156.護衛組
「……合流ってどうするんだろうな」
「え?」
白木さんは何を言ってるんだろう。
こちらは私、ルナこと月島 雪音護衛隊。メンバーは白木 刀夜。黒木 九陰。そして護衛対象たる私の計三人。
「刀夜。今日はマキナ・チャーチが最も攻めてくる可能性が高いと思われる日。だから、アパートと言えど安全地帯ではない。だからゲートを使う」
冷静に指摘するのは九陰さん。
そう、それが今回の作戦だ。
しかし、白木さんはどこか不満なようだ。
「……それはわかっている。……月島の能力も昼間は反動が大きいため、こうなったのも理解している。……ああ、理解している」
私の能力は本来、月が出ている夜にその真価を発揮する。
この前、昼間に飛んだりはしたが反動で私はしばらく動けなくなってしまうのだ。
これから逃げようという人間がそれでは、逃げれるものも逃げられない。
そもそも、先に行ったら舞さんたちとの合流のタイミングが一千倍の加速の中でタイミングを合わせるという状況になるので、その時点でシビアだ。
あちらは舞さんのゲートでどうにでもなるが、こっちは片道切符。舞さんたちより早くついた場合、しばらくの間は合流は不可能だ。
まあ、攻め込まれたらその限りでは無いんだけど、ね。
マキナ・チャーチの転移に巻き込まれたりして。
「……だが、一つ言わせてくれ」
「どうしたの白木さん」
「なに?」
「……前提が間違ってないか」
「そうかしら?」
「……なぜ俺たちはショッピングセンターにいるんだ」
『買い物でしょ?』
いったい何を言ってるのかしら。
「……俺がおかしいのか?」
「変な刀夜」
そんなにおかしいかしら。
あっちには和也くんもいるし、すぐに合流出来ると思うし、心配は無いと思うけど。
「……というか、周りからの視線が痛いんだが」
「……まあ、他人から見たら刀夜がお兄さんで私がお姉さん。くいさんが妹ですからね」
「……質問の答えになってない」
「月島。私のポジションがおかしい」
いや、その背丈でお姉さんって方が無理ですって。
「……不愉快だ」
「その言葉は何気に傷付くんですけど」
「……世界を壊せる妹と年齢詐称の妹などいても嬉しくない」
「ね、年齢詐称……」
「白木さん。謝ってください。傷付いてるじゃありませんか」
「……いいだろそのぐらい」
「まあ、いいんですけど」
「っ!!?」
この程度で使い物にならなくなるのなら、こっちの世界ではやっていけない。
「それにしても、何で私のあだ名流行らないんだろう」
あれは実際のところ、輝雪と友達になるためのものだった。
白坂 雪音という、輝雪を虐めた張本人の名前と被るため、輝雪が距離を取ると思ったのだ。
そのためのあだ名だったのだが、なかなか流行らない。何故だろう。
「……それは……いや、なんでもない」
「ん?」
何か含みのある言い方だなー。
何か引っかかるけど……ま、いっか。
その時、私の猫、カグヤが、みんなにだけ聞こえるように喋る。
「みんな。七時の方向」
「了解カグヤ」
「大丈夫」
「向かいの道路にもいるから」
狙われてるなー。
流石に、こんな注目のされ方は嫌だな。
マキナ・チャーチも本気ってところね。
「……気配からしてザコだな。……無視して構わない」
「意識の中にはとどめて置いて」
「わかったわ」
さあ、どう動くのか。
お手並み拝見ね。
「カグヤ。声を」
「了解。聞き取れてるぜ」
「便利ね。猫ネットワーク」
二匹の猫が前後で警戒。
その聴力でターゲットの会話を伝言ゲーム方式で三匹目の猫に伝える。
撤収する時は猫の脚力で戻って来れる。
意外に機能してるのね、これ。弱点は横に弱い、てとこかしら。
「じゃあ、今は買い物を楽しみましょうか」
変に行動を起こすとバレて、一般人も巻き込んで攻めてくるだろう。
だから、今は大人しく。
そして、この時間が少しでも長く続きますように。
作者のミスで大幅に修正しました。12/8




