しく」


「私だってたいして知らないのよ。何万回死んでチャレンジしても、こうやって繰り返す死を仕組んだのだってマキナ自身。セキュリティもその都度変えられてるのよ」


 ただ。


「ただ。“捨てられた”というのは、つまりは“魔狩りの名家”ということ。幼い頃から訓練され、なのに(パートナー)に恵まれず捨てられた人たちがマキナ・チャーチを回している。雑魚でもそこらのベテランと同等かそれ以上の実力を持っているのよ」


「厄介」


「……だな」


「そして捨てられた人たち魔狩りの為だけに育てられた人ばっかりで、周りとのズレを修復出来ず社会復帰不可。そこにマキナが現れて救ってくれる。さながら神様ね。私からしたら邪神以外何者でも無いけど」


 そもそも、このエルボスだってマキナが作ったものだ。

 マキナのせいで不幸になって、マキナに救われ忠誠を誓う。

 なんと滑稽だろう。

 だから、私は


「私は世界を壊すんだ」


「……この世界で救われている人間がいるのも事実だ。……それでも壊すのか」


「……元々無かった世界がまた無くなるだけ。なんの問題も無い」


「あなたの言っている事はこの世からテレビやエアコンをこの世から消すと言ってるのと同じ。この世界で収入を支えている人だっている。それでも?」


「……私は、綺麗な人間じゃないから」


 私は泥にまみれ、水を被り、沼の中にいるようなものだ。


「皆を救う。世界を救う。ハッピーエンド。なんて素晴らしいのかしら」


 完成された物語だ。

 闇は払われ光が指す。

 不純物は取り払われ、純物質となる。

 誰もが笑う最高のエンディング。

 だけど。


「そんなものは存在しない」


 そうでなければ人間はいざこざを起こさない。喧嘩をしない。反発しない。争ったりしない。戦争だってしない。

 誰もが笑うのは不可能だ。

 光によって闇が払われようと、光に照らされるモノの裏には影がある。

 純物質が残っても取り払われた不純物は処分される。

 この世は不完全だ。


「だったら、見知らぬ人の誰かより、私の大切な人のために私は動く。……世界だって、壊してみせる」


「……そうか」


「全面的に賛成」


「え?」


「……この世界が無くなって、俺には不都合が無いな」


「私も勉強してるし、未来は不安だけど、自分で創り出す」


「……二人とも」


 今まで、私の考えは否定され続けた。

 誰にも認められなかった。

 例え周りが敵だけだとしても、やり遂げてみせると、誓っていた。

 一人でも、独りでも。

 それが、認められるだけでこんなに嬉しいなんて、思いもしなかった。


「……おっと。……話は後だな」


「あれは」


「エレキの雷獣ね。昔、追いかけ回されたことがあるわ」


 正確には何百回か前の世界で、だけど。


「ふふふ、逃がさないよお姉さん」


「ふふふ、殺しちゃうよお姉さん」


『さあ僕と遊ぼうよ!』


「やらせはしない!」


「……っ!」


「あっ……!」


 二人が私の前に出て防禦の姿勢を取る。

 だけど、それじゃあダメ。


「ダメ! 麻痺が!」


『ランダムスパーク!』


 風に乗って辺り一帯に拡散する電流。

 ビリビリと肌を刺すような感覚。

 瞬間、力が抜ける。


「……ぐっ」


「しまった……!」


「っ」


 私は不死性の回復力でこのぐらいの麻痺は無視出来る。

 だけど、二人は。


「……わかったわ。殺ってあげる」


「……逃げろ!」


「あなたが捕まったら!」


「大丈夫。今までだってこんな状況はいくらでもあった。それに……」


 この時の私の表情は、一帯どのような顔だっただろう。

 でも、鏡が無くて良かったかもしれない。

 きっと、白木さんも、九陰先輩も、怒ってしまうような顔だから。


「死んだら、強くてニューゲームの再開だから」


「……お前」


「命を、無駄にしないで!」


「……殺りましょう。殺りあいましょう。あなたたちの大好きな」


『パーティーだ!』


 双子が向かってくる。

 簡単には殺られはしない。

 必ず、片方は殺す。


「死にな!」


「死んで!」


 双子の刃が迫る。


「っ!」


 その時、だっただろうか。

 風が吹き荒れた。


『うわああああ!?』


「……え?」


 目の前を、双子を巻き込んで通過する“風の砲弾”としか言えないもの。

 そして、こんな技を使うのは一人しかいない。

 ……ああ、本当に、いつもいつも、タイミング良すぎだよ。


「……俺の仲間は、誰一人、もう二度と、殺させやしねえ!」


 ……紅。

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